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電気を賢く制御する、クラウド連携エネルギーコントローラとは?

当社のクラウド連携エネルギーコントローラは、時間帯や天気予報に応じて、発電したエネルギーを使うのか、蓄電するのかなどを判断し、適切に電気をコントロールします。スマートフォンなど※1で電気の流れを見て※2、使用状況をモニタリングすることはもちろん、家族の見守りにもご活用いただけるなど、電気と賢く付き合うための製品です。

クラウド連携エネルギーコントローラ
http://www.sharp.co.jp/e_solution/energy_controller/

※1 スマートフォン、タブレット、または液晶テレビAQUOS(2016年以降発売の機種、一部を除く)が必要です。
※2 ブロードバンドルーター、常時接続型のブロードバンド回線、「SHARP i CLUB」への会員登録が必要です。

クラウド連携エネルギーコントローラ

 

クラウド連携エネルギーコントローラが生まれた背景や狙いについて、開発チームに話を聞きました。チームの結束力を感じる濃厚なインタビューとなりました。

 

クラウド連携エネルギーコントローラは、なぜ生まれたのか?

商品企画 恒吉さん

――クラウド連携エネルギーコントローラを開発した背景を教えてください。

(恒吉)地球温暖化防止の観点から、CO2排出量の削減や省エネ化が求められているなか、日本の家庭のエネルギー消費量は増加しています。その対策として、国はエネルギー基本計画を推進し、2020年までに標準的な新築住宅のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH、ゼッチ)化を目指しています。ZEHとは、使うエネルギーよりも、つくるエネルギーの方が多い家のこと。つまりは、標準的な新築住宅には、太陽光発電システムが組み込まれる時代になるということです。

――CO2削減などの社会的な課題を受け、一般家庭への太陽光発電システムの普及が望まれているということですね。

(恒吉)当社は、発電、蓄電、家電の連携を高め、電気を賢くコントロールすることで、環境への負荷をより減少し、お客さまに便利で安心・安全な生活をご提供したいと考えています。

――電気を賢くコントロールするとは、どういうことでしょうか?

(恒吉)太陽光発電は、天候により発電量が変わります。賢くコントロールするというのは、電力消費の異なる時間帯や天気予報に応じて、エネルギーを使うのか、ためるのかを判断し、適切に制御することです。例えば、天気予報が晴れの日は、日中に発電した電気を蓄電池にためて、夜間に使います。日中に必要な発電量が少ない雨予報であれば、前日の夜間に電気を買っておいて、日中の電気を補います。停電の可能性がある大雨や洪水、暴風警報などの発令が出た際には、蓄電レベルを高く保ち、もしもの停電に備えます。

 

ソーラーパネル、クラウド蓄電池、スマートフォンなど、様々な機器を繋げる技術

組み込みソフトウェア開発 山田さん

――電気を賢くコントロールするためには、様々な機器を繋げる必要がありますよね。

(山田)ソーラーパネルやクラウド蓄電池のほか、玄関や洗面所にある分電盤や、ブロードバンドルーターなどを繋げる必要があります。ただこれらは、家の中でばらばらの位置にありますよね。距離があるので有線で繋ぐのは困難です。

――洗面所からリビングへ、ケーブルが壁を伝っている家はスマートとは言えませんね……。

(山田)当社には、クラウドHEMSで培った近距離無線通信の技術があります。クラウド連携エネルギーコントローラは、分電盤に繋ぐ「計測制御ユニット」と、ルーターや家電と繋ぐ「機器連携コントローラ」の2つのユニットで構成され、その間を近距離無線通信で繋いでいます。無線LANよりも安定した通信が可能です。

――それなら、ケーブルで繋げる必要はなさそうですね。

(山田)2つに分ける利点は他にもあります。ソーラーパネルやクラウド蓄電池と繋がる「計測制御ユニット」では安定した動作を確保し、スマートフォンや家電と繋がる「機器連携コントローラ」は、環境の変化に対応させたい。確実に動かす部分と変化に対応する部分を分けたことで、将来の環境変化に、柔軟に対応できます。

左、計測制御ユニット 右、分電盤

機器連携コントローラ

――設置の利点だけではなく、環境の変化にも対応しやすくなったということですね。

ハードウェア開発 森さん

(森)配線を無くすことは、取り付け工事の手間を軽減します。分電盤とルーターをコードで繋ぐには、工事屋さんが床下に潜って、配線して……、という大がかりな工事が想定されます。近距離無線通信を使うことで、その工事が不要になります。

――「計測制御ユニット」は、分電盤の隣に設置しても、すっきりしていいですね。

(森)様々なご家庭の分電盤の写真を集めて、どの程度のスペースがあるのかをチェックし、今のデザインに落ち着きました。LEDの色から、家の電気の状況を見ることもできますよ。(デザインのパートにつづく)

 

電気を意識する生活を、デザインする

UX(ユーザー・エクスペリエンス)デザイン 谷さん

――家の電気の状況を見ることができるというのは?

