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グローバルで販売するデジタルフルカラー複合機<BPシリーズ>、開発秘話を聞きました!

シャープはオフィスのコピー需要に対応するためドキュメント事業を1972年から開始。昨年、50周年を迎えました。その間、複合機の歴史は、「アナログ」から「デジタル」、「モノクロ」から「カラー」、「電話回線」から「イーサネット、クラウド/外部連携」と、時代の流れとともに進化してきました。

この50年間で培ってきた技術とノウハウを基に商品化したのが、今回ご紹介するデジタルフルカラー複合機<BP-70C/60C/50Cシリーズ>です。シリーズ名にあるBPとは”ビジネスパートナー”の略であり、「お客さまのビジネスを支援するパートナーになろう」をコンセプトとして表現しています。

開発を担当した商品企画の古澤、技術の平野、田口、デザインの筒井に話を聞きましたので紹介します。

デジタルフルカラー複合機<BP-70C65>と
左から、デザイン担当の筒井、商品企画担当の古澤、技術担当の田口、平野

デジタルフルカラー複合機事業をとりまく市場環境はどんな状況でしょうか?

市場動向について語る古澤

(古澤)はい、持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)やESG(環境・社会・ガバナンス)の観点、欧州の循環型経済などに見られるように、世界的に環境に対する意識の変化が起きています。日本でも環境省で行っているグリーン調達など環境負荷低減要求の動きもあります

日々使う製品に関しても、より環境に配慮した製品が受け入れられるような世の中に変わってきています。

その中で、オフィスで働く人たちが求めるオフィス環境に対する気持ちの変化も強くなり、より快適な環境下で働きたいという意識が高まってきています。

一方で、2019年末に発生した新型ウイルスの影響により、働き方に変革が起きました。例えば、オフィスに出社しないリモートワークという考え方が広まり、複合機についても、リモートワークで活用できるツールとしてのニーズが生まれました。それらの変化に対応した製品開発を行っている状況です。

 

環境負荷低減にはどのように取り組みましたか?

(平野)近年、環境に対する意識の高まりから省エネ化は重要な課題となっています。これを受け当社も複合機のトナーやハードについて、省エネに配慮した技術開発に力を入れています。

トナー技術開発について語る平野

トナーに関する省エネ技術とはどんなものですか。

(平野)複合機の中で最も電力を消費するのがトナー定着の過程です。その定着可能温度を下げることが複合機の省エネ化で重要になっています。
トナー改良の取り組みとしてはトナーの小粒径化、新規定着方式への最適化やトナーの材料設計の見直しなどを行い、トナーの低温定着性と耐熱保存性の両立を目指しました。
また、トナーの小粒径化は定着温度の低減による省エネのほか、印刷の画質向上にも一役買っており、より鮮明な画像印刷を可能にしています。

開発ではトナーの低温定着性の向上と耐熱保存性の維持の両立で非常に苦労しました。
トナーの低温定着性を向上させるということはトナーが低い温度で溶融することにも繋がるため、輸送中や保管中に溶融しないような対策を行う必要があります。そのためトナーの材料設計や添加材料の選定、適切な評価方法の検討などを関係部門と連携しつつ繰り返し行い、試行錯誤の上に現在のトナー処方を確立し製品化することができました。

 

ハードに関する省エネ技術開発についても教えてください。

ハードに関する省エネ技術開発について語る田口

(田口)消費電力の多いトナー定着では、以前から消費電力の低減に努めてきた経緯がありますが、今回、シャープ初採用技術であるパッド定着方式によって、さらなる低減を実現しました。

従来の定着方式ではヒーターランプ⇒加熱ローラー⇒定着ベルトの順で間接的に熱を伝えていました。
パッド定着方式ではヒーターランプ⇒定着ベルトと、直接定着ベルトを加熱することでウォームアップタイムを縮め、また定着パッドにより広い面積で熱を用紙に伝えることで、低荷重で効率的にトナーを用紙に定着できるようになりました。

パッド定着方式の機構イメージ
(紙は定着ベルトと加圧ローラーの間を通ります)

その結果、従来機種と比べ定着として最大約30%の消費電力を抑え、業界トップクラスの低消費電力化と従来機種の約2倍の定着ベルトのロングライフ化を達成することができました。

※ 従来機種<MX-2661>の定着部と現行機種<BP-70C26>の定着部の消費電力量の比較において。

当初、新規採用したパッド定着方式を使って、かつ市場要求の多い定着ベルトのロングライフ化を達成することは非常に困難な取り組みでした。

省エネ性を高めるために、熱を伝えやすく耐久性のある薄い金属基材の定着ベルトを選定し、それに適した熱制御技術に変更しました。また、モノづくり上生じる部品のばらつきにより、定着ベルトや加圧ローラーの位置関係が微細にばらつくと、定着ベルトは回転中に左右に蛇行し、ベルトの耐久性に影響を及ぼします。そのため、蛇行を自動補正する機構・制御を搭載するなど、定着ベルトのロングライフ化対策を盛り込みました。この機構・制御によって画質に問題が発生する場合がありましたが、部品形状や機構・制御の調整、ライフエージング試験を繰り返すことで最適化し、最終的には従来機種の約2倍のロングライフを達成することができました。

 

働き方の変革にはどのように対応したのでしょうか?

