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シャープに入居して良かった!③ジーンフロンティア株式会社さま
—シャープ柏事業所への入居企業をご紹介します—

ジーンフロンティア株式会社 取締役 最高執行責任者 海老原 隆 さま
(左は一押し製品の「PUREfrex®」)

シャープの研究開発事業本部は2016年から、スタートアップやベンチャー企業などを支援するオープンインキュベーション事業を進めています。その一環として、当社のR&D(研究開発)拠点である奈良県天理市の「シャープ総合開発センター(天理事業所)」内へスタートアップ企業を誘致しており、2020年12月に入居された2社を本ブログで紹介しました。

 ・シャープに入居して良かった!①株式会社インタッチさま
 ・シャープに入居して良かった!②ソラカケ株式会社さま

研究開発事業本部のR&D拠点は天理事業所の他にも、千葉県柏市の柏事業所(以下、シャープ柏 )などがあります。シャープ柏は、モノを適正な温度「適温(TEKION)」に保つ「適温蓄冷材」や、密閉空間を最適な目標湿度に調節・維持できる独自開発の調湿材「TEKIjuN」の開発など、材料系技術を中心としたR&D拠点であり、実は、ここシャープ柏でも、事業内容に親和性が高い化学系ベンチャー企業を誘致しています。

シャープ 柏事業所

R&D拠点ですので、入居された企業にも薬液を使用した実験ができる環境を用意できるほか、オフィス、会議室、駐車場に加え、クリーンルームの提供が可能で、現在、分析装置等の実験設備の時間貸しも検討しています。

今回は、シャープ柏に入居された企業さま2社に、入居した感想についてお話をうかがいました。まずは、大手化学メーカー 株式会社カネカのグループ企業で、バイオ医薬品関連を事業領域とするジーンフロンティア株式会社(以下、ジーンフロンティア)海老原さまです。

― ジーンフロンティアさまはどんな会社ですか?事業内容などを教えてください。

我々の会社は、現在、常勤役員の私を含め総勢14名(全員、シャープ柏勤務)で、バイオ医薬品(=バイオロジクス)※1を作るために必要な、製品・技術・サービスなどのソリューションを提供しています。簡潔に言うと、新しいバイオ医薬品を開発するための材料や技術を提供するといったイメージでしょうか。自らバイオ医薬品や医薬シーズ(種)の開発も行っています。

なかでも、「タンパク質」に着目したソリューションを展開しています。生物(バイオ)は様々な物質で構成されていますが、タンパク質は体にとって重要な機能・役割があることに加え、水を除けば、ヒトの体の構成物のほとんどがタンパク質だからです。また、体に異物が入れば「抗体」ができますが、これもタンパク質です。

  • ※1 化学合成ではなく、バイオテクノロジーを用いて、生物由来の分子(タンパク質、核酸など)を応用して創られる医薬品。

― 最近、抗体という言葉をよく聞きますが、タンパク質でできているのですね。私もよく理解できていないので、抗体について教えていただけますか?

生物には、免疫と呼ばれる体を守ってくれる防御システムがあります。そのシステムには、自己と非自己を見分ける仕組みがあり、細菌やウイルスなどの異物が入って来た時や、がんが発生した時など、体の中でアラートを発し、異物などに結合することで排除しようとします。その働きを持つタンパク質を抗体と言います。これは、天然の優れた薬と言えますが、人工的に抗体を改変・合成して医薬に応用したものが、バイオ医薬品の一つである「抗体医薬」です。異物・敵に対して非常に的確に反応するため、有効性が高く、ヒト由来のため副作用の少なさも期待されています。そうしたことから、世界的な開発競争となり、現在では、製薬業界のヒット商品上位の約半数は抗体医薬なんです。

― 御社はタンパク質に注目し、抗体医薬を含むバイオ医薬品開発に貢献している企業なんですね。具体的にはどういう製品・技術を扱っているのですか?

当社一押しの製品は再構成型無細胞タンパク質合成試薬「PUREfrex®です。目的となるタンパク質を作るには、一般的には、大腸菌や動物細胞などの培養細胞にタンパク質の設計図となるDNAを注入して強制的にタンパク質を作らせ、そこから抽出するという方法を取っています。しかし、この方法は、培養細胞に無理矢理タンパク質を作らせるため、手間がかかったり、場合によっては生産効率が低くなってしまったり、また毒性のあるタンパク質は作りにくかったりするなどの課題があります。「PUREfrex®」は、試験管にタンパク質の合成に必要なDNAなどの分子材料のみを入れ、人工的にタンパク質を合成する試薬で、生体外で目的のタンパク質を迅速かつ簡単に作れます。こうして作ったタンパク質が将来新薬に生まれ変わる可能性があるんです。東京大学との共同研究をもとに開発した試薬で、国内外の製薬会社や大学、研究機関などで使われています。バイオ医薬品開発を加速するものだと評価されているんですよ。

「PUREfrex®」を手に持って説明する海老原さま)

ほかにも、ドイツBio-Rad社から導入した、完全人工組み換えヒト抗体作製技術を用いたモノクローナル抗体作製サービス「抗体職人®を提供しています。これを使用すると動物免疫では不可能な抗体作製も可能で、動物を使わない抗体作製サービスを提供しているのは日本では当社だけです(2022年9月20日現在)

  • *「PUREfrex®」および「抗体職人®」は、ジーンフロンティア株式会社の登録商標です。

― それでは、なぜシャープ柏に入居しようと思われたのでしょうか?

