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家電の廃材が、再び家電として蘇る。「自己循環型マテリアルリサイクル」とは?

2017年7月4日

家電リサイクル法により、家庭から排出された4品目(テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)は回収され、リサイクルによる資源の有効利用が行われています。

当社は、プラスチックのリサイクル技術の開発に、先行して取り組んできました。そこには、どのような背景や想いがあるのでしょうか。健康・環境システム事業本部 リサイクル技術担当の戸田さんと荒井さんに、当社の取り組みについてじっくり聞いてみました。溶かして固めるだけではない、リサイクルの奥深い世界をご紹介します。

自己循環型マテリアルリサイクルとは?

健康・環境システム事業本部 リサイクル技術担当 戸田さん

――当社が取り組むリサイクルについて教えてください。

(戸田)当社は、お客さまが使い終わった家電製品からプラスチック廃材を回収し、新しい家電製品の部材として何度もくり返し利用する「自己循環型マテリアルリサイクル」に取り組んでいます。この取り組みは2001年度から開始し、現在では、洗濯機、冷蔵庫、プラズマクラスターイオン発生機などに応用しています。

――なぜそのような取り組みをはじめたのでしょうか?

(戸田)きっかけとなったのは、1998年に制定され、2001年4月に施行された家電リサイクル法です。この法律により、回収した家電製品の一定割合をリサイクルする「再商品化」が義務付けられました。当時は金属のリサイクルが主流でしたので、金属部品の多いテレビや冷蔵庫は、決められた再商品化率をほぼ達成できる見込みでした。しかし当社の洗濯機は、他社製品と違ってプラスチックを多く使っていました。「シャープの洗濯機は再商品化率を達成するのが難しいですね」と言われたこともあり、「難しいのならやってやろう!」と、技術開発がスタートしました。

――そのような背景があったのですね。

(戸田)当時は、プラスチックの高度なリサイクル技術はありませんでした。そのため、プラスチックの廃材は、安価な雑貨や燃料として再利用され、その大半は埋め立て処理をされていました。しかし当社は、環境への負荷を減らし、持続可能な社会を実現するために、返ってきた家電製品を、もう一度家電製品に利用する「自己循環型マテリアルリサイクル」にこだわりました。今では当たり前になりましたが、この「自己循環型マテリアルリサイクル」という言葉をつくったのも当社なんですよ。

 

プラスチックの傷みを知り、修復する技術

健康・環境システム事業本部 リサイクル技術担当 荒井さん

――プラスチックの「自己循環型マテリアルリサイクル」の流れを教えてください。

(荒井)まず、関西リサイクルシステムズ株式会社で回収した家電製品を解体し、プラスチック廃材を素材別に分けます。次に、ラベルやパッキンなどの異物除去、細かく粉砕、洗浄などを行い、純度の高いプラスチック廃材を取り出します。このプラスチック廃材は使用環境により性能が低下していることが多く、そのままではリサイクルすることができません。

※ シャープ株式会社や三菱マテリアル株式会社など、6社が共同で出資している家電リサイクル会社。

――性能が低下しているとは、どのような状態でしょうか?

(荒井)例えば、直射日光の当たるベランダに放置された洗濯バサミはボロボロになりますよね。傷んだ廃材は、その傷み具合を把握して、適切な添加剤を加えることで、新しい材料と同等の性能に修復してあげます。人間で言えば、お薬を処方して治療してあげるイメージですね。

プラスチックの自己循環型マテリアルリサイクルの流れ

――そのお薬は、どれくらいの種類があるのですか?

(荒井)数えきれないほどあります。例えば、耐衝撃性を改善するゴム成分や、耐久性を改善する酸化防止剤など。どの添加剤をどの程度ブレンドするのか。そこに当社のノウハウがあります。0.1%レベルでの調整が必要な、繊細な作業です。

――廃材の傷み具合は、どのようにわかるのですか?

(荒井)材料の種類や使用年数、使用環境を確認し、経験から傷み具合を推測します。開発時には、より正確な傷み具合を把握するために、プラスチック廃材の科学分析を行ったり、引張り試験や曲げ試験、燃焼、薬品、環境負荷などの試験を行います。

――試験をするのも大変そうですね。粉砕した材料を溶かして、成形して、試験して……。

(荒井)試験は社内の設備で行います。例えば、粉砕した材料を成形するのは、こちらの機械です。

――(かっこいい)

(荒井)まずは、粉砕した材料を装置に入れます。異なる材料をブレンドする際は、ここに混ぜたものを入れます。

(荒井)高温で溶かしながら、材料を混ぜあわせると、

(荒井)混合された材料が、ところてんのように出てきます。

(荒井)水で冷やして固め、

(荒井)細かく切断すると、

(荒井)このようなペレットになります。ペレットとは、加工しやすいように粒状に固めたものです。

(荒井)ペレットを溶かして、型に入れると、

(荒井)試験片の出来上がりです。

――社内にこのような設備があったとは、驚きです。

 

