「クリックディスプレイ」への置き換えで操作性向上を実現!近未来のデバイス「クリックディスプレイ」②
2023年4月19日
前回は、「クリックディスプレイ」の特長や開発の経緯などを紹介しました。今回は、圧力検知の仕組みや「CES2023(米国で開催されたテクノロジー見本市)」出展などを通じた反響などを紹介します。
前回に続き、シャープディスプレイテクノロジー株式会社 (以下、SDTC)の結城、山本に話を聞きました。
― 圧力センサの仕組み・原理を簡単に紹介してください。
(山本)静電容量タッチセンサは、指などが触れることで生じる微弱な電気的な変化で検知しますが、圧力センサは、「押す」と圧力検知材料が縮む(距離が変化する)ことを利用し、押されたことを検知します。距離の変化量によって押した強さが判別でき、例えば、弱く押すと画面表示、強く押すと画面拡大するといった活用ができます。「クリックディスプレイ」は、静電容量タッチセンサ同じ層に圧力検知材料を配置しています。
― ボタンがないのにボタンのような機能を備えている「クリックディスプレイ」は、まさに近未来のディスプレイですね。開発に苦労したのでは?
(山本)「クリックディスプレイ」は、車載用をメインターゲットに開発しました。自動車メーカーからは安全対策のため1mm以上の厚いカバーガラスを求められますが、厚くなるにつれ、センサに圧力が伝わりづらくなります。また、冬の極寒から夏の炎天下まで、厳しい環境下での動作が必要になります。コストとの兼ね合いを見ながら、圧力を検知しやすく、環境変化にも耐えられるよう、独自のセンサーパターンと圧力検知材料の組み合わせを試行錯誤しました。
その他にも、検知した信号からノイズを減らして圧力のみの信号(きれいな波形)を抽出できるようアルゴリズムの改良に力を入れました。
(結城)車載向けなら、画面を見なくても入力位置が分かる方が安全面からも良いと判断しました。デザイン部門にも協力を仰ぎ、表面に凹凸を形成したカバーを付け、ボタンの位置だと認識してもらえるデザインを目指しました。しかし、デザインが良くても、凹凸によって見づらくなったりします。光学的な解析により、表示への影響が少ない形状を模索すると同時に、手触りでの操作性も考慮し、「そこにボタンがある」という触感をどう再現するか検討を重ねました。
― 「ファインテックジャパン」や「CES2023」に出展されましたが、どんな反響でしたか?
(結城)体験コーナーで触ってみたお客様から、「これほしい!」とか、「タッチUI(ユーザーインターフェイス)の可能性が広がって面白いですね」といった声を直接聞くことができました。実際に誤操作を防ぐUIを開発されている自動車メーカーからも、検討用にこの試作機を貸してほしい、といったご要望をいただくなど、想像を超える反響をいただきました。
― 最後に、今後の展開や抱負を教えてください。
(結城)多くのお客様に興味をお持ちいただいたことが自信になりました。ご期待に沿えるよう、早期の商品化を目指しています。
次のステップとしては、表面に凹凸のカバーを付けずに、フラットにして同じことができないかと考えています。ハプティクスの振動を工夫することで、物理キーボードの押し心地や操作性をそのまま、ボタンの触感をフラットなディスプレイ上で再現できないか検討しています。こうすることで見た目にすっきりしたUIとなります。
「クリックディスプレイ」は、自動車以外にも、洗濯機、冷蔵庫などのキッチン家電、リモコンなど、色々なものに応用できると考えています。社内では、各商品企画や開発の担当者と連携して新規商品の開発を進めたいと思います。また、社外にも積極的に提案を行い、「クリックディスプレイ」をご採用いただければと考えています。
― ありがとうございました。
実際に操作してみると、確かにボタンのようなクリック感を体験できました。物理ボタンがある操作部分やタッチパネルなどを「クリックディスプレイ」に置き換えることで、デザインもすっきりしますし、非常にシンプルで人に優しいUIになるだろうと感じました。その上、用途に応じて、画面の表示・コンテンツを柔軟に変更できる「クリップディスプレイ」は、自動車のセンターコンソールはもちろん、車載以外の様々な用途での活躍が期待できそうです。
(広報H)
<関連サイト>
■SHARP Blog
■ニュースリリース:米国のテクノロジー見本市「CES 2023」に出展
■受賞表彰:
第28回ディスプレイ国際ワークショップ<IDW ’21>において「Sharp Force Touch」がBest Paper Awardを受賞
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