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ホテル・旅館向けスマホレンタルサービス「handy」にシャープが出資する狙いとは?

2017年9月28日

著者:広報M

当社は、香港やシンガポールなど、世界各地のホテルでスマートフォンの無料レンタルサービス「handy」を手掛けるMango International Group Limitedさまと業務提携し、事業会社としてhandy Japan株式会社を設立。本年7月1日より、日本での「handy」サービスを開始しました。

当社が「handy」に出資する狙いや強みについて、handy Japanの立ち上げメンバーにお話を聞きました。

「handy」公式サイト
http://www.handytravel.co.jp

 

ホテルの宿泊者が無料で使えるレンタルスマホ「handy」とは?

「handy」は、ホテル客室に備え付け、宿泊者に無料で使用いただくスマートフォンです。国内・国際電話やインターネットを無料でご提供するほか、周辺観光情報を配信し、お客さまとホテルをつなぐコミュニケーションツールとしてご利用いただけます。

すでに世界17カ国、11万以上の客室へ導入され、日本国内でも順調に各地のホテルへの導入が広がっています。

 

「handy」が持つ可能性

2017年4月1日よりCEOを務める勝瀬さんに、「handy」の可能性についてお聞きしました。

CEOの勝瀬さん

――handy」の可能性をお聞かせください。

広告としてのポテンシャルが非常に高いということです。旅行をされるお客さまは、現地に行く前だけでなく、旅行中もスマホで情報を集めます。「handy」は、お客さまが欲しいと思った瞬間に、魅力的な情報をご提供することができます。

――欲しいと思った瞬間というのは、どのようなタイミングでしょうか?

旅行は、情報がないところ、非日常的なところに行くわけです。例えば、午前11時半ごろ、かなりの確率で探しているのは、どこでご飯を食べるかということです。「近くに美味しいと評判のランチがあるよ」とスマホにお知らせが来れば、事前に調べたレストランがあっても、そちらに行きたいと思うのです。

――インターネットや本で情報を得ていても、実際に行ってみると、思っていたものと違うことって結構ありますよね。

「handy」は、場所と時間の2つの軸で広告ができます。今知りたい、今買いたい、今何がしたい。その場で情報を検索して、行動する。旅行には、非常に衝動的な面があります。プランを消化しにきたのではなく、むしろハプニングを楽しみに来たくらいに。お客さまの場所と時間に合わせて、欲しいであろう広告を出す。「handy」は今までできなかったことを可能にしました。

 

シャープ社員としてhandy JapanのCOOを務める奥田さん

シャープのIoTクラウド事業部に所属し、handy JapanのCOOを務める奥田さんに、シャープの狙いについてお聞きしました。

COOの奥田さん

――handy Japanの立ち上げの際は、どのような心境でしたか?

最初は本当に何もわからない状態だったので、「handy」の本社がある香港を訪ねることにしました。そこには、新しいビジネスモデルとベンチャースピリットを持った優秀な人たちがたくさんいて、信頼のおける彼らと一緒に仕事がしたいと強く感じました。会社を立ち上げるのは初めてだったので、リスクも考えましたが、この経験は絶対に面白いし、自分のためになるので頑張ろうと思いました。

――まったく違う仕事に、戸惑いはありませんでしたか?

私は入社以来、シャープで商品企画を担当していました。新しい商品を企画して、人を集めて、チームで協力し、モノを作って、売る。会社の立ち上げはまったく違う仕事ではありますが、商品が会社に変わっただけで、共通の部分が多いと感じました。

――どういう人がベンチャーに向いていると思いますか?

ベンチャーは、毎日新しいことに挑戦し続けないといけません。ベンチャーに向いているのは、賢くてポジティブな人が一番。次に、賢くなくてポジティブな人。一番向いていないのは、賢くてネガティブな人だそうです。ネガティブな人は、すべてやらない方向に結論を持っていってしまう。私の知る限りでは、シャープの人って、ポジティブな人が多いと思うので、ベンチャーに向いていると思いますよ。

――具体的にどのようなことをしたのでしょうか。

香港に行き、ビジネスモデルやオペレーションを学んだ後に、営業やトライアルを行いました。日本の市場にフィットするのかを見極めるためです。同時に、リクルートやオフィス探しなど、会社の体制を整えます。サービスがスタートすると、新たな市場やサービスへのチャレンジと課題解決の毎日です。

――オフィスはオシャレで快適そうですね。

handy Japanのオフィスは、生産性の向上をコンセプトにしています。例えば人工芝に裸足で過ごすと、足の裏が刺激されて脳の活性化に繋がります。オフィスに緑が多いのは、リラックスした環境で仕事をするためです。決まった椅子やテーブルはなく、体にフィットするソファ「Yogibo(ヨギボー)」を使っています。「Yogibo」を好きな位置に動かせば、仲間とのコミュニケーションが取りやすく、会議もすぐに始められます。

handy Japanのオフィス

――シャープは「handy」を通して、何を目指しているのでしょうか。

シャープがかかげるAIoT(AI×IoT)は、IoT機器とサービス、プラットフォームを三位一体で提供するものです。機器、サービス、プラットフォームを提供するという意味で、「handy」との親和性は高く、テレビや空気清浄機といったホテルの客室にある家電製品との連携にも可能性を秘めています。さらに根底には、ベンチャーのスピード感やフレキシビリティをシャープに取り入れたいという想いがあります。

――handy」の拡大とシャープへの貢献、どちらの想いが強いですか?