液晶テレビと冷蔵庫の廃材をブレンドして、高機能HIPSを新開発

――今回新たに開発した高機能HIPS (High Impact Polystyrene:高衝撃性ポリスチレン) について教えてください。

(戸田)特性の異なる2種類の廃材をブレンドし、それぞれの特長を活かしたリサイクル材を開発しました。1つ目の廃材として、液晶テレビのバックキャビネットに使用される難燃HIPSを、今回初めて自己循環型マテリアルリサイクル材として利用しています。バックキャビネットは、外部からの衝撃に耐え、基板などの熱を発生する内部部品が万が一発火しても燃え移らないように、「衝撃強度」と「難燃性」を備えた材料を使っています。

液晶テレビのバックキャビネット

(戸田)2つ目の廃材として、GPPS(汎用ポリスチレン)と呼ばれる冷蔵庫のトレイや棚板などの透明な部品をブレンドします。この材料は、非常に硬く、「剛性」が高い(変形しにくい)のが特長です。

冷蔵庫のトレイ

(戸田)さらに、ブレンドした廃材の傷み具合に応じて、必要な特性を改善・付与するために、数種類の添加剤を加えます。

添加剤

(戸田)これらを最適な比率でブレンドし、難燃HIPSの「衝撃強度」「難燃性」と、GPPSの「剛性」、双方の特長を兼ね備えた高機能HIPSリサイクル材の量産化に成功しました。

(戸田)また、難燃HIPSとGPPSのブレンド比率を変えることで、高い「難燃性」を保ちつつ、「衝撃強度」と「剛性」のバランスを自由に変化させることができます。新製品の開発の際に、その用途に応じて必要なリサイクル材をつくることが可能となりました。

新開発の高機能HIPS

(戸田)液晶テレビのバックキャビネットは、今後、回収量の増加が予想されます。また、冷蔵庫の透明な部品は大量に回収されていますが、安価な雑貨に使われることが多く、非常にもったいないという状況にありました。「燃えにくく、硬く、割れにくい材料が欲しい」との商品開発部門からのニーズを、回収した家電製品からつくる。このマッチングができるのは、メーカーである当社の強みです。

――開発の際、苦労したことは?

(戸田)廃材のみを使用してリサイクル材をつくることにこだわりました。回収するプラスチック廃材には、他社製品も含まれています。さらには、特性や使用年数、使用環境などが異なる廃材が混ざっていますので、リサイクル材の性能を安定させることが課題となります。特に安定した「難燃性」の確保が難しく、試行錯誤を重ねました。荒井さんをはじめ、チームが一丸となって挑戦することで、目標を達成することができました。

――リサイクルした材料を、もう一度リサイクルして、さらにリサイクルして……と、回を重ねるごとに難しくなるものなのですか?

(戸田)何度もくり返し使えることが、当社が目指すリサイクルの原則です。そのため、約50年、製品がくり返し使用されることを想定します。開発の際には、再生1回目のリサイクル材に7~8年相当の環境負荷をかけてリサイクルし、また環境負荷をかけてリサイクルし……という実験を5回くり返して、性能に問題がないことを確認しています。2001年に発売した洗濯機の水槽に使われている自己循環型マテリアルリサイクル材は、現在第三世代までリサイクルされています。

――ただ溶かして固めるだけではなく、材料の組み合わせや添加剤などを、ニーズに応じて最適にブレンドする。リサイクルの世界は奥深いですね。

(戸田)当社には昔から、省エネ、創エネに加えて、限りある資源をより長く利用する省資源を一つの理念としてきました。回収した材料の中には、使われていない材料がまだたくさんあります。これは、眠っている資源なんです。

――リサイクルの技術開発を続けるその根底には、どのような想いがあるのでしょうか。

(戸田)モノをつくるには、様々な材料を消費します。たとえお客さまに喜んでいただける製品をつくったとしても、それが使われなくなったときに、すべてがゴミになる。それでは、メーカーとしての責任を果たしているとは言えません。使い終わったものは、私たちがしっかりと回収して、また製品に使う。このループを無駄なく継続することが、メーカーとしての使命だと思います。

――ありがとうございました。

 

製品の材料がどこからきて、どこへ行くのか。普段見えるものではありませんが、ふと考えてみると、つくったモノをすべて捨てていては、すぐに資源がなくなることに気が付きます。リサイクル材だから悪い材料、というのではなく、むしろより良い性能に生まれ変わる。リサイクルの大切さと技術力を知ることができました。

(広報担当:M)

 

社会環境活動(CSR)
http://www.sharp.co.jp/corporate/eco/

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