2020年に小学校の学習指導要領が変わることが決まり、プログラミング教育が必修となることを受け、ロボットを使ったプログラミングへの注目が高まっています。そんな中、11月8日(木)、第2回【関西】教育ITソリューションEXPO(EDIX関西)において、株式会社フルノシステムズさまとシャープマーケティングジャパン株式会社の共催により、ロボホンの共同開発者でロボットクリエーター、株式会社ロボ・ガレージ代表取締役社長の高橋智隆さんと、先進的なプログラミング教育を実践されている東京都 小金井市立 前原小学校 校長の松田孝さんによる講演および対談イベントが実施されました。
松田さんの講演「これからのプログラミング授業」
前原小学校は先進的なプログラミング教育を実践しており、全校17学級のすべてにAIスピーカーを設置しています。また、2017年4月からは、5、6年生の5学級でロボホンを活用した「ロボット×プログラミング教育」を行っています。
6年生の「総合的な学習の時間」では「ロボット(AI)って、なに?」という授業が、学期ごとに3つのテーマに分けて行われます。
1学期 理解:機能を知る
2学期 交流:ロボホンを用いたプログラミング体験
3学期 共生:AIの仕組みについて体験し、基本の仕組みを理解することで、「共生」の感覚を育む
1年を通して、児童たちの多くが目を輝かせ、集中してロボットによるプログラミング授業を体験したそうです。特に、2学期は(1)ロボホンを動かすプログラミング体験、(2)ロボホンに画像を覚えさせ、覚えた画像に関する回答を返すAIの機械学習の体験、(3)4桁の数当てゲームをロボホンと競う体験を行いました。これらの体験を通じてロボットのプログラミングがどんなものかを学びました。
学習のふり返り
学習後の児童の感想の中に「人間には劣ると思っていたロボットも、プログラミング次第である程度人間のように答えることが分かった。人間にはロボットには表せない感情があるが、これもロボットが学習し、自分のものにしてしまったら、それこそ本当に人間だけができることが無くなってしまうのではないか」というものがあったそうです。この感想を読んで、松田さんは「『ロボットとの共生』について考えるきっかけをつかんでくれたのではないか」と感じたそうです。
また、ロボットを実際に見て、触れることで、「人間とロボットの関わりとは何なのか?」「AIがこれから自分達の人生にどう関わってくるのか?」「ロボット(AI)と人間との共生ってどうなるのか?」と哲学的に考えるきっかけを与えてくれるのがロボホンなのではないかと考えていますと、松田さんは締めくくられました。
高橋さんの講演「ロボット時代の創造」
「細部にこだわったモノづくり」+「エコシステム」
高橋さんは「作り手にノウハウが蓄積し、新発明が降臨する」との考えをお持ちで、自分の手でロボットを作ることにこだわられています。
また、「目の前の技術、プログラムに集中してとても良いモノができたと思っても、なかなか世の中に広がっていかず、自分の周りの人だけの限定的な効果になってしまうことがある。これを広げていくためには『エコシステム』※を考えなければならない。その中で、収益を上げていくことが大事」と高橋さんは語られました。
※ 生態系。ビジネスでは複数の企業によって構築された、製品やサービスを取り巻く共通の収益環境を意味する。
ロボットの役割は何か?
ユーザーと他の機器やサービスとの間を取り持つのがコミュニケーションロボットの役割だと考えますが、間を取り持つだけならすでにスマホがあります。しかし、なかなかスマホの音声認識を使ってもらいにくい状況があります。一方、人は愛着のあるペットやぬいぐるみには思わず話しかけてしまいます。スマホに愛着を持てる形を与えると、より話しかけやすくなります。「話しかけてもらい、情報を集め、プライバシーに配慮しながらサービスに活用することで、ユーザーや社会の役に立つことができるようにと制作されたのが、ロボホン。子どもたちがロボホンをクラスメイトとして見てくれれば、プログラミング教育に大変有効だろう」と語られました。
「今」の少し先を考える
高橋さんは、ロボホンはスマホの時代とロボットの時代の過渡期にある商品であり、また、「人と機械」「ハードとソフト」「合理性と感情」「技術と感性」「研究とビジネス」などの境界の融合領域にビジネスチャンスがあるのではないかとの考えをお持ちです。
教育においても、「今の社会の求めるニーズに振り回されてはいけない。それでは遅れをとってしまう」との危機感をお持ちで、一方、遠い未来を夢見ても可能性は低すぎるため、「今」の価値観の少し先、「まだマニアックな分野」「既存技術の掛け合わせ」にこそ「将来」がある、とのお考えを示し、講演を締めくくられました。
対談「ロボットとプログラミング教育」
イベントの後半には、松田さん、高橋さんに「ロボットによるプログラミング教育」「未来の社会で活躍するために今の子どもたちに必要なこと」の2つのテーマで対談いただき、興味深い議論が展開されました。
新しい学び「プログラミング教育」が必須となる中、教育現場での経験から「ロボットによるプログラミング教育」が教材として有望であり、中でもロボホンの可能性に期待していることが両先生から語られました。
特に印象に残ったのは、高橋さんが「ロボットに置き換えられてしまうような勉強だけを続けてはいけない」「試行錯誤があって、課題を発見して解決していくことで新たな発明につながる。実際に手を動かすことが非常に大事」と語られたこと、そして松田さんが「授業で見せる子どもたちの表情、姿はすごく素敵なのです。だから私、一生懸命、ロボットを使ったプログラミングをやりたいなと思っているのです」と笑顔で語られたことでした。
パーソナルなコミュニケーションロボットとして生まれたロボホンですが、進化を経てプログラミング教育への用途が広がり、教育現場の方々からもおおいに期待される存在に育ってきたと感じ、たいへん喜ばしく思いました。
今回、教育関係者向けへのイベントではありましたが、子育て中の親としての興味もあり、録音を繰り返し聴き、先生方の言葉の意図を確かめました。子どもの将来を考える上でもとても良い機会になったと思い、両先生ならびに関係者の方々に感謝いたします。
(広報担当:C)
株式会社フルノシステムズさまホームページ: http://www.furunosystems.co.jp/
『ロボホン』公式サイト: https://robohon.com/
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