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シャープが有機ELディスプレイで目指すもの
 —フレキシブルディスプレイで新たなライフスタイルを提案—

2020年2月18日

著者:広報H

「フォルダブル(折り畳み型)」有機ELディスプレイ(開発品)

「フォルダブル(折り畳み型)」有機ELディスプレイ(開発品)

 

シャープ製有機ELディスプレイを搭載したスマートフォンの第2弾「AQUOS zero2」が、1月30日以降に通信キャリア様などから順次発売されました。当社は、液晶のリーディングメーカーとしてディスプレイを進化させてきたため、液晶のイメージが強く、有機ELは最近になって着手したと思われる方がいるかもしれません。しかし、実は、シャープは有機ELの研究・開発において、約20年間の技術の蓄積があります。今回は、当社の有機ELディスプレイについて、開発・企画の担当者に聞きました。

OLED事業推進本部OLED事業推進部(開発)主任技師 近藤 孝

OLED事業推進本部OLED事業推進部(開発)主任技師 近藤 孝

ディスプレイ開発本部 技術企画統轄部 技術企画部 主任 加納 周吾

ディスプレイ開発本部 技術企画統轄部 技術企画部 主任 加納 周吾

 

<有機ELとは>

そもそも有機ELとは何なのでしょうか。ELとは、Electro Luminescence(エレクトロルミネッセンス)の略で、ホタルやオーロラが発光するように、材料そのものが発光する”現象”を言います。有機ELは、外部の電気を使うことによって発光する材料です。この材料を用いてディスプレイ上にさまざまな映像を表示させます。

 

<液晶ディスプレイと有機ELディスプレイの違いとは>

では、液晶ディスプレイと有機ELディスプレイでは、どこが違うのでしょうか?
一般的な液晶ディスプレイは、主に、光の透過(透光)と遮光を画素毎に制御する液晶パネルと、その背面に位置する光源(バックライト)、パネルの全面に配置して色表示を行うカラーフィルターなどで構成されています。低消費電力で、超高解像度の表示が可能です。

一方、有機ELディスプレイは、液晶と異なり材料自らが発光するので、バックライトが不要になります。その分、薄型・軽量化が可能です。また、黒を表示させる場合、有機ELディスプレイでは、有機EL材料を発光しなければ黒になりますが、液晶ディスプレイでは、遮光してもバックライトの光が完全に遮光されず、ごく微量の光がもれてしまうこともあります。そのため、有機ELディスプレイの方が、黒の表現が得意で、コントラスト性能が高くなります。

液晶ディスプレイと有機ELディスプレイの違い

液晶ディスプレイと有機ELディスプレイの違い

 

<当社の有機ELディスプレイについて>

他社の有機ELディスプレイには、テレビなどに利用されている、白色の有機ELにカラーフィルターを合わせたものもありますが、当社は1画素ごとにRGBそれぞれの色を発光する有機EL材料を使用した、カラーフィルター不要の「塗り分け」方式を採用しています。カラーフィルターによる光のロスがないため光利用効率が高く、さらに薄型・軽量化が可能になります。

「塗り分け」方式は、1画素ごとに各RGBの有機材料を塗り分ける(蒸着する)必要があり、製造プロセスがとても難しくなります。当社が有機ELへ投資することを決めたのは2016年、設備稼働は2017年末です。当社には有機ELの研究開発の歴史と、液晶で培った数々の量産技術ノウハウがあったため、たった1年あまりで、自社製有機ELディスプレイ搭載スマートフォン「AQUOS zero」を商品化(2018年12月発売)することができました。

 

