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シャープは見えないところでも活躍しています!「下水管路検査支援システム」で下水管路の傷んだ箇所を自動的に抽出し、検査業務の効率を大幅アップ 

下水管路を撮影する遠隔撮影装置(左、右上)と下水管路に障害物がある様子

* 遠隔撮影装置はどの会社のものでも対応します

日本国内にはどれくらい下水管が敷設されているかご存じですか? 実は約47万kmと、地球約12周弱、あるいは地球から月までの距離(約38万km)を超えるほどの、とてつもない長さです。その多くは高度経済成長期※1に整備されたもので、設置から50年を越える老朽管※2が急激に増加しています。最近、下水管が陥没したり、大雨で水があふれ出したりするニュースを見聞きする機会が増えてきました。老朽管の増加が、その要因のひとつだそうです。しかし、日本中に張り巡らされた全ての老朽管を一気に新品に置き換えるのは、コスト面、人的リソース面からも無理があります。そこで各地方自治体は、「詳細検査」と呼ばれる検査を実施し、傷んだところを補修しながら下水管を継続使用しています。これは、大変な手間と時間がかかる作業なのだそうです。

  • ※1 飛躍的に経済規模が継続して拡大した時期。日本では1955年頃から1973年頃までが高度経済成長期と呼ばれています。

  • ※2 国土交通省の指針として、下水管の耐用年数は設置から50年とされています。

当社はこうした社会的な課題を解決するため、8K関連技術の開発を通じて培った画像解析技術をベースとする「下水管路検査支援システム(INSSEP=INspection Support system for SEwage Pipeline)」を開発し、検査業務の大幅な効率化を実現しました。現在、全国の下水管路の検査において活躍の場を広げています。今回は、システムの概要や特長について、研究開発事業本部 係長の大津 誠に話を聞きました。

研究開発事業本部 係長 大津 誠

― 「下水管路検査支援システム」開発のきっかけは?

私が所属する部門は、先日、SHARP Blogに掲載された「リアルタイム自動配筋検査システム」同様、カメラを用いた画像処理技術の開発・事業化を進めており、事業の拡大を図るため、私はヒントを求めてインフラ系の展示会などを巡っていました。2018年 に、たまたま訪れた展示会の下水管路検査業者のブースで、当社が保有する技術について説明したところ、下水管路の検査に生かせるのでは?とのご提案をいただきました。詳しく話を聞くと、当社が持つひびの検知や3次元的に物体を捉える技術が活用できそうなことがわかり、その検査業者と一緒に新しい検査システムを開発することになりました。

 

― 「下水管路検査支援システム」の概要と特長を説明してください。

新たに開発した「下水管路検査支援システム」は、下水管路内を撮影した動画に対して、検査から結果入力、報告書作成までの一連の作業を効率的に支援・管理するシステムです。時間や手間がかかる従来のアナログな検査作業を、独自の画像解析技術を用い、かつ一連の作業をシステム専用のソフトウェアで一元的に実施することで、大幅な作業効率アップを実現します。このような一連の作業を集約したシステムを提供しているのは、当社だけです。


管路検査イメージ動画(上記画像をクリック)

主な特長は、まず、「自己位置推定」が可能であること。物理的な距離計測メジャーがなくても、管路内の特徴点(=汚れ)がどのように動いたかを解析することで、自動的に管路内のロボットが動いた距離(自己位置)を推定します。

次に、画像解析により「異常箇所の自動抽出」ができることです。管路内に異常箇所があれば自動的に抽出し、その画像を切り出します。自己位置推定機能によって、その異常箇所の位置もわかります。
また、直感的に分かりやすいUI(ユーザーインターフェイス)で、どの作業も簡単に操作することができます。

 

― 具体的にどの程度効率化したのですか?

従来の「詳細検査」では、遠隔撮影装置に下水管内をゆっくりと走らせ、カメラを上下左右に動かしながら、細かく確認していました。検査者は離れた場所から、その動画を目視でじっくりチェックし、異常が認められた部分を手書きで記録する必要がありました。
その後、動画を事務所に持ち帰り、手書きでの記録をもとに異常箇所を動画で再確認し、画像を切り出して保存。管路図面に異常箇所を推測してプロットし、汎用ソフトを用いて調査報告書を作成していたため、多くの時間を費やしていました。

しかし、当社の「下水管路検査支援システム」は、向きを固定したスクリーニングカメラを下水管内に走らせるだけで、画像解析によって異常箇所を自動的に抽出するとともに、自己位置推定機能で異常箇所の位置を自動でプロット。撮影中に目視確認する必要もありません。システム専用のソフトウェアでこれらの作業を一元的に実施・管理し、ボタン一つで調査報告書(Excel)の作成までを行います。異常箇所の抽出はまだ完全ではなく、事務所に戻り動画を一通り確認する工程は必要ですが、それでも大幅な作業効率化を図ることが可能です。検査内容によっては、約66%3作業時間の短縮が可能です。

  • ※3 特定条件下において。シャープ調べ。

他にも、異常が何件あるか、どの程度まで異常確認作業が進んでいるかなどの進捗確認(全体のプロジェクト管理)も可能です。

また、本システムを使用することで、事務所内での確認で済むようになることから、検査のたびに何度も下水管内の映像を確認しなければならない検査者の心理的負担についても、低減することができました。

 

― 開発する上で苦労したことなどありますか?

下水管は、場所や環境によって流れるものが異なるため、管路内はそれぞれ汚れ具合が違います。そのため、どの管路でも異常箇所を抽出できるようにするのに苦労しました。これは、色々なところで地道に検査を繰り返し、積み重ねることで、クリアすることができました。

また、検査業者側の視点に立ち、本システムの使い勝手をよくすることも心掛けました。検査業者の事務所にお邪魔して、何度もアドバイスを受けながら、簡単に操作できるUIを実現しました。

 

― 今後の展開や大津さんの思いを教えてください。

異常箇所の抽出はまだ完全ではありませんので、現在は動画を改めて一通り確認していただく工程が残っています。その工程が不要となる完全自動抽出の実現をめざして、開発を進めています。

また、このシステムを管路検査だけでなく、例えば煙突の検査など、様々な筒状の構造物の検査に広げていきたいです。

さらに、磨き上げた画像解析技術を活用して、インフラ維持に役に立つ新たな検査システムを開発、提供していければと思っています。

 

― ありがとうございました。


今回は、当社の「下水管路検査支援システム」が、重要なインフラである下水管の維持に貢献していることを紹介しました。「下水管路検査支援システム」は、以前、掲載しました「ドローン検査ソリューション」「リアルタイム自動検査システム」同様、当社の「8Kエコシステム」関連技術を発展させた独自の画像解析技術がベースのソリューションであり、もっと多くのシーンで活躍できそうです。電気製品だけではないシャープのソリューションにもご期待ください。

(広報H)

<関連サイト>

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