シャープミュージアムに見る、“Be Original.”の歴史と未来
2017年6月6日
当社の新コーポレート宣言“Be Original.(ビー・オリジナル)”には、2つの意味が込められています。
創業者の早川徳次が残した「誠意と創意」の精神は、これからも私たちの『原点』(オリジナル)として受け継いでいくこと。そして、「人に寄り添い、新しい価値を提供し続ける企業」として、様々な独自商品・サービスを提供することで、お客さま一人ひとりが自分らしさを実現できる、「あなたのための『オリジナル』」を創り続けること。
当社が宣言したこの言葉を、社員はどのように受け止め、行動しているのか。様々な社員へのインタビューを通して、“シャープらしさ”とは何かを探っていきたいと思います。今回は、奈良県天理市にある、当社の歴史や技術を展示するシャープミュージアムの運営や案内を担当する藤原さんに話を聞きました。知らなかったエピソードがたくさんあり、私自身、シャープのことがもっと好きになりました。
歴史や技術を展示するシャープミュージアム
――シャープミュージアムには、どのような方が来られるのでしょうか?
1981年の設立当初は、独創性の高い当社の製品や、創業者が掲げた「誠意と創意」から産まれた製品、そしてこれから世に出るであろう最先端の技術を紹介すること、要するに技術誇示が主な目的だったようです。そのために、競合他社の方にはご遠慮いただくなどの制限もありました。
ラジオ部品
――最新の技術をアピールする場所だった、ということですね。
そうですね。そのために、研究開発部門があるここ天理に建てられました。ただ現在では、国内外を問わず幅広いお客さまに当社の歴史や技術を見学いただける自由な施設となっています。来場者は、国内外合わせて累計60万人にのぼります。お客さまの中には、シャープが好きすぎて困るという小学生のお子さんを連れて来られたご家族もいらっしゃいました。シャープのロゴを見るだけで興奮するような。「やっと連れて来ることができました」と、ご両親も大変お喜びでした。それから、ある海外の先生がシャープミュージアムを大変気に入られて。30年程前より、毎年学生さんを連れてお越しいただいています。
――海外から毎年! シャープミュージアムのどういったところに魅かれるのでしょうか。
海外でも、100年続く企業はあまりないようで、ここに来れば企業が継続する秘訣がわかるのでは? とおっしゃる方もいます。あとは、創業者 早川徳次の生い立ちやマインドに魅かれて来場される方も多いですね。
――早川創業者を知るきっかけって何なのでしょうか。
テレビの歴史を調べてという方もいますし、シャープペンシルからという方もいらっしゃいます。珍しかったのは、宮沢賢治さんのある小説に、「シャープペンシル」という記載が出てくるそうなんです。あの時代のシャープペンシルって、もしかして国産だったのかな、ということで興味を持たれた方も。
シャープペンシル(早川式操出鉛筆)
――やはりテレビやシャープペンシルのイメージって強いですよね。その他にも、人気の展示品はありますか?
ものすごく多いです。例えばテレビを研究されている方が来られて、「え、超音波洗浄機もやってるんですか!」「これもシャープだったんですか!」とか、目的以外の製品に驚かれることが多いですね。当社をお知りになるきっかけは皆さん違うのですが、シャープミュージアムに来てみると、色々な発見があるようです。「シャープ製とは知らずに使っていました」と言われることも多いです。
――そう言っていただくのは、社員としてもなんだか嬉しいですね。
嬉しくなりますね、本当に。この仕事の醍醐味かもしれません。私たち社員だけではなくて、お客さまも嬉しくなるそうなんです。その気持ちを共有できることは、幸せなことです。
――懐かしさの中に新たな発見があると、テンションがあがりますね。見学者と藤原さんが一緒になって喜んでいる姿が目に浮かびます。
よく驚かれるのは、最初は電機メーカーではなく金属加工の会社だった事や、シャープペンシルが社名の由来という事。あとは、世界初や国産一号機が多く、重要科学技術史資料(未来技術遺産)に登録されたり、IEEEマイルストーンに認定いただいたりと、公に認められている製品が多い事も驚かれます。
展示品(ラジオの時代)
――最近では、当社が開催するモノづくり研修「SHARP IoT. make Bootcamp」の講義でもシャープミュージアムを紹介していますよね。参加いただいたIoTベンチャー企業の方々の反応はいかがですか?
