AIoT 3.0「人と社会に寄り添うIoT」~人と地域社会を支えるAIoT家電の新たな活用可能性~
2024年11月8日
みなさんは「AIoT家電」がどのようなものかご存じですか?
まず、AIoTとは「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」と「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」を組み合わせて創った造語で、当社の登録商標です。AIが使用者の好みやライフスタイルを学習することで、機能の最適化を図るだけでなく、使用シーンに応じて機能やサービスを自発的に提案するようになり、暮らしをより便利で快適にしていきます。このAIoTに対応している家電が「AIoT家電」です。
音声で会話などが楽しめるココロエンジンを搭載したロボット掃除機「COCOROBO」やウォーターオーブン「ヘルシオ」の技術基盤を活かした「AIoT」のコンセプトを2015年のCEATEC※1で「人に寄り添うIoT」として発表しました。その後、2016年にAIoT家電の1号機となるモバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」を発売して以来、「AIoT家電」はキッチン家電や生活家電、空調機器、テレビなど、12カテゴリー※2まで対応商品を拡大しています。そして、2024年9月に、累計1,000機種を突破しました。
※1 Combined Exhibition of Advanced TEChnologiesの略称。デジタルイノベーションの総合展。
※2 ヘルシオ、ホットクック、冷蔵庫、洗濯機、空気清浄機、エアコン、HEMS、テレビ、スマートフォン、RoBoHoN(ロボホン)、 ストックアシスト、ペットケアモニターの12カテゴリー。
同時に、空調機器と連携した「COCORO AIR」、調理機器と連携した「COCORO KITCHEN」、洗濯機と連携した「COCORO WASH」などAIoT家電を中心としたネットワークサービスも開始しました。
そして、2019年にはそれらを統合するスマートホームアプリケーション「COCORO HOME」をリリース。前述の既存サービスはもちろん、他社サービスとの連携やAIoT家電を活用した見守りサービス・伝言サービスも開始し、より人の暮らしに寄り添った機能・サービスを提供できるようになりました。
さらに現在は、AIoT家電から取得した情報や発話機能を、防災・レジリエンスへの応用や、省エネなどの社会貢献に役立てられないか、日々検討を進めています。
この「AIoT家電」の現状や今後について、Smart Appliances and Solutions事業本部 Smart Life事業統轄部AIoT事業推進部 部長の長沢に話を聞きました。
――「AIoT家電」は具体的にどのような事ができるのですか?
一般的にIoTの基本機能としては、「状態確認」と「遠隔制御」があります。シャープのAIoT家電でもエアコンや空気清浄機の運転状態や調理機器の状態を確認したり、外出先からエアコンをつけたり、洗濯機の予約時間を変更したりといった遠隔制御ができます。
それに加えて、シャープの特長の1つと言えるのが、コンテンツのダウンロードです。具体的には、水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」のレシピダウンロード、プラズマクラスター洗濯機への洗濯コースのダウンロード、各家電の音声発話コンテンツのダウンロードなどがあります。
何をダウンロードするのが最適なのかをクラウドAIが考えています。ホットクックであればユーザーの調理履歴を学習し、各ご家庭に寄り添ったレシピをおすすめして、ダウンロードしてもらうことで、より家電の最適化が行われます。
また、シャープのAIoT家電はしゃべるという事も特長の1つなのですが、各地域の天気に合わせた使い方を教えてくれる音声コンテンツをダウンロードして発話したり、ユーザーの好みにあったキャラクターボイスを有料でダウンロードして発話させたりといったことも可能です。基本的なIoTの機能に加えてこういった家庭ごとに最適なコンテンツを、家電にダウンロードさせたり、発話したりできるのが、AIoTの特長の1つだと考えています。
――シャープ以外の製品との連携も可能ですか?
他社の製品やサービスとオープンに連携できるのもシャープのAIoTの特長の一つだと考えています。お客様のスマートライフを実現するには、他社との連携が不可欠です。家の中の家電製品すべてをシャープで揃えられるわけではないですし、シャープが作っていない製品もあります。たとえば他社製の給湯器や照明、睡眠センサーなどを、他の家電とまとめて制御でき、出かけるときに一括でオフにすることなどができます。機器だけでなく、他社のレシピサービスや見守りサービスとの連携もしています。
――AIoTが3.0に進化しましたが、進化のポイントを教えて下さい。
進化のポイントは主に2つです。「AIによるさらなる生活向上」と「社会課題解決への貢献」です。
動画にまとめましたので、ぜひご覧ください。
――AIによるさらなる生活向上はどのように実現するのでしょうか?
