【シャープ横断♪バトンリレー】第20走者◆Zaurusのためなら〇んでも構わんっ

林さんからバトンが飛んできました、新規事業開発統轄部 第一開発部 の西本です。

こんなオッサンにバトン回されても皆さんに役立つような話は出来ないぞ…と思いつつ、そういえばおそらく他の方々より多種多様な部署を渡り歩いて来ましたので、その辺の話でもさせて頂こうと思います。

●シャープを選んだ理由

私は1993年にシャープに入社しました。

同じ電機業界という観点では松下電器産業(※当時名称)にも内定を頂いていたのですが、シャープを選んだので親類縁者などからは大ブーイングです(笑)

後のいわゆる就職氷河期に比べればまだマシだったとはいえ、バブル崩壊直後で先行き不安定な空気感が支配していたご時世だった事や地元和歌山が松下王国だったという事もあり、どうか松下に入ってくれ!と言われたものですが、当時の私には「テクノロジーは未来への希望を抱くものであるべき」という想いがあり、その観点では松下って規模がでかいだけでコレ!ってモノが無いよね、電機No.1企業って事はあとは落ちるだけだよね、その点シャープには、

1.未来のエネルギー・・・太陽電池事業の存在
2.未来の情報インフラとして・・・当時「Newton」という携帯情報端末事業の存在
3.未来の紙として・・・当時世界TOPだった液晶事業の存在

があり、日本の未来を希望へ導いていくだろうという確信めいたものがあり、たまらなく魅力的だったのです(いや、若い時って根拠の無い全知全能感ありますねえw)

思えばこの頃からメインストリームから外れた道を選ぶ習性があったようです。

新入社員時代

というわけでシャープに入社して入社式後に研修所で3ヶ月近く過ごすことになるのですが、行き先は矢板研修所。え?宇都宮のさらに向こう?

当時は、関西出身で文系採用の者は大抵が奈良・天理の研修所に送られ、家電量販店での販売実習がメインストリームでしたが、シャープ・システム・プロダクト(SSP)というシステム販社配属前提でのシステム研修だそうです。家電は一切関係なし。

学生時代はパソコンはおろかワープロすらまともに使った事の無い私がシステム研修?てっきり家電を売るものだと思っていたのですが。さっそくアウトロー街道の始まりです。

幕張勤務時代

研修後、まだ出来て間もない幕張ビルに配属になりました。

矢板研修所同期の大半は市ヶ谷ビルか西田辺ビル内のSSP拠点への配属だったのですが、私含む3名のみが当時SSPが本社機能を置いていた営業推進部への配属でした。

またもやアウトローの予感。

とはいえ、ここでの経験は後のシャープ人生の大きな糧となるものでした。北海道から九州まで全国の営業拠点を統括する部門であり、大和郡山にあった情報システム事業本部との橋渡しをする部門だったため、様々な業務を学びました。

個人レベルのスキルで言うと、当時の営業はまだワープロ「書院」で提案書を書いているのが主流の中、Macでグラフィカルな提案書を描く事が出来るようになったのは幸運だったと思います。

当時の中崎部長から「西本、お前Macで提案書描けるか?」と聞かれ、Macどころか研修所で初めて書院パソコン触りました状態でしたが、体育会系脳だった私には、上から”出来るか?”と聞かれて”出来ます”以外の返答は無い。「はい、出来ます!」と答えてさあ大変。周囲のMac使いの先輩達を生きたチュートリアルの如く分からない事がある度に質問攻めをし、なんとかMacで自由自在に提案書を描けるようになりました。

そんな私のためにセット価格余裕で80万円は超えるQuadraシリーズを買ってくれた中崎部長、この気前の良さは今だに忘れられません(当時1人1台の端末すら無い時代にです)

社会人として自分に出来る事と出来ない事を客観的に判断し返答するのが本来の姿と思いますが、新人時代においてはこのように出来ない事でも出来ますと言って、とにかく「まず機会を掴んでからスキルを得る」という背水の陣も大事かと思います。

Macで描いた提案書が元で商談を取って商品化した
「カートピッキングシステム」

全身全霊Zaurus

「Newton」に夢を見てシャープに入社したわけで、その系譜とも言えるZaurusに燃えないわけがありません。

<ビジネスザウルス>

Zaurusを法人用途に組み込むべきだと思っているうちに、SSPから奈良の情報システム事業本部、そして次は本社西田辺の国内営業本部の法人営業部に異動になり、Zaurusを扱えるようになりました。

とはいえ、Zaurusと言えばコンシューマ向け、当時の国内営業本部自体が家電量販店向け商品がメインの中で法人営業部隊はかなりアウトローな存在です。なので、逆に良くも悪くもメインストリームじゃない立場を活用して下記のように思いつくことは何でもやりました。冗談抜きでこの時の私は「Zaurusのためなら死んでも構わん」という熱量で動き回ってました。はい、とてつもないZaurus過激派でした。