(古澤)新型ウイルスの影響だけではないですが、働き方が変化し、同じ部署でも一部の人はオフィスに出社し、一部の人はリモートで仕事をする、という状況が増えました。
業務を行うチーム内での情報共有は、ビデオ会議やクラウドサーバーにデータを保管するなどの方法が増えてきています。

以前から当社でも対応していましたが、複合機を既存のクラウドサービス(例えばGoogle DriveTMやDropboxTMなど)と直接ネットワークでつながるようにすることで、データをもっと簡単に共有できるようにしました。

そんな中、リモートワークの増加で利用者数が増えてきたMicrosoft TeamsTMと、当<BPシリーズ>との連携を容易にしました。設定を行えば、複合機から紙資料をスキャンした資料を直接Teamsなどのクラウドサーバーに保存し、テレビ会議で利用できたり、会議資料を印刷する場合も一旦パソコンにダウンロードすることなく、直接複合機から印刷できたりするなど、リモートワークでの活用に対応しました。

また、複合機がクラウドに繋がるほか、スマートフォンやモバイル機器などとも簡単に接続できるようにもしています。連携できる機器やネットワークが増えているため、セキュリティの要求度も高くなっています。

そこで、複合機に搭載できるウイルス検知キットをオプションで設定できるように対応しています。複合機がウイルスやマルウェアなどが含まれたデータを検知し、複合機につながる他のオフィス機器に広がらないようオフィスのデータを守ることを目的とした対応が可能です。

 

技術面での環境取り組みもさることながら、オフィスシーンにマッチする本体のシックなグレーカラーが目を惹きますね。デザインにはどのような思いが込められているのでしょうか?

デザインについて語る筒井

(筒井)環境に配慮した当社の取り組みを表現するため、デザインに関して主に2つ変更しました。
1つ目は、オフィス環境に求められるカラーがこれまでのホワイト/ブラック系から、より落ち着きのある、色味を抑えた中間トーンに変化したことに対応して、複合機の外観(筐体)にグレーカラーを採用することで様々なオフィス空間にフィットするようにしました。

2つ目はバッジデザイン(リーフバッジ)の刷新です。当社の複合機は、消費エネルギー削減などの環境負荷低減への取り組みを表現するため、2005年より複合機のエンブレムにリーフバッジを採用して来ました。近年、環境負荷低減への関心がますます高まっている中、リーフバッジのデザインを変更し、様々な環境へ配慮した当社の取組みを表現しました。

具体的には、カラー用とモノクロ用、A3用紙までとA4用紙までの機種向けにと全部で4種類のバッジデザインがあったのですが、より環境を意識してターコイズブルー1種類に統一し、台座も無くし、シンプルかつインパクトのあるデザインに変更しました。

グレーカラーの複合機に配置された
新しいバッジデザイン

最後にお客さまに向けて一言お願いします。

(古澤)今回ご紹介した内容以外にも、多くの人が関わって、様々なところで創意工夫を行って開発した商品になります。オフィス環境や、世の中のトレンドも変化し、複合機へのニーズも変わっていく中で、技術的な内容だけでなく、使いやすさやデザイン性も含めてお客さまに求められる商品を提案させていただいています

デジタルフルカラー複合機、デジタルモノクロ複合機など、低速機から高速機まで多様化するニーズに対応する充実のラインアップでお待ちしていますので、ぜひシャープの複合機をお使いいただけましたら、その良さが分かるかと思います。

 
ありがとうございました。

 

複合機というだけあって、スキャナ、コピー、プリンタ、FAX、データ保存、無線ネットワークなどたくさんの機能が詰め込まれています。
今回、取材をしていくうちに、よくこんな複雑な機械が、日々きちんと繰り返し動作しているなと感心しました。ふと振り返ると入社してから数十年、毎日のように利用していますが、最近、オフィスの複合機が故障しているところをあまりに見なくなったような気がします。開発者の尽力で、見えないところも含め日々進化している結果なのだろうと、あらためて思いました。

さて、新型ウイルスのパンデミックから、世界中のビジネスが回復に向かう中、お客さまにおかれまして、従来機からの置き換え、ビジネス拡大に合わせた新規導入などありましたら、当社の複合機導入を、ぜひご検討いただきたいと思います。
(広報C)

 

製品情報

https://jp.sharp/business/print/ (日本語)

BP-70C65/70C55/70C45/70C36/70C31/60C45/60C36/60C31 Sharp Digital MFPs / Printers | Sharp Global(英語)

BP-50C65/50C55/50C45/50C36/50C31/50C26 Sharp Digital MFPs / Printers | Sharp Global(英語)

 

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