8Kドローンだから安全かつ効率的! 「ドローン検査ソリューション」①-災害状況の把握で活躍-
無人で飛行するドローンは、空撮だけでなく、農薬散布や点検、運送など、さまざまな分野で活躍の場が広がっています。ドローンに搭載するカメラは、現在、2K(1,920×1,080画素)のものが主流ですが、最近では、より解像度の高い4K(3,840×2,160画素)カメラも増えてきています。そうした中、当社は得意とする8K(7,680×4,320画素)技術をベースに、超高精細映像で、安全かつ効率的な災害状況の把握や検査業務などを行う「ドローン検査ソリューション」事業を推進しています。具体的には、8Kカメラ搭載ドローン(以下、8Kドローン)で現場の状況を撮影し、その映像の送信に5G通信を利用するものです。
今回は、当社の「ドローン検査ソリューション」のメリットや、活躍する場面について、研究開発事業本部 8K Lab 部長補佐の吉田に聞きました。2回に分けて紹介します。
― 「ドローン検査ソリューション」事業を始めたきっかけは?
私が所属する部門は、8Kなど高解像度画像の解析・処理技術の開発と、それを用いたソリューション事業を行っています。事業の拡大を検討する中で、画像解析が求められるシーンを模索した結果、ドローンの活用にたどり着きました。これまで蓄積してきた当社のノウハウが生かせる8Kカメラを搭載。これに、当社独自の画像解析技術を組み合わせることで、データの精度をより高めることができます。
8Kはデータ容量が大きいので、8Kドローンの映像データは5G通信で伝送するソリューションにしています。この8Kと5Gの組み合わせは、まさに、当社の事業ビジョンである「8K+5GとAIoTで世界を変える」に合致しています。
― いつから事業をスタートしたのですか?
2020年10月にスタートしたばかりで、まだまだ発展中の事業です。当初はドローンの知識が不足していて途方にくれることもありましたが、私が勤務する天理事業所の敷地内にドローン事業を展開する企業が入居※1され、都度アドバイスをもらうことができるようになりました。また、ドローンの操縦も初めてだったのですが、JUIDA※2の「操縦技能証明証」、「安全運航管理者証明証」を取得して、プライベートでもドローンを購入し、暇を見つけては練習しましたので、かなり上達しました(笑)。現在、当センターには、私も含めて2名のドローンパイロットが所属しています。
- ※1 スタートアップを支援する当社のオープンインキュベーション事業の一環として、R&D拠点の天理事業所(奈良県天理市)の敷地内に、ソラカケ株式会社が入居。
- ※2 一般社団法人日本UAS産業振興協議会。次世代移動体システム(AMS、ドローン・空飛ぶクルマ含む)の新しい市場創造と産業の健全な発展を推進する団体。
― 当社の「ドローン検査ソリューション」にはどんな特長があるのですか?
ドローンを活用することで、鉄塔での高所作業等、危険な場所での人による作業を回避し、かつ広範囲な検査も効率的に行えます。また、8Kカメラの超高精細撮像により、今まで検出できなかったものも確認が可能となり、検出の精度が高まります。さらに、8Kは4Kに比べ、1枚の写真で取得できる情報量が縦横2倍の計4倍となるため、公共測量※3やメガソーラー点検など、上空から撮影する検査ソリューションの場合、撮影枚数が4Kドローンの1/4程度に削減でき、よりスピーディな測量、検査が可能です。
- ※3 測量に要する費用の全部、または一部を国・公共団体が負担・補助して実施する測量のこと。測量とは、基準点測量、地形測量、地図調製(地図編集)をいい、測量用写真の撮影も含まれます。
― 危険な場所と言われましたが、具体的にはどのようなシーンで活躍するのですか?
