シャープで複合機の商品企画を担当している企画Mです。
この度、1972年発売の当社の複写機第1号「シャープファックス」<SF-201>が「複写機遺産」に認定されました。
「複写機遺産」は、一般社団法人日本画像学会※1が2018年に創設したもので、日本の複写機産業発展の原動力となった初期の複写機の技術的・社会的功績を顕彰し、文化的遺産として後世に伝えるための認定制度です。
この機会に、長きにわたり複合機の開発に従事し、今回の認定にも尽力された複合機マイスターで大先輩のN氏に、私、企画Mがインタビューしました。
(企画M)
そもそも複写機開発のきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
(N氏)
当社は1964年に電卓1号機を商品化し、オフィスの効率化に貢献していましたが、「オフィスのOA化の訴求には電卓だけでは弱い。複写機も必要だ」という営業からの要望を受け、1969年(昭和44年)に産業機器事業部 開発部を立ち上げたことがはじまりです。
(企画M)
当時の開発体制や開発の様子はどのようなものだったのでしょうか?
(N氏)
奈良県大和郡山市にある当社の奈良事業所の第1工場に、メカユニットを開発していた社員3名と、トレース業務と庶務業務を兼ねた社員1名に、新入社員2名を加えた計6名(平均年齢28歳)が集結。1970年から開発がスタートしました。
認定された<SF-201>は電子写真方式のEF(Electrofaxエレクトロファックス)方式といわれる湿式CPC(Coated Paper Copier)複写機で、社内に経験者はおらず、全く新しいモノづくりへのチャレンジとなりました。
(企画M)
新しい分野の開発で、大変だったことは容易に想像できますね。生産に関してはどうだったのでしょうか?
(N氏)
1972年1月6日を初出荷と定め、前年の1971年晩秋に50台の生産をスタートしました。
計画台数の生産完了間際にトラブルがありましたが幸いにも大事に至らず、何とか予定台数の生産を完了し、初出荷の準備を整えることができたようです。
(企画M)
開発、生産ともに色々な局面を乗り越え、商品化されたのですね。その後市場での<SF-201>の評判はどうだったのでしょうか?
(N氏)
当時のカタログにあるように「A4判で毎分10枚!このクラス最高のコピースピード」(当時)。「チェックも簡単!使いやすい操作パネル」など、独自の特長が好評を博し、発売後4年間にわたり、SFシリーズで実に10種類以上のモデルが発売されました。複写機事業では後発メーカーだった当社が、お客さまのニーズをくみ取り、特長ある商品づくりを実現した結果だと思います。
(企画M)
販売現場にも当社独自の工夫があったのでしょうか?
(N氏)
当時の社長だった佐伯さんが自らお願いに歩くほど、販路拡大には苦労していたようです。そこで販売現場では、当時事務機系メーカーでは少なかった「クレジット制度」を採用しました。ユニークな商品とこのような販売取り組みで複写機発表の3年目の9月期に約10億円を売り上げたのです。
(企画M)
後発でありながら複写機メーカーとしての地位を築いていったのですね。
(N氏)
そうです。その勢いで当社は、普通紙コピー(PPC: Plain Paper Copier)への時代の流れを読み取り、乾式PPC複写機も開発していくことになりました。
そして、初号機発売から2年後の1974年に当社初の乾式PPC複写機<SF-710>を発売しました。当時の雑誌は、最後発でありながら乾式PPC複写機<SF-710>までも早々に発売する当社の様子を、「頼もしい新生児ぶりを発揮」と称し、周りも驚く躍進ぶりだったようです。
(企画M)
そうなんですね。今私たちが使っている複合機はこのころからはじまったのですね。
(N氏)
米国での乾式PPC複写機誕生は1959年でした。日本国内では1970年代はじめごろから乾式PPC複写機の時代に入っていきました。
<SF-710>は業界で初めて制御部にIC回路を搭載した「電子制御による複写機」でした。このように当社は、業界初の技術を搭載したシャープらしい複合機をその後次々と世に送り出していくのです。
(企画M)
