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ディスプレイが感染症対策のパーティションに??
ニューノーマル時代の新コンセプト「透明ディスプレイ パーティション」

「透明ディスプレイ パーティション」

「透明ディスプレイ パーティション」

“ディスプレイ”は、TVやスマホの映像などを表示するだけのものだと思っていませんか?当社は、空間を仕切るパーティションの機能とディスプレイの表示機能を融合した「透明ディスプレイ パーティション」を開発しました。人と人との物理的な距離を確保することで、感染症対策としても利用できるんですよ!2020年10月に開催された「CEATEC 2020 ONLINE※1」に出展し、「CEATEC AWARD 2020※2」ニューノーマルソリューションズ部門グランプリを受賞するなど、注目の技術です。今回は、この技術を開発したシャープディスプレイテクノロジー株式会社(以下、SDTC)3開発本部の担当者(技術企画部の津田、次世代技術開発統轄部 第1開発部の村田)に技術の特長や使用シーン、誕生の経緯などについて、話を聞きました。

⇒ 技術詳細はこちら e-SHOWROOM(Innovation)受賞ニュースリリース

※1 CEATECとは、毎年10月に開催されるアジア最大級の規模を誇るIT技術とエレクトロニクスの国際展示会。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大防止に配慮し、10月20日(火)~23日(金)までオンライン上で開催。
※2 CEATECの推進スローガンである「CEATEC 2020-Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC)」のもと、「CEATEC AWARD 2020 審査委員会」が、出展者が事前応募した出展品・案件について、学術的・技術的観点、市場性や将来性などの視点から、イノベーション性が高く優れていると評価できるものを審査・選考し、表彰するもの。
※3 シャープのディスプレイ事業は、2020年10月1日付で分社化され、シャープディスプレイテクノロジー株式会社(SDTC)となりました。本社:三重県亀山市、事業内容:ディスプレイデバイス、およびディスプレイ技術応用商品の企画・開発・設計・製造・販売。SDTC

 

― 開発の経緯と目的を教えてください。

<津田>

「透明ディスプレイ パーティション」の開発を始めたのは2020年の春頃です。当時すでに、映像を表示しつつディスプレイが透き通って見える「シースルーディスプレイ」を、ショーウィンドウなどで使用する目的で商品化していましたが、さらなる進化を求め、透明性にこだわり開発を進めました。後述しますが、従来のシースルーディスプレイと比べて格段に透明度がアップしたことから、”透明ディスプレイ”と名付けました。
新型コロナウイルスの感染対策として、透明のパーティションが、あらゆる場所で使用されるようになりましたが、私たちはこの”透明ディスプレイ”が、それに代わる『表示できるパーティション』として、ご活用いただけるのではないかと考えました。

「透明ディスプレイ パーティション」 受付での使用シーン<br/>(状況に応じてディスプレイを透明にしたり白表示にしたりできます)

「「透明ディスプレイ パーティション」 受付での使用シーン
(状況に応じてディスプレイを透明にしたり白表示にしたりできます)

         

― 「透明ディスプレイ パーティション」と「シースルーディスプレイ」はどう違うんですか?

<村田>

「透明ディスプレイ パーティション」と「シースルーディスプレイ」の比較

従来の「シースルーディスプレイ」は、光に方向性(偏光性)を与えるための偏光板や、表示画像に色を付けるカラーフィルターなど、光を制御・吸収する部材を用いています。一方、今回の「透明ディスプレイ パーティション」は、透明性に重点を置いたため、偏光板とカラーフィルターを外し、それらが無くても表示ができる液晶材料を一から見直して開発しました。そのため、「シースルーディスプレイ」は透過率4が10%以下ですが、「透明ディスプレイ パーティション」は透過率を60%以上にまで高めることができました。透過率が高いため、従来の「シースルーディスプレイ」と違い、奥を明るくするための光源を設置する必要もありません

「透明ディスプレイ パーティション」はカラーフィルターがありませんので、カラー表示はできませんが透明と散乱を画面内で制御することで映像表示が可能です。散乱というのは入射した光がさまざまな方向に散らばる状態で、すりガラスのように白く見えます。

また、ディスプレイそのものは光らず、周りの光を利用して表示しますので消費電力も低く、電源供給に対する制約も少ないため様々な場所に設置することができます。さらに、バッテリーと組み合わせることで持ち運びも可能になると考えています。

ショーウィンドウのような主に広告表示の用途ならカラー表示ができる「シースルーディスプレイ」が適しますが、パーティションとして使用するなら、「透明ディスプレイ パーティション」が適しています。

※4 光がどれだけ透過できるかを数値化したもの、透過率が高いほど透明(奥が透けて見える)。

 

― 具体的にどんな用途・シーンで使用して欲しいですか?

