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【対談】第23回夏季デフリンピックに、SEKの古島さんがサッカー日本代表のキャプテンとして出場します!

7月18日(火)から30日(日)まで、第23回夏季デフリンピック競技大会がトルコの都市サムスンで開催されます。

デフリンピックとは、4年に一度開かれる聴覚障がい者の国際的なスポーツ大会です。ろう者(聴覚障がい者)自身が運営を務め、国境を越えて友好を深めています。1924年にパリで初めて開催され、現在の加盟国は104か国にのぼります。

そのデフリンピックに、当社製品のアフターサービスをはじめ、様々なソリューション事業を手掛けるシャープエンジニアリング株式会社(以下、SEK)の古島啓太さんが、サッカー日本代表のキャプテンとして出場します!

2009年に開催された第21回夏季デフリンピック競技大会には、同じくサッカー日本代表の選手として、シャープ特選工業株式会社の高橋裕樹さんが出場しました。高橋さんにインタビュアーになっていただき、古島さんの今大会にかける想いをお聞きしました。

第23回夏季デフリンピック競技大会 日本選手団サイト
https://www.jfd.or.jp/sc/samsun2017/

 

【対談】高橋裕樹×古島啓太

左、高橋さん 右、古島さん

(高橋)さっそくですが、サッカーをはじめたのは、何歳のときですか?

(古島)5歳のときに、サッカーをしていた父と兄の影響で、私もサッカーをするようになりました。子どもの頃から健常者と一緒にプレーをしてきて、高校では、大阪大会のベスト4まで進みました。そこで一旦サッカーはやめたのですが、ろう者の成人式に参加したとき、友人から誘われたことをきっかけに、デフサッカー(ろう者のサッカー)をはじめました。

(高橋)それまで、デフサッカーのことは知らなかったのですか?

(古島)WEBサイトなどを通じて、少しは知っていました。初めて練習に参加したときは、チームに日本代表の選手がいて、そのレベルの高さに戸惑いました。デフサッカーは全国にチームがあって、さらには選抜チームがあります。その選抜大会に出たときに、私のプレーを見た日本代表の監督から、日本代表候補合宿に誘っていただきました。

(高橋)サッカーとデフサッカーは違いましたか?

(古島)デフサッカーで驚いたのは、補聴器を付けず、無音の状態でプレーをしなければいけないことです。審判が笛を吹いても選手には聞こえないので、デフサッカーでは旗を振ります。健常者は、声でパスを回したり、コミュニケーションを取りますよね。デフサッカーでは、アイコンタクトやジェスチャーでコミュニケーションを取りますので、そこがとても難しかったです。

(高橋)健常者なら、「古島さん!」と言えば振り向きますが、そうはいきませんからね。常にお互いを見てプレーしていても、集中すると見えなくなるときがあります。

(古島)健常者よりも、2倍も3倍も目を使わなければコミュニケーションが取れません。選手を見て、監督を見て、周りを見て。

 

(高橋)初めて日本代表に選ばれたのはいつですか?

(古島)21歳のときに、デフリンピックの出場をかけたアジア大会が初めてでした。過去6回、すべてイランの優勝でしたが、そのとき初めて日本が優勝しました。

(高橋)日本代表のレベルも上がってきましたが、世界のレベルはさらに高いです。日本が世界のトップレベルに並ぶには、どうしたらいいと思いますか?

(古島)アジアのレベルは全体的に上がってきていますが、出場枠も限られていますし、アジア枠を減らす話も出てきています。まずはお互いを高め合い、ヨーロッパや南米と戦えるように、アジア全体のレベルを引き上げる必要があると思います。

(高橋)アジア大会を突破して、日本がはじめてデフリンピックに出たのは、2005年の大会です。成績は予選敗退でした。2度目に出場した2009年も予選敗退。古島さんが初めて出場した2013年も予選敗退です。結果としては負けましたが、互角の戦いができるようになってきて、決勝トーナメント出場まであとちょっとのところまできています。今回のデフリンピックでは、絶対に予選突破してほしいと思っています。

(古島)JFL(日本フットボールリーグ)や大学サッカーで活躍する若くて強い選手が増え、日本代表の戦力は上がってきています。世界で勝つためには、チームが一つになり、徹底的に勝ちにこだわって戦うことが大切です。今の日本代表があるのは、今までつくりあげてきた先輩方のおかげです。私も日本代表のキャプテンとして、より若い人たちや子どもに繋げていけるように、今回のデフリンピックで結果を残したいと思っています。

(高橋)デフスポーツ(ろう者のスポーツ競技)の認知がもっと上がれば、ろうの子どもがサッカーを始めるきっかけになると思います。彼らが健常者のサッカーチームに入ると、「あぶないから止めた方がいい」と言われることもあります。耳が聞こえないから、サッカーを諦める人もいます。デフリンピックなどの国際大会や様々なデフスポーツがあることを、もっと多くの方に知ってほしいです。

(古島)日本でのデフリンピックの認知度は、2014年の調査では約11%でした。2008年のときは約2%だったので、ここ6年で上がってきています。それに伴い、メディアに取り上げていただく機会が増えました。私は、高校までは健常者と一緒にサッカーをしてきて、プロや日本代表になりたいという想いもありましたが、そこで諦めてサッカーを一度やめてしまいました。デフリンピックのような、デフスポーツがあることを知ってもらえたら、憧れとか夢ではなく、目標になると思います。

(古島)障がいを持っている人って、健常者と比べて、壁にぶつかることが多かったり、モチベーションを保つことが難しかったりします。でも、デフスポーツで体を動かすことで、楽しく、健康的で、前向きになれると思います。僕もサッカーを通して、色々と成長させてもらいました。より多くの人々にデフスポーツのことを知ってほしいので、小学校などでサッカーを教えています。

 

古島さんの普段のお仕事について

(高橋)普段はどのような仕事をしていますか?