(谷)発電した電気を使っているのか、蓄電池から使っているのか、電力会社から買っているのか。家の電気の流れをスマートフォンでリアルタイムに見ることができます。画面の色が青なら、発電した電気を使いながら一部を電力会社に売っている状態。緑なら蓄電池を使い、オレンジなら買っている状態です。その色と、「計測制御ユニット」のLEDランプの光がリンクしています。

――習慣的にチェックできそうですね。

(森)ただチカチカ光らせるのではなく、ふんわりとした光り方をつくるのには大変苦労しました(笑)

――どのようなこだわりがあるのですか

(谷)根底にあるのは、“人に寄り添う”ことです。今までのクラウドHEMSは、比較的大きな画面に表示していたので、グラフや数値の一覧性に重点を置いていました。今回はスマートフォンの小さな画面で見るものなので、グラフ中心でいいのかと考えると、それは違うだろうと。スマートフォンを開いた瞬間に、家の電気の状態が直感的にわかるようにデザインしました。

――難しい画面だと、あまり見ないかもしれないですね。

「ホーム」画面

「電力の流れ」画面

――情報を羅列するというよりは、直感に訴えかける。気持ちを刺激するということでしょうか。

(谷)スマートフォンのアプリは、わかりやすいシンプルなデザインやアニメーションが多いですよね。今回デザインした画面でも、色の表現や光の粒にアニメーションを用いることで、電気の使用状況と、その量がわかるようにしました。今までのクラウドHEMSは、数字やグラフを読み込んで、きっちりと管理するイメージでした。これからは、何気なく状況を見て、変化を楽しみながら環境負荷を減らすような生活をイメージしました。もちろん従来のように、グラフで詳細なデータを見ることもできます。

――アプリをダウンロードしなくても、ブラウザ上で動くんですね。

クラウドサーバー開発 河内さん

(河内)専用アプリにしてしまうと、スマートフォンの機種によって動作の保証ができないものがあります。特殊な機能を使わず、標準的な技術で実現したいと思い、ブラウザ上で動くようにしました。そうすることで、スマートフォンやタブレット、パソコン、テレビなど、さまざまな画面で表示することができます。ただブラウザ上でアニメーションをつくるのって、意外と難しいんです……。

(恒吉)動きがないと面白くないですから、そこはデザインと技術のメンバーに頑張ってもらいました(笑)例えば電気を売っているときに、その一部を家で使うと、光の粒の一部が途中で消えるんです。

(河内)細かいでしょう(笑)光のゆれかたとか、スピードとか、動きにはかなりこだわっています。

(谷)グラフは正確に情報をお伝えするものですが、アニメーションには、楽しさやわくわく感を演出する力があります。直感に訴えるには大切な要素です。

(恒吉)例えば画面の色がオレンジになると、電気を買っている状況です。テレビや電気を消して青にしようとか、楽しく節電を意識することができると思います。

電力会社から電力を買っている状態

――普段から電気を意識するようになりそうですね。

(谷)まさに、電気を見る生活習慣をつくりたいと思いました。ちょっとした隙間時間に、家の電力を見ることは、環境意識にも繋がります。心拍数とかカロリー消費とか、人のライフログを見ることは当たり前になってきました。それと同じように、電力情報をスマートフォンでチェックすることは、不自然なことではありません。

――スマートフォン以外でも見られますか?

(恒吉)ご自宅のAQUOS※3を繋いで見ることができます。最近発売されたインターネット対応AQUOSでインターネットブラウザ機能が強化されましたので、それを活用しました。

※3 当社液晶テレビAQUOSの一部機種(→動作確認済み機種はこちら

 

安心と安全の視点から、電動窓シャッターとの連携や見守り機能も

――電動窓シャッター※4との連携について教えてください。

※4 文化シヤッター株式会社製の「マドマスター・スマートタイプ」に対応しています。

(河内)新築の家に、電動窓シャッターを設置するご家庭は少なくありません。毎日のシャッターの開閉は、重労働ですよね。暴風警報が出てから外に出てシャッターを閉めるなど、危険な作業でもあります。大雨や洪水警報が発令された際には、万一の停電に備えて蓄電を始めますが、同時に電動窓シャッターを閉めることで、安心安全に繋げたいと考えました。

――気象情報と関わりの強いシャッターですから、相性が良さそうですね。

(河内)「こういうときはこうしてください」とお客さまにお願いするのではなく、クラウド連携エネルギーコントローラが「お客さまに代わってやっておきました」という機能が、あるべき姿だと思っています。電気のコントロールも、電動窓シャッターも。

(山田)安心安全の視点でもう一つ、見守り機能があります。別売のタップを取り付けることで、家電製品ごとに使用電力を計ることができ、スマートフォンに通知を送ることもできます※5。例えばテレビやエアコンの電源がオンになると、「家族が帰ってきた」ことがわかりますよね。家の電気がわかるということは、人の動きを知ることにも繋がるんです。

※5 スマートフォン・タブレット端末に、当社製アプリケーション「ココロボ~ド」(無料)のインストールが必要です。なお、人物の特定はできません。

――なるほど。お子さんの帰宅情報もですが、離れた土地で暮らすご両親の見守りにも活用できそうですね。

エアコンのコンセントに別売のタップを取り付けた様子

(河内)エネルギーを賢くコントロールするだけではなく、安心安全にも繋げていきたい。そのために、様々な技術が使われています。

(恒吉)(インタビューに参加していないメンバーも含めて)皆が揃ったからこそ、実現できた製品だと思います。

(森)ほとんど交流がなかった人たちが集まり、今では一つの部門で開発に取り組んでいます。企画段階から様々な技術者が加わり、製品のあるべき姿やつくりやすさなどの議論を重ねてきました。初めの頃は、かなりぶつかり合いましたね(笑)そのおかげで、良いものができたと確信しています。

――まさにチーム力ですね。ありがとうございました。

 

太陽光発電と聞くと、発電量や電気料金のことを一番に考え、いくらお得なのかが気になります。もちろんそれは大切なことですが、当社が目指すのは、環境への貢献、安心安全、家族の見守りなど、電気を通して、暮らしや意識を変えていくこと。そんな想いを感じるインタビューとなりました。

最後に、当社の創業者早川徳次が遺し、開発メンバーが受け継ぐ言葉を紹介させてください。
「無限にある太陽の光で電気を起こすことを工夫すれば、人類にどれだけ寄与するか、はかりしれないものがある」

(広報担当:M)

 

クラウド連携エネルギーコントローラ
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