<ビジネスザウルス集配信システム>

結果的には後の携帯電話やスマートフォンにその座を譲ることになりますが、これこそが「未来の情報インフラ」、「未来への希望」と思っていたのです。なので、それは営業の領域を超えていると言われるような事でも死にもの狂いで取り組み続けました。

■Zaurus法人向けビジネスソリューションホームページ
http://ezaurus.com/bzsolution/index.html

Webを通じて新規チャネルの開拓を狙った西本の実験的施策。

SNSでの企業アカウント全盛の今では想像も出来ないと思いますが、その頃の規定ではお客様から直接商談要望をWebで受付することは出来ませんでした。問い合わせフォームすら国内営業本部ではご法度です(当時社会問題になってた某企業のクレーマー問題の影響でお客様の声を直接入力させるなんてとんでもない!というのが国営内での共通認識でした)

しかし、「Webなんて紙媒体と違って間違ったらすぐに直せる。自由にやったら良いんだよ!」という広報室室長の後押しもあり、ホームページ企画室のご協力も得て、このサイトが実現し、大型商談のきっかけにもなりました。

掲載している活用事例紹介は、一つ一つ実際に自分の足で回って取材を行った内容です。

<Zaurus法人向けビジネスソリューションホームページTOP>

<Zaurus導入事例紹介>

<Zaurus導入事例紹介>

※昔はこのようなお客様入力フォームを設ける事はご法度でした。

■営業としては異色な取り組み、ザウルス「MOREソフトコンテスト」

ザウルスを拡売するにはハードばかり作るのではなく、ユーザーを支えるソフトウェアが揃っていることが重要と考え、その為にソフトウェア開発者の裾野を広げるために行った施策でしたが…

これまた大変でした。

まず、それは営業の仕事なのか?事業部の商品企画部の仕事ではないのか?という身内の声が多数。

肝心の事業部側では、「開発環境のオープン化」という事に価値を見出さない人が多く、「開発環境なんてオープンにしてどうすんの?」とか、「どこの馬の骨が作ったかわからないようなアプリをお客さんに使わすわけにはいかない」とか抵抗も多かったですが、これまた広報室、ホームページ企画室とタッグを組み、事業部のザウルスソフト開発部隊の多大な協力により実現しました。

※現在の電子書籍では常識の「画面端タップでページ送り/戻し」のUIはこの「TTVブックリーダー」が初出だと思います。

コンテスト第2回目ではカナダ大使館を借り切って結果発表会を行ったのも良い経験でした。

※開発環境の一つ「CodeWarrior for Zaurus」が当時カナダ企業の製品だったため

そしてZaurusの商品企画部へ

これらの取り組みを評価して頂いた方が事業部側にもおられたようで、後に国内営業本部から大和郡山の情報システム事業本部・携帯システム事業部の商品企画部に配属されました。

前述のように「Zaurusのためなら死んでも構わん」と思っていた私です。そりゃもう燃えました。

社外だけでなく、社内ですら時代はもうPalm OSやWindows CEだ、シャープ独自のZaurus OSでは勝負にならないとか言われてましたが、自分の目の黒い内はそんなものには絶対に負けねえ!と思ってました。ちなみに、この時点での国内での法人ソリューション採用数、比率共にPalm OSやWindows CEよりもZaurusの方が上だったと思います。

実は1社独自OSの方が法人ソリューションは組みやすいのです。

オープンなOSは各機器メーカー毎に微妙に仕様が異なり、法人ソリューションソフトウェアの動作保証が容易ではありません。当時Windows CEを担いでいた某企業などは商談先で「Zaurusはシャープ独自だから危険ですよ、シャープが止めたら終わりですよ」と言っていたそうですが、確かに独自OSにはそういったリスクもありますが、今現在Apple独自のiOS機が多くの法人ソリューションで採用されている事が今々での答えかと思ってます。

しかし、とうとう海外で運用出来ないZaurus OSは広がらない、世界展開も可能なLinuxで!という方針転換が新事業部長によって行われます。

そこでついに、入社後初めて商品企画を担当する事になるLinux Zaurus SL-C700の開発が始まります。

シャープ90周年記念ザウルスであり、オンリーワン商品でしたので、あらゆる事が大変でしたが、この機種によってPDAシェアNo.1を奪回しました。

翌年には2003年度DIMEトレンド大賞(IT部門)を受賞しました。

<Linux Zaurus SL-C700>

これはもう本当に大変だったのですが、商品企画初心者の私が至らぬばかりに多くの方々にご迷惑をお掛けしたと反省する部分が多かったと思います。

商品を企画するというのは様々な知識、実行力、人間関係、決断力が必要で、営業時代はなんと気楽に事業部に対して物言ってたものだなと思い知らされました。

そういえば、日経エレクトロニクスとかアスキーのような専門誌だけでなく、DIMEのような一般誌に記事が載るのは当時として画期的でした。

<DIME  2003年12月19日号>

その後、ザウルスから離れることになるわけですが、前述の通り、ザウルスに心血を注いでいた身としては、胸が張り裂ける思いでした。しかし、後に担当した携帯電話(ガラケー)やAndroidスマホに移った時に、お客様の体験、UXという観点での知見がザウルスの時は不十分だったと思い知りまして、今の自分ならザウルスではもっとやれる事が一杯あったかもなあと、当時反省しました。その時の気持ちがスマホのUX検討時には少しでもお客様にとって気持ちいい・快適なUXをという原動力になったと思います。