その2つは同じことだと思っています。「handy」はシャープの外ではなく、中で起こっていることです。どちらの想いも等しく大きく感じます。このような新しいチャレンジが、シャープをより良く変えていくことに繋がります。会社をゼロからつくる。シャープは社員に、そのチャンスを与えてくれる企業です。第二、第三のチャンスがあれば、社員の皆さんには、ぜひ手を挙げてほしいです。

 

唯一の技術者であるCTOの佐々木さん

奥田さんと同じく、シャープに所属しながらhandy JapanのCTOを務める佐々木さんに、シャープが「handy」に出資する強みをお聞きしました。

CTOの佐々木さん

――どのようなことを担当していますか?

香港にある「handy」の本社とやり取りをしながら、日本向けのカスタマイズやテクニカルサポート、トラブル対応などを担当しています。技術者は私一人なので、技術と名の付くものはすべてやっています。

――handy」のシステムを見てどのように感じましたか?

「handy」が4年間積み重ねて来た実績やノウハウが、システムからも見えました。実際に、ホテルやお客さまとのやり取りを通して得た経験により実現した、ホテルの収益性と利便性、お客さまの満足度を向上させる完成度の高いシステムです。

――開発はどのように行うのですか?

香港にいる、本社の開発メンバーとのやり取りを通して、開発を行います。日本の市場に合わせたカスタマイズ、シャープの品質の考え方などを主に伝えています。

――そこに、シャープが加わる強みがありそうですね。

シャープの強みは、市場での反応や問題を想定するノウハウがあるところです。この品質を担保できなければ、こういった問題が起こるかもしれない、という。問題が予測できれば、素早く対応ができます。いままでは顕在化していなかったものでも、実はグローバルで同様の問題が起こっていたということも考えられます。シャープの参入が、グローバルにおける「handy」全体の品質を上げていることにも繋がっていると思います。

――スピードと品質の両立は難しいように思いますが。

海外で実績のあるサービスを、日本に素早く展開できることが「handy」の強みです。クラウドサービスのメリットは、新しいサービスをいち早く市場に導入できることと、ネットワークを通してすぐに機能の改善・向上ができることです。慎重になりすぎると前には進めませんので、良いスピードを保ちつつ、品質を保証することが大切です。

 

マーケティングを担当する、CMOの野本さん

シャープに所属し、handy JapanのCMOを務める野本さんに、マーケティングについてお聞きしました。

CMOの野本さん

――「handy」の現状を教えてください。

年内20万室の契約達成に向け、9月末までに10万室を見込んでいます。8月上旬時点で、7万客室の予約申し込みをいただいています。進捗は非常に良いと考えています。ビジネスホテルチェーンや旅館への導入も進んでいます。

――日本向けにカスタマイズしているのでしょうか?

グローバルで成功しているサービスについて、日本向けに変えることと、変えないことを決めるのが大切です。佐々木からもありましたように、日本ではまず品質を重視します。一方、グローバルスタートアップの強みはスピードです。本当に求められている機能やサービスに絞り、どこよりも早くお客さまに新しい価値をご提供するよう進めています。

――年内20万台という数字には、どのような背景があるのでしょうか?

日本の宿泊施設のマーケットは、100万室と言われています。20%のシェアを取ることで、先駆者としてのポジショニングを確立し、様々なパートナー企業との協業を進めやすくなります。

――パートナー企業との協業というのは?

例えば、ホテルシステムのベンダー様との協業により、「handy」が照明、エアコンのリモコンや、ルームキーにもなります。また、テレビとミラーリングすることでVODサービスをご利用できたり、客室電話機の代わりになったり。「handy」を核にして、スマートで魅力的な宿泊体験をご提供したいと考えています。

――最初にお声がけがあった際に、どのように感じましたか?

当時はいくつかのクラウドサービスの立ち上げを担当していたので、一つ増えるなという印象でした。ただ他と違うのは、グローバルのサービスを日本でスタートさせるということと、電機メーカーとは全く異なるバックグラウンドのメンバーと仕事をすることですね。handy Japanでは、熱い志を持った観光業界のプロフェッショナルと仕事ができます。本当に毎日が刺激的です。この経験やスピリットをシャープに還元したいです。刺激的な毎日を過ごしたい社員の皆さん、チャレンジをおすすめします!

――ありがとうございました。

 

一番印象的だったのは、「シャープの中で起こっていること」という奥田さんの言葉でした。サービスの内容や事業形態ばかりに目が行き、その根底にある狙いや想いが見えていませんでした。handy Japanのチャレンジは、シャープのチャレンジでもあるということを知りました。

(広報担当:M)

 

「handy」公式サイト
http://www.handytravel.co.jp

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