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ボタンがなくても押したようなクリック感! 近未来のデバイス「クリックディスプレイ」とは?①

「クリックディスプレイ」(ハンドル一体型、試作品)

スマホや家電製品などのディスプレイは、画面を指で触れて入力するタッチパネルの搭載が一般的ですよね。また、最近の自動車では、オーディオやエアコン、カーナビなどの操作を行うセンターコンソールにも、フラットなデザインを採用したタッチパネル搭載ディスプレイが導入され始めました。

タッチパネルは便利ですが、誤って触れてしまい、意図しない動作をした経験はありませんか?これが自動車だと、突然オーディオを大音量にしてしまい、運転者がパニックを起こす可能性も否定できません。

「触れる」と「押す」を判別できるディスプレイがあれば安心です。特に運転中の安全性にも十分留意すべき車載用ディスプレイならなおさらです。

シャープはこの点に対応した、「触れる」と「押す」を判別する「クリックディスプレイ」を、車載用に開発しました。

日本最大級の電子ディスプレイ産業展「第32回ファインテックジャパン(幕張メッセ:昨年12月 7日~9日)」で初披露、世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2023」(米国ネバダ州ラスベガス:本年1月5日~8日)にも出展しました。

今回は、「クリックディスプレイ」の特長や開発の経緯、圧力検知の仕組みなどを、シャープディスプレイテクノロジー株式会社 (以下、SDTC)の企画/開発担当者に話を聞きましたので、2回に分けて紹介します。

左:SDTC 技術企画部 参事 結城 龍三、右:SDTC 開発部 研究員 山本 琢磨
前方の機器は「クリックディスプレイ」(右はハンドル一体型) *いずれも試作品

― 「クリックディスプレイ」とは何ですか?

(結城)画面を「押す」と、振動などがフィードバックされ、あたかも物理的なボタンがあるかのようなクリック感で操作ができるディスプレイです。
「触れる」と「押す」の判別を可能にする高感度の圧力センサ(圧力検知機能)に、ハプティクス技術※1を融合しています。

  • ※1 ハプティクス技術:画面などを押した際に振動させることで、ボタンを押したような触感をフィードバックさせる技術。

以下の動画を見ていただければ、イメージがつかめると思います。まずはご覧ください。

(再生されない場合は上記画像をクリックください)

― 開発のきっかけは?

(結城)携帯電話は、タッチパネル搭載のスマホが一般的になり、物理ボタンは少なくなりましたが、身の回りでは、例えば、自動車のエアコンなどには、まだまだ操作用の物理ボタンがあります。車内では安全で確実な操作が求められているためだと思います。

一方、カーナビには、拡大・縮小などスマホのように操作ができるタッチパネル搭載ディスプレイが普及しており、直感的に操作できるので、わざわざマニュアルを読む必要がありません。物理ボタンの確実性とタッチパネルの操作性、両者の良いとこ取りをし、物理ボタンの操作性を車載ディスプレイ上で実現ができないかと考え、2年程前に「クリックディスプレイ」の開発をスタートしました。

 

― どういう構成ですか?

(山本)(静電容量タッチセンサを合わせ持つ)透明の高感度圧力センサ2、ディスプレイ、そしてタッチのフィードバックとして振動させるハプティクスシート、さらにディスプレイの表面を保護し、「押す」部分を分かりやすく示す凹凸カバー、から構成されています。ディスプレイは液晶、有機ELのいずれにも対応可能です。

  • ※2 キーボードの押し圧ほどの小さな圧力(25g)でも検知可能です。

 

― では、「クリックディスプレイ」の特長を教えてください。

<「クリックディスプレイ」の特長>
① 「触れる」と「押す」の判別が可能で、分厚い手袋をしていても操作できる
② 自由なGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)
③ 表面の凹凸カバーとハプティクス技術で、ブラインド入力が可能

(結城)「クリックディスプレイ」の最大の特長は、「触れる」と「押す」が判別可能なことです。従来のタッチパネルに使われる「触れる」を検知する静電容量タッチセンサに加え、「押す」を検知する圧力センサを備えています。

静電容量タッチセンサは、指と(ディスプレイ内の)センサ間で発生する微弱な電気的な変化を捉えることで、ディスプレイに指が触れたことを検知します。しかし、手袋など電気を通しづらいもので触れた場合、電気的な変化は微弱となり検知できませんが、圧力センサを合わせ持つ「クリックディスプレイ」は、「押す(圧力)」ことでも検知が可能なため、分厚い手袋はもちろん、消しゴムやプラスチック製のペンなど、電気を通しづらいものでも入力が可能です。

また、高感度圧力センサについては、透明の材料によって形成していますので、その下のディスプレイの表示を妨げることなく、様々な情報を表示することができます。ナビが必要な時はカーナビ、音楽を聴きたい時はオーディオといったように、画面の表示・コンテンツを柔軟に変更できるので、自由なGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を実現します。

カーナビ(左)やオーディオ(右)など表示変更が可能

さらに、「クリックディスプレイの構成」で紹介しましたように、手触りでもタッチ位置が分かる凹凸のあるカバーとハプティクス技術を上手く実装しています。例えば、表面を手探りで指を移動させ、凹凸を感じたら押すと、ボタンのように押し込んだ感覚を振動で確認できますので、ブラインド入力も容易になります。

このように、「クリップディスプレイ」は物理的なボタンの機能をディスプレイに取り込むことで、車内での安心かつ安全な操作性と先進的なインテリアを実現しています。

次回に続く


今回は「クリックディスプレイ」の特長や開発の経緯などを紹介しました。次回は、圧力検知の仕組みや「CES2023」といった展示会での来場者の反響などを紹介します。ぜひ、ご期待ください。

(広報H)          

<関連サイト>
■SHARP Blog

■ニュースリリース:米国のテクノロジー見本市「CES 2023」に出展
■受賞表彰:
第28回ディスプレイ国際ワークショップ<IDW ’21>において「Sharp Force Touch」がBest Paper Awardを受賞

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