初めての緊プロ

次に担当したのが下記の緊プロ商品です。今思うと、スマートフォンの原型みたいなものですね。プロジェクトチーム内でたった一人の企画でしたので、本当になんでもやりました。本業の商品企画業務はもちろん、取説制作から果ては生産ラインでの梱包仕様書をパワポで描いたり、STの人月計算をしたり。

散々苦労しましたが試験導入だけで終わってしまったのは残念でした。

<NTT西日本向けサザンクロスPDA  SL-C750>
http://www.ntt-west.co.jp/news/0306/030603.html

※国産PDAでは初の050発信に対応

そして携帯電話へ

残念ながらこの緊プロは、T-mobile向け携帯電話やるぞ!という突然の方針転換により自然消滅してしまいました。そこからなんだかんだあって通信事業本部のソフト開発部に異動となります。入社するまでワープロすらろくに触ってなかった文系人間が今度はソフト開発です。コードを書くなんて全く見当も付きません(笑)

でも人間やればなんとかなるものですね。当時Vodafone(後にSoftBank)向けの携帯電話のUXを何年か担当した後に、Android OS搭載の携帯電話作るぞ!という事で、そちらのプロジェクトに移籍する事になります。

<シャープ初のAndroidスマートフォン IS01>

このプロジェクトではGoogleの本拠地であるMountain Viewにも出張させて頂きました。本場のステーキは美味しかったです(笑)

後に部門長に申し入れて、ソフト開発部から商品企画部へ異動になります。こう振り返ると、職種としてはSSPという販社から国内営業本部、商品企画部、緊プロ、ソフト開発部を経験し、勤務地(居住地)としては栃木(矢板研修所)、幕張(柏寮、誉田寮)、大和郡山(ラポール寮、賃貸アパート、社宅)、西田辺(早春寮)、東広島(借上寮、借上社宅)と様々な部署と住まいを変えてきました。

これって割と珍しい経歴なのかなと思います。

引っ越し等はその都度大変でしたが、それぞれの立場からかつての立場を客観的に観る事が出来たり、新たなスキルを得る良い機会になったりなど、この辺は良い経験をさせて頂いたのかなと思います。

相変わらずアウトロー感半端ないですけど(笑)そして本年4月16日付でまた大きな変化がありました。今度は衛星通信含めた次世代通信事業に関わる事になりました。

携帯電話から衛星通信機器事業へ

現在の新規事業開発統轄部へ異動という事で、今度はLEO/MEO(※)衛星向け地上局用フラットパネルアンテナと屋内端末の開発です。

※LEO/MEO:Low Earth Orbit/Medium Earth Orbit 地球低軌道/地球中軌道

正直始まったばかりです。ここでは今まで体験した世界とは大きく異なり、毎日が新しい発見があり、勉強の日々です。実はこの事業、国が公募をしていた助成金事業でもあり、先日11月6日に国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)より、新規事業開発統轄部の提案が採択され以下の発表がありました。数十億が動くというすごい世界です。https://www.nict.go.jp/press/2023/11/06-1.html

2.非地上系ネットワーク関連技術
【研究開発プロジェクト①】
名称:LEO/MEO衛星向け地上局用フラットパネルアンテナ技術に関する研究開発プロジェクト
提案者:シャープ株式会社
交付決定額:13億5,000万円(令和5年度〜令和6年度(ステージゲート評価実施年度))
研究開発期間:令和5年度〜令和9年度

<LEO/MEO衛星コンステレーション>

ちなみに、本日10:00にリリースも配信しました。ぜひ下記もご覧ください。
リリース:LEO(低軌道)/MEO(中軌道)衛星通信アンテナの開発を開始

というわけで資金も無事に確保、これからが本当のスタートです!国内においてLEO/MEO向け衛星アンテナを開発しているメーカーは、今のところ当社以外には寡聞にして聞きません。

国も後押しをしてくれてますので日本一、世界一にもなれるチャンスです。
これからも頑張ります!

次のバトンは、私と同じくソフト開発部、情通営業部、イノベーション企画室、商品企画部と数奇な運命を辿った、頼りになる企画マン、

通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部
大川喬弘さん

に託します。よろしくお願いします!

(西本望/新規事業開発統轄部 第一開発部)

≪シャープ横断♪バトンリレー≫とは…?
みなさんの人脈を駆使しバトンのようにコラムを繋いでいくという、太古の昔からある数珠つなぎ企画!第20走者は新規事業開発統轄部 第一開発部の西本さんでした。第21走者は、西本さんからバトンを託された大川さんです。お楽しみに♪

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