東京大学との共同研究を行っていたこともあり、ここに入居する前は、東京大学と連携している東大柏ベンチャープラザ※2に拠点を置いていました。ただ同施設には、入居期限5年以内という基本的な取り決めがあり、当社はその期限を過ぎていました。また、入居企業の中ではかなり広めの場所を借りつつも、事業の拡大とともに手狭に感じていましたが、さらに追加で借りることは難しいとのこと。そこで、大きなスペースを借りられ、バイオ系の実験が可能な施設があり、さらに、従業員の利便性を考慮して、遠くに転居しなくて済む柏周辺での施設を探していました。東大柏ベンチャープラザの入居企業をサポートする担当責任者に移転先を相談したところ、その希望条件を満たす施設として、ちょうどシャープ柏が施設を開放するから検討してはどうかと提案を受けたんです。

  • ※2 独立行政法人中小企業基盤整備機構が、東京大学および地域(千葉県、柏市)と連携して運営する、新事業の創出や起業に取り組む企業などのための事業化支援施設(インキュベータ)。

― 入居されての感想をお聞かせください。

シャープ柏では、オフィス用の居室と実験室など合計350m2程を借りています。東大柏ベンチャープラザ入居時の1.5倍以上のスペースとなり、のびのび仕事ができるようになりました。バイオ系の企業ですので、排水などの水回りや実験で生じる匂いにも配慮する必要があり、シャープさんにフォローいただきながら適切に処理できています。従業員用の駐車場もあり、不便さは感じません。

正直なところ、入居当初は、真夏や真冬に空調が効きにくいこともあったのですが、空調設備を増設してもらいました。他の共用施設も改築され、快適です。

オフィスとして使用
実験をする様子

当社は2019年9月からシャープ柏に入居していまして、一番初めに入居させてもらった企業です。新型ウイルス感染症が流行る前は、クリスマス前の交流会や卓球大会などをシャープさんと共同で開いてもらい、大変フレンドリーに受け入れてもらいました。大変感謝しています。ありがとうございました。

― それは良かったです。では、入居されて事業は順調なんですね。

はい。東大柏ベンチャープラザでは、借り増しができず、実験用の設備も新たに導入できない状況にありました。ここでは、新たな設備も導入できて、事業も順調に推移しています。

実験室として使用

― メリットばかりお聞きしましたが、不満に思う部分もありませんか?シャープ柏への要望があればお聞かせください。

新型ウイルス感染症で少しセンシティブになっていますので、トイレの手洗いの際、自動で水が流れるようにしてもらえると良いかなと思います。また、まれに人感センサーで電気がつかない場所もあるので、ここも対処いただければ助かります。

― シャープ柏の担当者に伝えておきます。では最後に、御社の今後の展開を教えてください。

これからは、独立採算を意識しながら、会社をさらなる成長軌道に乗せ、バイオ医薬品のカテゴリで世界のニッチトップを目指していきたいです。具体的には、先ほど紹介したタンパク質合成試薬が国内外で使われ始めています。AI創薬3や人工細胞の先端領域でも使えるような試薬として認知されはじめていますので、この分野でもポジションを確立したいと思っています。

当社以外にもライフサイエンス関連企業がシャープ柏に入居されていますので、こうした企業やシャープさんとも事業連携ができれば良いですね。

  • ※3 医薬品の研究開発のプロセスにAI(人工知能)を活用した創薬

― ありがとうございました。


お話を伺い、ジーンフロンティアさまが、医療分野で先端技術を持つ企業だということを実感しました。

実は当社の開発部門が2回ほど相談し、アドバイスを頂戴したこともあるようです。当社も健康関連事業の強化を掲げており、今後、バイオ関連の技術力を持つジーンフロンティアさまと当社との間での、新たな取り組みに期待したいと思います。

次回は、有機半導体関連事業のパイクリスタル株式会社の近藤さまにお話を伺います。お楽しみに!

●まだまだ入居企業を募集中です。化学系の実験ができる施設を首都圏でお探しであれば、ぜひご検討ください。

<お問い合わせ先>
シャープ株式会社 研究開発事業本部 インキュベーションセンター第2開発室(管理Gr.)
メール:info_kashiwa@list.sharp.co.jp / 電話:04-7135-6280


ジーンフロンティア株式会社
・所在地:千葉県柏市柏273番地1 シャープ柏ビル4階(電話番号04-7137-6301)
・事業内容:バイオ医薬品開発に必要な製品・技術・サービスなどソリューション提供、バイオ医薬品シーズの開発など

(広報H)       

<関連サイト>
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