輝く電卓60年の歴史、皆さまにも思い出の電卓はありますか?
2024年7月10日
先日、実家の片付けをしていたら、子供の頃に使っていた思い出の電卓を見つけました。実は、当社の電卓を発売してから、今年2024年で60周年を迎えます。この節目の年に、60年の軌跡をたどりながら、新たな魅力あふれる電卓の世界に触れてみませんか?私の思い出の電卓は後ほどご紹介します。
■電卓の歴史
60年前の1964年、当社は世界初のオールトランジスタ電子式卓上計算機「コンペット」<CS-10A>を発売しました。当社の年表には、この製品が総合エレクトロニクスメーカーとしての基礎を築いた事が明記されています。この電卓を開発した経験は、現在のさまざまな製品を生み出す礎となりました。
<CS-10A>は重さ25kg、価格は53万5,000円と、乗用車並みの高価な物でしたが、事務や経理部門における業務の大幅な効率化を実現しました。この功績が認められ、日本の情報処理技術の発展を示す歴史的製品として、一般社団法人情報処理学会より「情報処理技術遺産」に認定されています。
2号機<CS-20A>は、価格を抑えるため、シリコントランジスタとテンキー式を採用し、1965年に発売しました。重さは16kgで価格は37万9,000円でした。
さらに、「安くて、軽くて、小さい」を目指して、パーソナル電卓の開発に取り組みました。この実現のため、米国で宇宙開発や軍用の需要が増え著しい進化を遂げていたIC(集積回路)の採用を計画し、半導体メーカーと共同で研究を進めました。
1966年には、28個のバイポーラICを使用した世界初のIC電卓<CS-31A>の開発に成功。後には、バイポーラICの需要の70%以上を電卓用が占め、電卓が日本の半導体産業を立ち上げる原動力となりました。
「軽くて小さい」電卓の追及は、集積度が高く、消費電力がより少ないMOS-ICに注目することになります。幾度の困難を乗り越え、1967年にMOS-ICを採用した電卓<CS-16A>を発売。1号機と比べ、価格は半分以下の23万円、重さは1/6の4kg、容積は1/3と小型軽量化を実現しました。
そのころ、半導体業界ではICよりさらに集積度を上げたLSIが登場し始め、これによる一層の小型化を目指しました。しかし、国内半導体メーカーでは、歩留まり等の問題から、電卓用にMOS-LSIの供給を引き受けるところがなかったため、米国のMOS-LSIを採用し、1969年に、MOS-LSIを民生用の製品として初めて使った、世界初のLSI電卓「マイクロコンペット」<QT-8D>を発売しました。外形寸法は幅135mm、奥行247mm、厚さ72 mm、重さ1.4kgと小型・軽量化されました。
1970年代に入り、主要部品のLSI化が進んだことで電卓への参入障壁が低くなり、電卓戦争とよばれる乱売合戦が始まりました。当社は他社と差別化を図るため、小型化から薄型化に方針を転換し、LSIにC-MOSを使い、ディスプレイに液晶を採用することで、薄型化のポイントである低消費電力をクリアしようとしました。
液晶ディスプレイの開発は困難を極めましたが、1972年初頭に完成した試作品を確認して、液晶を次期戦略商品に採用することを決定しました。
この液晶ディスプレイを世界で初めて搭載したのが、1973年発売の、液晶表示ポケッタブル電卓「液晶コンペット」<EL-805>です。電池の長寿命化(単3電乾電池1本で連続100時間)と薄型化(厚さ20mm)を実現しました。
<EL-805>の表示電子は、DSM(Dynamic Scattering Mode:動的散乱モード)液晶でした。この液晶は、高い駆動電圧が必要で、低温時に応答速度が遅くなるという大きな課題がありました。この課題を克服したのが、TN(Twisted Nematic)液晶で、1976年発売の<EL-8020>に搭載しました。
さらに同年、世界に先駆けて太陽電池を搭載した<EL-8026>を発売し、電池持ちを気にすることなく電卓を使えるようになりました。当時の太陽電池は灯台や宇宙用などが主でしたが、電卓用に大量生産したことから大きく発展していきました。そして、住宅用太陽光発電システムからメガソーラーまで、今後、ますます発展する産業へと育ったのです。
2005年には、電気・電子・情報・通信分野における世界最大の学会であるIEEEより、「IEEE マイルストーン」に認定されました。 1964年から1973年にかけて電卓の小型化、低消費電力化に関する革新的な取り組みが高く評価された証です。
電卓の開発過程で確立した技術は、当社の基盤となり、その後の発展に大きく貢献しています。
■さまざまなバリエーション電卓
LSI、液晶、太陽電池などのコア技術確立後、当社はバラエティに富んだデザインの電卓を発売してきました。筆箱と電卓が一体となったデザイン、アクセサリー感覚で身に付けられるポケットイン電卓、世界時計が付いた電卓、電卓付きカードタイプラジオ電卓、透明なアクリル製定規を採用した電卓など、さまざまなバリエーションが登場しました。これらの時代背景に沿って開発したバリエーション電卓は、人々の心を捉えてきました。
中でも遊び心を取り入れた個性的なデザインのファッション電卓<WN-30>(1986年発売)は私の思い出に残る逸品です。POPでカラフルなデザインで、初めて見た時はこれが何なのか、どうやって使うのか分かりません。その特長をきっかけに「これ何に見える?」「どうやって開けるでしょう?」と友人たちに聞いて遊んだことが大切な記憶として心に残っています。とってもお気に入りの電卓なので今でも大事に思い出とともにしまってありました。
みなさまのご家庭にも、当社の技術が詰まった電卓やユニークな電卓が眠っていませんか?これらの電卓たちは、単なる計算機以上の存在であり、思い出や遊び心を紡ぐ特別なアイテムかもしれません。ぜひ、その電卓たちと再会し、新たな思い出を創り出してみてください。
■60周年目の新モデル
ご紹介した歴史を経て、2024年2月に60周年目の新モデルを発売しました。デザイン電卓<EL-VM72>です。フラットなキーデザインを採用したスタイリッシュなフォルムと快適で確かなキーレスポンスが特長です。
■有隣堂とのコラボ企画
60周年を記念し、書籍・雑誌・ステーショナリ・雑貨や楽器などの販売や音楽教室の運営を行う有隣堂の人気YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」に当社の電卓博士こと開発担当者の岩附が登場し金融電卓や関数電卓、プリンタ電卓から最新電卓まで、電卓への偏愛をMCのR.B.ブッコローに熱く語ってきました。ぜひ、ご視聴いただき当社の電卓への想いを感じていただければと思います。
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