生成AI技術の登場により、ユーザーとの音声対話やテキスト対話がスムーズにできるようになりましたが、生成AIの活用はどの会社でも取り組んでいます。そこで我々は、シャープが長年培ってきたAIoT技術や家電データと生成AIとを上手く組み合わせて新たな価値を提供できないかと考えました。
先日開催した、シャープの“Next Innovation”を体感できる、技術展示イベント「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」では、洗濯コースを自動設定する機能を提案したところ好評でした。洗濯機には、毛布コースやぬいぐるみコースなどそれぞれのアイテムにおすすめのコースが用意されていますが、多くのお客様は、これらのコースの存在自体を知らないことが多いのが実情です。そこで、生成AI技術を活用して、COCORO HOMEの対話AIを提案しました。お客様がAIに汚れたアイテムについて相談すると、そのアイテム専用の選択コースをおすすめして、さらには洗濯機に自動で設定されます。あとは指示に従って洗濯物を入れてスタートするだけ、といったデモを展示しました。AIに対して言葉(テキスト)だけでなく、洗濯物の写真を提示する形でも機能が利用できます。これにより、家電の使い方を知らなくても、自然に扱えるようになります。
洗濯機は一例ですが、他の家電でも、サービス公開に向けて検討してまいります。
――「人と社会に寄り添う」社会課題解決への貢献は、どのような取り組みでしょう?
これまでのAIoT家電は家庭内に関する課題をAIとIoTの技術で解決するというものでした。現在、それらに加え、そこに住む人だけでなく、地域に住む人たちや自治体、電力会社の人、防災機関の人たちまで笑顔にするような取り組みにAIoT家電が使える可能性が出てきています。
具体的には、空気清浄機を使った見守りです。空気清浄機は温度や湿度センサーを搭載しているので部屋の空気環境を把握することができます。夏場の暑い日など部屋の温度管理が適切でない可能性を検出し、すみやかに対応を促すことができます。
また、ホコリセンサーや照度センサーなどを使い、室内での人の動きや明るさ変化から、居住者の生活反応を推測することができます。
これまでメーカーが提供していた見守りサービスは、離れた場所に住む家族が地方に住む両親を見守るといった目的に使われていましたが、今回新たに、自治体が地域に住む高齢者を見守るといった目的にAIoT家電を活用していただきました。
石川県能美市は、市内在住の高齢者がIoT家電を日常的に利用するだけで、市内の関係機関・支援者が対象者を遠隔で見守ることができる「IoT高齢者見守りサービス」の構築事業を2023年10月に着手し、2024年4月からサービスを開始しました。このサービスは、家電を使うことで特別なセンサーやカメラなどを設置せず、少ない負荷で導入することができ、市が業務委託しているケアマネージャーの方々が地域の中で高齢者を見守ることに活用できます。
地方ではとくに高齢者の数に対してケアマネージャーが不足しており、1人のケアマネージャーが30~40人の高齢者を担当することもあります。そのため、頻繁に訪問することができず、体調の変化になかなか気づけないこともあるそうです。遠隔で見守ることができれば、ケアマネージャーの負荷軽減にも繋がり、人手不足が深刻な地方でも安心して住み続けることができるようになります。
さらには自治体にとっては、人口の流出削減にも繋がると考えています。また、将来的には、災害が起こった場合は、家電の状態を見ることで、停電や家屋の倒壊の状況把握の可能性など、平時は見守り、有事は防災・減災として有効活用することができると考えています。
――シャープの「AIoT家電」の強みは何ですか?
2024年9月に「AIoT家電」が累計1,000機種を突破しました。「AIoT家電」は全国の市区町村99%をカバーしており、ほとんどの市区町村に少なくとも1台はAIoT家電があるという状態が、シャープの「AIoT家電」の強みの源泉だと考えています。したがって、地域ごとの家電データを活用した分析も可能になっています。これは、2016年からいち早くシャープがIoTに取り組んできた成果であり、長年蓄積してきたお客様の使い方情報や設定、家電情報などを保有しています。お客様の事を理解し、それぞれの人に寄り添った機能提供ができますし、今後は、地域ごとの稼働状況を分析することで、災害発生時に被害状況を推定するといった防災、減災への活用も見込まれます。
――最後にあらためて、なぜこのような取り組みをしたいと考えたのか教えてください。
私はエモパー※3やロボホンの立ち上げ時期から一貫してAIoT関連の商品に携わっており、AIoTのクラウド技術を支えるAIoTプラットフォームの外販にも力を入れてきました。外販を通じて社外の方々とさまざまな会話をする機会があり、AIoTプラットフォームに蓄積している家電データの価値を再認識しました。そこで改めて確信したことは、シャープが目指す事業ビジョンの実現のためには、「AIoT家電」と「AIoTプラットフォーム」を両輪とした推進が必要不可欠だということです。
その後、家電のAIoT事業推進を担うことになり、この考えをどのように実現できるか考えていく中で、生成AIの登場や、つくば市との防災取り組み、自治体見守り案件を通して、「人と社会に寄り添うIoT」という新たなAIoTコンセプトの着想を得ました。これまでの2年弱で、大きな構想が固まりましたので、ここからは「実現」のフェーズになります。お客様の真のスマートライフの実現に向けてオールシャープで取り組んでまいりたいと思います。
※3 お客様の生活シーンに合わせて、スマートフォンにお客様の気持ちに寄り添ったメッセージを音声や画面表示でお知らせしてくれる機能。
――ありがとうございました。
家電は単なる家事をする製品ではなく、色々な可能性を秘めているのです。今後も自然災害・高齢化問題・温暖化対策などさまざまな課題に対応していく「AIoT家電」で、スマートライフサービスの社会実装を推進し、安心・快適・省エネな暮らしを提案してまいります。
<関連サイト>
■リリース:AIoT家電が累計1,000機種を突破
Related articles