(古島)SEKの総務部で、人事関係の仕事をしています。

普段の仕事風景

(高橋)仕事をする上で、工夫していることはありますか?

(古島)ミーティングなどでは、同僚にパソコンで文字を打ってもらって理解したり、言われた言葉をこちらから繰り返して確認したりしています。冬になると、マスクをしている人が多くなりますよね。私たちが口の動きを読んでいることを知らない方もいらっしゃいますので、「マスクを取ってもらえますか?」とお願いすることもあります。それでもマスクを取らずに話されると、わからないことも。

(高橋)なぜシャープに入社したのですか?

(古島)家にシャープ製品がたくさんあって、家電に関わる仕事がしたいと思っていました。また、シャープにはシャープ特選があるように、家電メーカーの中でも障がい者に理解があると思ったからです。

(高橋)仕事とサッカーの両立で工夫していることは?

(古島)仕事が終わってからサッカーの練習をしているので、帰宅が23時を過ぎることもあります。そのため、疲れをとることには常に気をつかっています。ちょっとしたオフの時間を見つけては、整骨院に行ったり、昼休みに少し寝たりとか(笑)少しの工夫でコンディションが変わるということがわかったので、時間の使い方や体調管理、食事管理をしっかり行っています。あとは、定時内に自分の仕事を終わらせて、周りに迷惑をかけないように心がけています。会社の負担を減らすように、仕事もサッカーも頑張っていきたいです。

(高橋)サッカーで学んだことで、仕事に活かしていることはありますか?

(古島)ろう者にどう話しかけていいのかわからないという方もいらっしゃいますので、自分から積極的に意見を言ったり、行動したりしています。その心がけは、サッカーから学んだように思います。

(古島)私がデフリンピックに出場することで、社内の雰囲気とか、達成感みたいなものに貢献できるのではと思っています。私の他にも、シャープには障がいを持つ方がいらっしゃいます。その方々も、仕事をする上で困っていることがたくさんあるはずです。少しでも障がい者への理解に繋げられたら、社内だけではなく、外から見えるシャープのブランドイメージにも、貢献できると思います。様々な方から応援メッセージをいただいて、良い結果を報告しなければいけないと感じています。

(上司にあたる、SEK総務部長の吉田さん)古島さんはすごくまじめで、何に対しても一生懸命です。責任感もしっかり持っていますし、障がいがあるからと、特別に対応していることはほとんどありません。練習のために、仕事を減らしてほしいということもないですね。定時内にきっちり仕事が終わるように、工夫してやってくれています。

左、古島さん 右、総務部長の吉田さん

(吉田さん)責任感の強さが、キャプテンという立場に繋がっていると思います。SEKの全社朝礼で、社長の鶴田さんから、古島さんのデフリンピック出場の紹介があってから、社内の応援ムードが高まっています。本人は言いませんが、仕事をしながら、日の丸の重みを背負うのは大変なことだと思います。デフリンピックではぜひ頑張ってほしいと思います。

 

SEK社長の鶴田さんより激励

左、SEK社長の鶴田さん 右、古島さん

(鶴田)4年前とは違うキャプテンという立場での出場に、プレッシャーも大きいと思います。私も彼への期待度が高く、北海道の合宿先まで練習を見に行ったことがあります。普段の仕事ではやさしいイメージの古島さんですが、ピッチの上では頼もしいキャプテンの顔をしていました。この経験は必ずや彼を成長させると思いますし、これからの仕事にも役立つと思います。古島さんはSEKの誇りですし、会社としても名誉なことです。障がい者というくくりではなく、SEKの社員として、試合での活躍、そしてチームのまとめ役としても、ぜひ頑張ってほしいと思います。

 

今回の対談は、高橋さんからの提案により実現しました。対談中、高橋さんの熱い想いが伝わり、私も胸が熱くなりました。対談後に、高橋さんが勤めるシャープ特選工業を訪れ、シャープ創業者の早川徳次が残した障がい者雇用への想いや取り組みについて取材しました。その模様は、後日改めてご紹介したいと思います。

デフリンピック開幕まであと少し。古島さん、そして日本代表の皆さんを全力で応援します!

(広報担当:M)

 

第23回夏季デフリンピック競技大会 日本選手団サイト
https://www.jfd.or.jp/sc/samsun2017/

シャープエンジニアリング株式会社
http://www.sharp-sek.co.jp/

シャープ特選工業株式会社
http://www.tokusen.sharp.co.jp/new/home/

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