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“世界初”8K硬性内視鏡システムが拓く未来
~ 8K映像モニターの医療分野への導入事例 ~

当社は、「8Kエコシステム※1」を構築し、ディスプレイの高精細化や関連機器の応用範囲を飛躍的に拡大することで、さまざまな新しいビジネスが生まれると考えています。その一環として、今般、カイロス株式会社様が開発した8K硬性内視鏡※2システム向けに、医療分野用としては世界初となる「8K映像モニター」の納入を2017年11月から開始しました。今回、実際に医療分野で8K硬性内視鏡システムがどのように活用され、どのようなメリットをもたらしているのか、ご担当の方にお話しを伺いました。

※1 「エコシステム」は生態系を意味するもので、8Kの超高精細技術を核に次々と新産業の芽を創出し、社会のイノベーションを巻き起こすことをめざした当社独自の戦略。
※2 硬性内視鏡:筒の両端にレンズを装着する内視鏡。膀胱鏡、胸腔鏡、腹腔鏡などがある。

8K硬性内視鏡システム
(右が当社製70型8K映像モニター)

 

――「8K硬性内視鏡システム」を導入すると、手術はどのよう変わるのですか。

カイロス株式会社 代表取締役会長 千葉敏雄 先生(医師)

(千葉先生)現場の医師が驚くのは、片手で扱えるコンパクトさと軽量さ、そして、8K映像モニターの超高精細な画像とその質感です。8K技術によってこれまで見えなかったものが見えるようになりました。8Kの解像度は人間の視力に換算すると4.27※3に相当し、「およそ人間の眼では到達できないレベルの高画質映像」をリアルタイムで見ることができます。そのため、より高度で安全な手術が可能になると考えています。

※3 従来型のハイビジョン(2K)を視力1.07相当とした場合。

 

今回の「8K硬性内視鏡システム」の導入により、開腹手術を内視鏡手術に切り替えることができるようになり、従来の硬性内視鏡システム以上に患者さんの体への負担やリスクを大きく軽減することが期待されます。

内視鏡(硬性鏡)手術と開腹手術の違い
※イラストをクリックすると拡大表示されます。

 

(千葉先生)もう少し詳しく説明しますと、開腹手術は、その名の通り腹壁を切開して患部を直接見ながら手術を行うため、その分、患者さんの負担が大きくなります。また、術後の回復にもより時間がかかります。

一方、内視鏡手術は患者さんの腹壁に小さな孔をいくつか開け、内視鏡や手術器具を挿入し、内視鏡で映し出される患部の映像を医師がモニターで確認しながら行う手術です。開腹手術に比べ、それぞれの切開孔が小さいため、患者さんの負担が少なく、術後の回復も早まることから、より早期の退院が可能になります。

8K内視鏡手術の様子
※画像をクリックすると拡大表示されます。

 

――なるほど、患者さんの側からすると、とてもありがたいことですね。ところで、現場の医師から見ると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

(千葉先生)内視鏡手術に8Kを採用する医療面でのメリットは大きく3つあります。

第1のメリットは、「より広い手術空間」が生まれることです。8K内視鏡では術野(手術する部位)から少し離れた位置で撮影しても、ズームで鮮明な映像が得られます。このため、患部近くに「より広い手術空間」を確保でき、手術器具と内視鏡の接触が避けられます。また、より広い範囲を高解像度で撮影することもできるため、万が一、周辺部で出血があっても見落とさずに済みます。

8K内視鏡手術では手術空間が拡大

 

面積比16倍(タテヨコ各4倍)の拡大画像
※画像をクリックすると拡大表示されます。

 

(千葉先生)第2のメリットは、8K内視鏡を術野に近接させることで、これまでの映像の精細度では難しかった微小な血管・リンパ管・神経などの識別がしやすくなることです。がん組織と正常組織の境界も8K内視鏡ではより明瞭になります。

がん組織と正常組織の境界画像
※画像をクリックすると拡大表示されます。

 

(千葉先生)また、肉眼ではほとんど見えない一番細い手術用の糸でも手術ができる可能性が高くなります。

第3のメリットは、内視鏡の医療応用の質が向上することです。高精細で臨場感のある映像を、遠隔地にリアルタイムに伝送し、大画面の8K映像モニターで見ることにより、遠隔医療や医学教育への応用ができるようになるのです。8K映像で録画した一流の執刀医の手術映像を、若手医師の教育や研究などに役立てることもできます。

 
――8Kによって医療に画期的な進歩がもたらされ、私達の生活にも大いに役立つのですね。次に医療サービス面から見たメリットという点ではいかがでしょうか。

(千葉先生)大きく3つあります。

第1は、手術の効率が高まり、手術時間の短縮と手がけられる手術件数の増加につながることが期待されます。

第2は、患者さんの一層の早期退院を可能とし、より多くの患者さんの治療が行えることです。

第3は、8Kの高精細な映像で繰り返し手術手技を見ることができるので、若手医師の早期技術習得への支援となること。また、手術現場での視認性向上により医師がより長く現役として医療に従事できることから、結果的に内視鏡外科専門医数の実質的増加にもつながることです。

 
――将来的には、どんな発展が見込まれるのでしょうか?

(千葉先生)手術だけでなく、AIと組み合わせた自動診療システムへの応用なども考えられます。また、8K内視鏡に2つのカメラを搭載して、映像を3D化することも検討中です。3Dにすることで、手術の安全性が大きく向上することを期待しています。

 
――本日は有難うございました。

8K技術が、これまで出来なかった高度で安全な手術を可能にし、私たちの生活をより安心、安全、効率的に変えてくれる。今回、8K硬性内視鏡システムのさまざまなメリットをお伺いし、未来への期待を強く感じると同時に、当社の8K映像モニターもお役に立っていることが実感できました。また、さまざまな分野の医療がさらに進化する可能性についてもお聞かせいただき、今後、8K技術の重要性は益々高まるに違いないと確信しました。

(広報担当:C)

 
関連動画 : パプリカ内部を撮影した8K内視鏡デモの様子

 

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