危険な場所や高所など、立ち入るのが困難なところは、ドローンが得意とするところです。人が行かずにドローンで対応できますので、災害現場の状況把握や橋梁のインフラ点検などを安全かつ効率的に行えます。
当社のドローンソリューションを用いたローカル5Gや8K映像伝送の検証※4が、自治体での業務DX(トランスフォーメーション)支援の研究事例として、総務省の事業(総務省令和2年度「ローカル5G等及び8K映像伝送による自治体各種業務支援に関する調査研究」)に採択されました。自治体のご協力のもと、さまざまな場面での効果について実地検証を行っています。この検証結果をもとに、8Kドローンの具体的な利用シーンをご紹介します。
- ※4 当社が調査研究会を開催し、奈良県の自治体、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)、株式会社ミラテクドローン、および公益社団法人奈良県測量設計業協会が参加。ローカル5Gおよび8K映像の活用により、災害対応、インフラ保守点検等、自治体が行う各種業務の効率化・高度化を図るべく、各種実証実験を実施・検討したものです。(https://corporate.jp.sharp/8k5g/8klab/l5g_report_2020.html)
「ドローン検査ソリューション」紹介動画(上記画像をクリック)
<災害現場の状況把握>
奈良県吉野郡 天川村のご協力のもと、土砂崩れ発生を想定し、その際のドローンの有用性について検討を行いました。天川村は、面積の大半を山林が占めており、台風や大雨による土砂崩れがよく発生します。村役場の職員の方々は、都度、災害の状況を確認する必要がありますが、安全を確保しながら、また、車で移動できる範囲も限られることから、現場到着までに相当の時間を要することがあります。
一方、ドローンを使えば、災害現場から離れた安全な場所から操縦して撮影し、現場の状況を把握できるので、より安全ですし、上空から撮影できるので、より広範囲に調べることができます。
加えて、土砂崩れなどで道路が通行止めになっていても最短距離で飛んでいけますので、災害確認の作業時間を大幅に短縮できます。崩落現場の位置が概ね分かっている場合、想定した検証では、現状140分かかる作業時間がドローンだと12分に、9割以上短縮可能という結果となりました。
8Kと4Kの画像比較も行いました。先ほど申し上げたように、8Kの情報量は4Kの4倍です。50mの上空から撮影した排水路の破損状況の画像を比較すると、4Kのデジタルズーム画像では分わかりにくい部分もありますが、8Kだとはっきりと確認できます。
また、解像度を確保するために低い高度から撮影すると、ドローンが木々などの障害物に接触してしまうリスクが高くなります。検証では、8Kドローンは4Kの約2倍の高度から撮影しても、4Kと同等の画質が確保できることが分かりました。今回の検証では、高度73mから撮影しましたが、73mを超える高さの木は滅多にありませんので、8Kドローンなら安全に飛行させることができます。
高度120mからの撮影においても、8Kでは解像度を確保したまま、より広い画角を確保できます。
ドローンは、航空法によって、許可なく大きな構造物の30m以内に近づくことを禁止されています。そういう意味でも、より離れた場所からでも高解像度の撮影ができる8Kに分があります。8Kドローンは、4Kドローンと比較して、より安全で、より正確に、広範囲の情報を得ることができます。
― ドローンを使うメリットはある程度想像できていましたが、8Kだからこそのメリットが大きいんですね。
<次回に続く>
今回は天川村での実地検証をもとに、災害時にどんなメリットがあるのか紹介しました。土砂崩れを想定した事例ですが、他の災害現場でも効率的に状況を把握することが可能です。例えば、ヘリコプターでの遭難者の捜索には膨大な費用がかかるそうですので、「ドローン検査ソリューション」は非常に有益なソリューションになるかもしれません。
次回は、橋梁等のインフラ点検での効果や、8K映像の伝送について紹介します。
(広報H)
<関連サイト>
■ドローン検査ソリューション(eSHOWROOM)
■SHARP 8K Lab
■ニュースリリース:
災害時の広域監視利用を想定した5Gによる8K高精細映像のリアルタイム伝送に成功
SA(Stand Alone)方式の5Gにより、高速走行中の新幹線試験電車「ALFA-X」と地上間における双方向の8K映像伝送に成功
5Gで軽種馬を育成支援、8Kライブ映像を活用した実証試験を実施
世界初「8K対応リアルタイムVVCデコーダー」を開発
■SHARP Blog
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