なるほど。それが「本体一体型キーボード」「大型10.1インチカラー液晶タッチパネル」など当社の複合機の特長に受け継がれているのですね。さらに安心して商品をお使いいただけるように、2001年に業界で初めてCommon Criteria(CC)※2を取得しました。セキュリティにも配慮していたことが分かりますね。
「本体一体型キーボード」
2008年に<MX-2600FN><MX-3100FN>に装着可能なオプションとして設定され、以降も継続してさまざまなモデルにオプション設定されることになった。このキーボードにより、例えばスキャンデータをメール送信する際のファイル名やアドレス入力が容易となった。
「大型10.1インチカラー液晶タッチパネル」
2010年に発売したデジタルフルカラー複合機3モデル<MX-3610FN><MX-3110FN><MX-2610FN>に搭載された10.1インチの大型液晶。スマートフォンとともに普及したフリックなどのジェスチャー操作や、大画面で読み込み原稿を表示・確認したり、PCを介することなく直接Webページにアクセスし、表示された画像を印刷する機能(オプション)など、さまざまな新機能を可能とした。
(N氏)
はい。いずれの機能、特長もお客さま目線での商品開発により生まれたものでした。
また、これらの機能・特長だけでなく家電メーカーならではのデザイン性も評価されています。現在も継承されている「風紋を感じさせるデザイン」は、どのような空間にもなじむよう配慮したものです。さらに現在当社の複合機が国内のコンビニエンスストアへの導入シェアNo.1※3であることからも、オフィスユーザーだけでなく老若男女を問わずすべてのユーザーに使いやすいマシンを目指していることをご理解いただけると思います。
「風紋を感じさせるデザイン」
2008年ごろに発売したMX-2600/3100シリーズ4モデルは、従来の複合機には見られなかった「風紋」を感じさせる独特な風合いを持っていた。さまざまな空間に馴染み、人に優しいビジネスパートナーになりたいという当社の願いをデザインに表現した。
(企画M)
今後もこのようなシャープらしいユニークな商品が複写機遺産として認定されると私たち企画、開発メンバーにとっても励みになります。
(N氏)
本当にそうですね。今回の<SF-201>の認定を受け、当社の歴史的意義のある複写機・複合機をぜひ遺産として皆さまにご紹介できればと思っています。
そこで、当社複合機事業創業当時(1972年~1980年代ごろ)の商品をお持ちの方がおられましたら、ぜひお声がけいただければと思います。
当時のお話などお聞かせいただければ幸いです。
当社創業当時の商品に関する情報提供ご連絡先:
(企画M)
ありがとうございました。先輩から当社複合機の歴史を学ぶことができました。
先人の想いを引き継ぎ、先人たちのアイデアや当社らしい個性ある過去の商品についての理解を深め、これからも人に寄り添い、人から愛される商品を企画していきたいと思います。
※1 画像の基礎と応用に関する情報交流を行い、画像技術の進歩と発展を目指す技術者、研究者の集まりで、画像科学と技術およびこれらに関する分野の情報を交換、吸収するさまざまな場を提供する団体です。詳細については日本画像学会のウェブサイトをご覧ください。
※2「Common Criteria(CC)」
情報機器や情報システムなどのセキュリティを評価するための基準を定めた国際規格。当社は2000年からデジタル複合機のデータセキュリティ化に取り組み、米国で販売していたデジタル複合機用の「データセキュリティキット」<AR-FR1/2/3>が、2001年4月に米国認証機関から複合機・プリンタ業界で初めて“Common Criteria EAL2”認証を取得。コピー、プリント、ファックス、スキャンの全ての電子データの暗号化、および出力・送信処理後のデータ消去により、高い安全性を確保しました。
※3 2024年7月24日現在、当社調べ。
製品情報
https://jp.sharp/business/print
ニュースリリース
1972年発売の「シャープファックス」<SF-201>が 「複写機遺産」に認定
シャープ複合機の歴史
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