モノづくり研修はミュージアムの見学からスタートするのですが、「シャープもベンチャーから出発したとは想像してませんでした」「シャープのモノづくりに対するチャレンジの歴史を感じられた」といった声が多く寄せられます。ある方は、「何々のシャープです、と言うだけで名刺がいらない。例えば、『AQUOS』や『ロボホン』など。代名詞になるようなものが自分たちにはまだないので、そういう存在になりたいです」とおっしゃっていました。誠意と創意で積み重ねて来た歴史があるからこそ、今に繋がっているということに共感いただくことが多いです。だからこそ、一緒にモノづくりがしたいとおっしゃっていただけるのだと思います。
シャープはなぜ新しいものをつくるのか
――展示されている製品を見ていると、革新的なものやユニークなものが多い気がします。なぜ新しいものをつくり続けられたのでしょうか。
いつの時代も、「とにかくやってみよう」という気持ちが強かったようです。ラジオ、テレビ、家電製品と開発してきて、次は何だろうと若い技術者たちが集まって議論した事があったそうです。議論して議論して、出て来た3つのキーワードが、「マイクロ波」、「超音波」、「コンピュータ」でした。
――それって、今でも開発しているものですよね。
そうなんです。マイクロ波は電子レンジですよね。超音波は、超音波洗浄機。実はあまり知られていないのですが、眼鏡屋さんや時計屋さんにある超音波洗浄機もつくっていました。私の実家は時計屋だったのですが、家にあった洗浄機はシャープ製だったのかと、驚いたのを覚えています。コンピュータについては、当時は国からの支援もあり、どのメーカーも大型コンピュータの開発に注力していた時代です。これからはコンピュータだと当社の技術者たちも考えたのですが、先駆者がたくさんいて門前払いだったそうです。そこで、「身の丈にあったコンピュータを」ということで、電卓の開発に繋がっているんです。
超音波洗浄機
この3つのキーワードの話をお客さまにするようになったのは、ある科学館の教授がいらっしゃた際に、「このミュージアムに足りないものは何ですか?」と尋ねたことがきっかけでした。その方は一言、「ドラマ」とおっしゃったんです。製品を展示していますよね。だから当然のように製品の説明をしていたんです。でもその背景には、必ず開発した理由があるはずなんです。そこから、当時の資料を調べたり、OBの方に伺ったりすると、開発の背景などがわかってきました。お客さまに「ドラマ」をお話しするとね、ぐーっと気持ちが入ってくるというか、距離が近くなるんですよ。
当社第一号電子レンジ
世界初オールトランジスタダイオード電子式卓上計算機「コンペット」
――若い社員が率先して議論し、3つのキーワードを、という話がありました。早川創業者が新しいことを提案するトップダウンだけではなく、ボトムアップから生まれた製品もたくさんあるのですね。創業者に魅かれて集まった人たちだからこそ、そのような創意に満ちていたのでしょうか。
そうですね。そういうことができる会社だと思ったからこそ、入社したのではないでしょうか。
――これまで様々な製品の担当者にインタビューをしてきましたが、その意志というか、風土を感じることがあります。
新入社員の研修中にシャープミュージアムを紹介する時間があるのですが、それはもうキラキラしているんですよ。本当に希望に満ちているし、あんなこともこんなこともやってきた会社で、自分もあんなことやこんなことがしたいって。研修が終わって帰っていくじゃないですか。でもね、昼休みとか定時後にまた来てくれるんです。今年の新入社員も来てくれて、こちらで販売しているシャープペンシルの復刻版を買っていかれました。「私は天理に配属になったので、同期の分も買っていきます」って。
継続であり、チャレンジでもある“Be Original.”
創業者ゆかりの品々
――過去104年の当社の歴史と、コーポレート宣言“Be Original.”には、どのような関係があると感じますか?