<有機ELディスプレイにもIGZO搭載>

さらに当社は、有機ELディスプレイに対しても、日本放送協会(NHK)と共同開発し、注目を集めた、昨年11月発表の「ローラブル(巻取型)」ディスプレイなどの開発品において、SHARPのコア技術であるIGZO※1の搭載を始めています。当社は2012年3月、世界で初めて、ディスプレイを駆動するTFT(薄膜トランジスタ)に酸化物半導体IGZOを用いた液晶パネルの量産化に成功し、超高精細、高速駆動、低消費電力、大画面化などの優位性を実現してきました。このIGZOは有機ELにも応用が可能であり、モニタ向け、車載向けなど、中型サイズ以上のアプリケーションにも高性能の有機ELパネルを展開することができると考えています。

※1 In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、O(酸素) により構成される酸化物半導体。液晶などのディスプレイを駆動するTFT(薄膜トランジスタ)を構成する重要な材料として用いられる。

 

<シャープが有機ELで目指すもの>

でも、8K液晶テレビなど最先端の液晶技術を持つシャープが、なぜ、有機ELを展開しているのでしょうか。スマートフォンなどでは、薄さ・軽さで機種を選んでいる方もいます。そういうお客様には、薄型・軽量を追求した有機EL採用モデルがラインアップにあれば、選択肢が増えてきます。

先述の通り、1月30日以降、当社有機ELディスプレイを使ったスマートフォンの第2弾「AQUOS zero2」が発売されました。この商品は、第1弾「AQUOS zero」の世界最軽量※2記録をさらに更新し、約141gを達成しています。世界最軽量を実現できたのは、バックライトなどの部材がない有機ELディスプレイのシンプルな構造も貢献しています。

「AQUOS zero2」は、最軽量なだけでなく、4倍速※3の高速表示を実現した新開発の有機ELディスプレイを搭載しており、動きの速いゲームなども残像を抑えてクリアに映し出すことが可能です。

スマートフォン「AQUOS zero2」

スマートフォン「AQUOS zero2」

※2 画面サイズ6インチ以上で、電池容量が3,000mAh(公称値)を超える防水(IPX5以上)対応のスマートフォンにおいて。2019年12月11日現在。シャープ調べ。

※3 スマートフォンのディスプレイにおいて、毎秒120回の表示更新に連動して間に黒画面を挿入することにより、当社2018年度モデル「AQUOS zero」(毎秒60回表示状態が変化)の4倍の毎秒240回の表示状態の変化を実現。あらかじめ設定が必要です。

 

しかし、有機ELを展開している理由はそれだけではありません。バックライトが必要な液晶では柔軟に曲げるのは難しく、また、今後求められてくるディスプレイサイズの大型化と、省スペースや持ち運びの容易さという相反する要望を満たすには、フレキシブルな有機ELディスプレイでの展開が最適だと考えました。

「ローラブル(巻取型)」有機ELディスプレイ(開発品)

「ローラブル(巻取型)」有機ELディスプレイ(開発品)

「フォルダブル(折り畳み型)」有機ELディスプレイ(開発品)

「フォルダブル(折り畳み型)」有機ELディスプレイ(開発品)

現在、先述の「ローラブル(巻取型)」や、昨年4月公表の「フォルダブル(折り畳み型)」、折り曲げによる車載での新たなディスプレイのデザインを訴求した「車載向け屈曲型」など、今までになかったような新しいライフスタイルを提案するため、様々な形態のフレキシブル有機ELディスプレイの開発・商品化を進めています。

「車載向け屈曲型」有機ELディスプレイ

「車載向け屈曲型」有機ELディスプレイ

 

当社は、8Kなど最先端技術を持つ液晶と、フレキシブルディスプレイなどで発展が見込める有機ELの特長に応じて、最適なディスプレイを提供することで、利便性向上と社会の発展に貢献していきます。

 

(広報担当:H)

 

<関連サイト>

■シャープブログ
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「Inter BEE 2019」のNHK様のブースにて、『ローラブル(巻取型)』4K有機ELディスプレイが初披露

■ニュースリリース
30V型4Kフレキシブル有機ELディスプレイを開発
スマートフォン AQUOS zero2 世界最軽量をさらに更新し約141gを達成
AQUOS zero を商品化

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