<津田>

これまで、パーティションは、銀行や駅の窓口などで主に防犯対策の用途で使用されていました。しかし、新型コロナウイルスの拡大を機に、感染症対策の仕切りとして、病院や役所の窓口、オフィスや飲食店など、生活の中のさまざまな場所で使用されるようになりました。

私たちが開発した「透明ディスプレイパーティション」を使用することで、人と人との距離を保つだけでなく、それぞれのシーンに合わせた情報や映像の表示により、仕切りがあることで困難となったコミュニケーションを円滑にすることができると考えます。

例えば受付窓口では、待ち時間や説明をサポートする情報を表示することで、お客様の状況理解が進みます。飲食店などでは、季節に合わせた映像で演出することにより、人の気持ちを明るく、楽しくすることもできます。また、画面全体を白色基調の表示にして光を遮ることで、プライベート空間の確保にも使えます。

「透明ディスプレイ パーティション」想定されるシーン・場所

「透明ディスプレイ パーティション」想定されるシーン・場所
(上の動画が動かない場合は矢印をクリックしてください)

 

― どうして32V型のサイズになったのですか?

<津田>

市販されている卓上設置用のパーティションを調べると、横幅70~90センチのものが多いことが分かり、このサイズで進めることにしました。これは、市場に出ている32V型クラスのテレビ画面の横幅とほぼ同じです。すでに量産化されている液晶パネルを利用することで開発期間の短縮につながりましたし、開発費用も大幅に削減できました。当社が液晶テレビ向けパネルを量産するメーカーだからこそできたことだと言えます。

 

― 開発する上で苦労したことや、こだわったことなどがあれば教えてください。

<村田>

技術面で一番大変だったのが透明性を高めることです。ベースになる液晶材料の開発はもちろん、液晶の駆動面での調整など試行錯誤を重ねることで、目標の透過率60%を達成することができました。ほかにも、表示ムラを抑制するためさまざまな材料の最適化を進めるなど、多くの調整が必要でした。

「CEATEC AWARD 2020」ニューノーマルソリューションズ部門グランプリの楯を持つ 村田さん

「CEATEC AWARD 2020」ニューノーマルソリューションズ部門グランプリの楯を持つ 村田さん

消費電力にもこだわって開発しました。その結果、TVサイズのディスプレイであるにも関わらず、モバイルバッテリーのような小型の電源でも映像が表示できるレベルの消費電力になりました。

 

― 量産はいつからですか? 今後の展開も教えてください。

<村田>

「透明ディスプレイ」は、2021年度中の量産を目指して開発しています。早く皆様に商品化されたものをお届けしたいと思います。

将来的には、透明と散乱を映像信号に合わせて作り出すという特性をうまく使って、建物や乗り物の窓としても使える商品へ展開できないかと考えています。例えば、外を見るときや外光を取り入れたい時は透明に、中を見せたくない時は白表示にして遮光することで、カーテンのような役割を果たせると考えています。ここに映像の演出を加えることで、窓にもこれまでにない価値を与えることができると思います。

そのためにも、更なる透明性、低消費電力化を目指して開発を進めます。自動車への用途展開を考えると、まずは透過率70%を目指したいですね。

 

― 最後に、ぜひ言いたいことなどありますか?

<津田>

「透明ディスプレイ パーティション」のプロジェクトは、開発担当者の努力はもちろんですが、必要部品の提供や、映像コンテンツ作成、展示会での見せ方やプレゼンテーションに至るまで、さまざまな部門が”One SHARP”として協力してくれたことで実現できました。「CEATEC AWARD 2020」でグランプリを受賞出来たのも、関わってくださった皆様のおかげであり感謝しています。私自身も「CEATEC 2020」での出展の成功を祈って、「透明ディスプレイ パーティション」の表示を模したシースルーネイルにするなど(笑)、気合を入れて取り組んでいたので、注目いただけたことをたいへん嬉しく思っています。引き続き、「透明ディスプレイ パーティション」をよろしくお願いします。

「CEATEC AWARD 2020」ニューノーマルソリューションズ部門グランプリの賞状を持つ 津田さん

「CEATEC AWARD 2020」ニューノーマルソリューションズ部門グランプリの賞状を持つ 津田さん

 

― ありがとうございました!

ディスプレイで感染症対策なんて考えもしなかったのですが、液晶ディスプレイのリーディングメーカーとして液晶を極めてきたからこそ生まれた製品なのかもしれません。取材を終え、自動車を運転しているとき、夕方近くになると、特に夏は日差しがまぶしくて見づらかったことを思い出しました。このディスプレイをフロントガラスに応用することで、サンバイザーのような表示ディスプレイができればいいなと個人的に期待しています。

 (広報担当:H)      

<関連サイト>
ブランドサイト(Be Original.サイト)
 それぞれのBe Original. vol.6 『言われてみれば欲しいなと思われるものを作る』(動画)

■ニュースリリース
 『透明ディスプレイ パーティション』が「CEATEC AWARD 2020」の部門グランプリを受賞

■e-SHOWROOM
 透明ディスプレイ パーティション

■SHARP Blog

それぞれのBe Original. vol.6 『言われてみれば欲しいなと思われるものを作る』

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