ここに来ていただくお客さまは、皆さん当社の独創性に期待を持たれています。私が入社した80年代後半は、「シャープが何々を開発!」という記事が毎日のように新聞に出ていました。年末のヒット商品ランキングのトップ10のうち、半分を当社が占めていた時代もありました。それが当たり前だと思っていたし、そういう会社に入れたんだという気持ちもありました。その時代の当社は、“Be Original.”そのものだったんですよね、すごく独創性があって。
――「目の付けどころが……」と今でも言っていただけるのは、新しく、尖った製品をつくりつづけてきたからなんですね。
本当に「まさか」のものが次々と出ていたと思います。液晶ビューカムは、「覗いて撮らなくてもいい!」とか、「回る!」とか(笑)
液晶ビデオカメラ「液晶ビューカム」
――モノづくりのハードルがぐっと下がり、ユニークな商品が次々と出てくる時代になりました。でもやっぱり、「シャープがまたこんな尖ったもの出してきた!」って会社でありたいですよね。例えば「ロボホン」は衝撃でしたし、シャープらしさを私は感じました。
私もそう思います。「ロボホン」を紹介するときに、まず、「しゃべります」、「プロジェクターにもなります」、「歌います」、「踊ります」と説明していくと、一つひとつ喜んでいただくのですが、最後に「電話なんです」と言うと、「ええー!」と必ず驚いていただけるんです。それなので、電話と明かすのはいつも最後にしています(笑)
――やっぱり驚きますよね。「ロボホン」を耳に当てる映像の衝撃、私も忘れられません。
――“Be Original.”のもう一つの意味である、「あなたのための『オリジナル』を創り続けること」についてはいかがですか?
ロボット家電「COCOROBO(ココロボ)」が出た頃、遅くまで一人残って真っ暗な居室で仕事をしていた時のことでした。早く帰らなきゃと焦って、机の角に足をぶつけてしまったんです。寒い夜でした。そしたら、「だいじょうぶ?」って声が聞こえたんです。「誰もいないはずなのに……」と思ったら、COCOROBOがしゃべってたんです。たまたまだと思うんですよ。でもそのときはね、親しみを覚えましたね(笑) 「大丈夫、大丈夫」って返事をしたくなりました。その時にね、こういうことかなと思いました。人とモノの距離だけじゃないと思うんです。困ったときに、誰かと繋がる架け橋になってくれたり、想い出をつくるきっかけになってくれたり。でもそれをつくり続けるって難しいことですよね。
――性能ならわかりやすいのですが、人の感情に関わることですからね。でもその難しいことにチャレンジしていくという決意が、“Be Original.”には込められているのだと思います。当社には、難しいことほど燃える人って多いですよね。
そう思います。難しいことほど、面白いですから。シャープミュージアムにある過去の製品を見ても、決して簡単にできたものはありません。難しいことにチャレンジし続けてきた人たちの想いが、今のシャープをつくっているのだと思います。
――最後に、シャープミュージアムの“Be Original.”は何ですか?
他のミュージアムや展示施設を思い浮かべていただくとわかると思うのですが、たいてい壁には、歴史や展示物を説明する文章がありますよね。シャープミュージアムには文章がほとんどないんです。お客さまに文章を読んでいただくのではなく、説明員や社員とのコミュニケーションを通して、当社のことを知っていただきたいという想いからそうしています。社員一人ひとりにも、当社との初めての接点があったはずです。そのエピソードを添えて、お客さまと会話をする。その時間が大切なんです。まずはたくさんの社員に来てもらいたいですし、その人なりのシャープをお客さまに伝えて欲しいと思っています。
――シャープミュージアムに来れば、自分とシャープとの接点を見つけることができそうですね。
これだけの遺産、というよりすごい資産があるので、ここで待ち受けているだけではだめだと思っています。最近では、イベントや他の施設への出張展示なども行っています。天理以外でも、当社の歴史や技術に触れていただけるような新しい取り組みを通して、当社が目指す“Be Original.”を感じていただきたいと思っています。
――ありがとうございました。
シャープミュージアム歴史館の入り口にて
製品が生まれた時代背景を想像しながらシャープミュージアムを歩いていると、当時開発していた先輩方の熱意や活気、想いが伝わってくるような気がします。製品を知り、伝えていくことの大切さを感じ、身の引き締まる思いです。
(広報担当:M)
展示施設のご案内
http://www.sharp.co.jp/corporate/showroom/
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