【開発者インタビュー】リサイクルするプラスチックには、根本治療が必要
2013年11月6日
シャープは、使用済み家電製品から回収したプラスチックを、新しい家電製品として繰り返し利用する「自己循環型マテリアルリサイクル技術(以下、CMR技術)」を2001年以降に順次実用化してきました。その対象は従来、洗濯機、冷蔵庫、エアコンに多く使われているプラスチック(PP、PS樹脂)でしたが、この度、薄型テレビのプラスチック(PC+ABS樹脂)にも対象を広げました。
今回、この環境技術の開発者である、CS・環境推進本部 CS・環境技術開発センター 福嶋副参事(以下、福嶋さん)、戸田係長(以下、戸田さん)にインタビューを行いました。
開発者:福嶋さん(左)、戸田さん(右)
-福嶋さんは、CMR技術開発の当初から研究に携わっていますが、なぜプラスチックのリサイクル技術の開発に興味を持ったのですか?
-(福嶋さん)入社後、白物家電の開発部門で、食器洗い機などの開発を行っていました。当時、新しい商品開発に従事するなかで、当社のCMR技術の生みの親である先輩と出会いました。その先輩からプラスチックについて基礎から学び、添加剤によって様々な性質に変化するプラスチックに興味を持ちました。これがきっかけとなり、自ら希望して現在の部署に異動しました。
-プラスチックのリサイクルを行う上で、最も大切なことは何ですか?
-(福嶋さん)対症療法でなく、根本的な治療を行うことだと思います。プラスチックの劣化は、人間に例えれば老化のようなものです。老化を根本から変えるためには、食事、運動などで内側から老化を食い止める必要があります。もちろん、人間の体は、樹脂ほど言うことを聞いてくれませんが(笑)
-リサイクルの技術開発をしていて、最もやりがいを感じるのはどんな時ですか?
-(福嶋さん)他社にはない技術を確立した時です。今回も、廃材100%でリサイクルするという点にこだわりました。
-技術開発しても、世の中に出ないと意味がないですよね?
-(福嶋さん)当社はメーカーなので、具体的な成果を「商品」という形にして世に送り出すことができます。もちろん、そのためには高い性能が求められるので、大変厳しいです。今回、この部分に強いこだわりを持つ戸田さんがサポートしてくれました。
-リサイクルの技術開発をしていて、最もやりがいを感じるのはどんな時ですか?
-(戸田さん)今回のように、環境技術を実用化し、商品として世の中に出した時にやりがいを感じます。現時点では、再生材を薄型テレビに採用するほど、薄型テレビの回収量は多くありません。しかし、少しでも多くの再生材を商品の一部として世に送り出したいとの思いから、商品部門と連携し、車載用プラズマクラスターイオン発生機への採用からスタートすることになりました。
-今回、薄型テレビのプラスチック(PC+ABS樹脂)の再生材を商品に採用するにあたり、最も苦労した点は?
-(戸田さん)再生材は、コストを意識しなければ、品質の改善は可能です。しかし、効率的に特性を回復させ、さらにばらつきを抑えることは大変困難です。難燃性規格UL94※を取得するための試験は特に厳しく、合格した時はとてもうれしかったです。
(※UL94:プラスチック材料燃焼性試験で、材料の燃えにくさの度合いを表す規格)
-リサイクル技術の開発、実用化において、役に立った経験はありますか?
-(戸田さん)白物家電の品質や故障解析を担当していたので、商品に求められる部材に必要なスペックを把握していました。この経験が、今回開発した再生材を車載用プラズマクラスターイオン発生機の部材に、提案する際に役立ちました。
-今後の夢や目標はありますか?
-(福嶋さん)お客様の環境に対する意識は高まっており、身近な日用品では環境に良いからモノを買われる方が増えています。今後は、環境に配慮したモノづくりがお客様の価値につがなるように、再生材の価値を高めていきたいと思っています。
-(戸田さん)夢は、再生材を採用しているからシャープの商品を購入したいとお客様が思っていただけるような、環境ブランドを構築することです。より一層、リサイクル技術に磨きをかけていきます。
-ありがとうございました。 (広報担当:OG)
再生材の採用が決まったPCI発生機部材(矢印)
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