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暑い夏の運動に最適なクーリングアイテム「CORE COOLER」とは?
―当社独自の12℃「適温蓄冷材」を使った3社共同開発①―

デサントジャパン株式会社から発売された「CORE COOLER」 (右下は「CORE COOLER」に使用する12℃「適温蓄冷材」)

デサントジャパン株式会社から発売された「CORE COOLER」
(右下は「CORE COOLER」に使用する12℃「適温蓄冷材」)

本当に暑いですねぇ。外に出るのがおっくうになりますし、運動なんかとてもとても。でも、そんな季節にぴったりなクーリングアイテムがあるんです!
当社研究開発事業本部内に発足した「TEKION LAB(テキオンラボ)1」では、Smart Appliances & Solutions(以下、SAS)事業本部と連携しながら“蓄熱技術”の事業化を進めています。この技術から生まれた「適温蓄冷材」を使い、デサントジャパン株式会社(以下、デサントジャパン)・株式会社ウィンゲート(以下、ウィンゲート)・当社で、業界初のグローブ型クーリング(暑熱対策)アイテムを共同開発、2020年6月19日、「CORE COOLER」<DAT-9000>がデサントジャパン株式会社より発売されました。

このCORE COOLER」は、「適温蓄冷材」をグローブ型のアタッチメントで固定して使う商品で、手のひらを適温の12℃で冷やすことで、体の中心部の温度である深部体温の上昇を抑制する製品です。グローブ2個と蓄冷材2個(両手用)のセットとなっています。   ⇒ 製品詳細はこちら(デサントサイト )

でも、“深部体温”という言葉は聞き慣れないですよね?それに“12℃”ってよく冷えるイメージないし、手のひらより効率的に冷やすところは他にありそう・・・。今回は、「CORE COOLER」の商品化に関わったデサントジャパン 井上さまと当社担当者(「TEKION LAB」篠崎、SAS事業本部 水野)に、こうした疑問や開発の経緯、商品特長などをうかがいました。

※1 2017年3月に研究開発事業本部内に発足した、当社初の社内ベンチャー組織。水をベースとする独自の「蓄熱技術」をもとに、「適温蓄冷材」による応用商品を製作しています。発足以来、数々の協業を進める一方、2019年9月より、氷点下2℃のおいしい新感覚飲料を楽しめるクーラーバッグ「TEKION COOLER(テキオン クーラー)」<CQ-SS92A-A>をシャープブランドとして販売しています。


― 「CORE COOLER」発売後の反響はどうですか?

<デサントジャパン 井上さま>

今年6月19日の一般発売前に、「MAKUAKE」さまで、クラウドファンディングを行いましたが、目標100,000円に対して、応援購入総額はなんと約20倍の2,108,700円を達成しました。一般販売でも、当日分として予定していた170個がすぐに完売になるなど、たいへん好調であり、直販サイトのデサントストアでは売り切れとなっています。8月7日から追加販売を行う予定です。

「CORE COOLER」を手に装着した デサントジャパン株式会社 井上さま

「CORE COOLER」を手に装着した デサントジャパン株式会社 井上さま

 

― 順調であることが分かりほっとしました(笑)。では、共同開発に至った経緯をお聞かせください

<デサントジャパン 井上さま>

ウィンゲート代表の遠山さまは、ナショナルチーム(スポーツの日本代表チーム)を担当した経験もあるトレーナーであり、当社(デサント)のシューズ・アドバイザーもしていただいています。その遠山さまより、当社のシューズ責任者を通じて、シャープにこんなユニークな技術があるんだよと、“蓄熱技術”を紹介いただき、すぐにシャープさんとお会いすることにしました。初めて3社でお話をさせていただいたのが、昨年(2019年)の6月です。

<「TEKION」 篠崎>

“適温”をさらに広げていきたいという当社と、その“蓄熱技術”に興味を持っていただき、商品に活かせるのではと考えるデサントさまとの方向性が一致し、共同開発をスタートしました。

当社「TEKION LAB」 篠崎さん (手に持つのは「CORE COOLER」で使用されている12℃「適温蓄冷材」)

当社「TEKION LAB」 篠崎さん
(手に持つのは「CORE COOLER」で使用されている12℃「適温蓄冷材」)

 

― 「CORE COOLER」開発の狙いについて教えてください

<デサントジャパン 井上さま>

ウィンゲート代表の遠山さまより、マラソン大会で活躍されている選手は、手のひらを保冷材で冷やすことで、深部体温の上昇を抑えていると教えていただきました。アメリカのスポーツトレーナー資格に加え、暑熱対策・熱中症対策の先進的なノウハウをお持ちの遠山さまは、アメリカで行われているそうした分野での最先端の指導を、ぜひ日本でも普及させたいと常々思っておられたそうです。この話は本当に目から鱗でした。スポーツ用品メーカーである当社だからこそ、手のひらを冷やすことで暑熱対策・熱中症対策ができるクーリングアイテムを作りたいと思いました。この商品は、アスリートに限らず暑い時期の子供・お年寄りの安全対策にもなりますし、暑い中で作業する方々に提供することで社会貢献にも繋がると考えました。

 

― では「適温蓄冷材」について簡単に教えてください。

<「TEKION」篠崎>

当社には “蓄熱技術”といって、液晶材料の研究で培った、物質が凍る温度と融ける温度を自在にコントロールできる技術があり、この技術から生まれたのが「適温蓄冷材」です。“不思議な氷“と言っても良いですね。ベースは水ですが、その水に様々な材料を組み合わせることで、物質が凍る温度と融ける温度をコントロールすることが可能です。 氷は融ける際、氷と水が同時に存在する時間があり、その間は一定の温度を保ちます。「適温蓄冷材」は、冷やす対象によって融点の温度を調整します。調整可能な温度は開発品も含めて-24~+28℃で、マイナスからプラスまで自在に設計できます。

蓄熱技術及び「適温蓄冷材」の詳細 ⇒「TEKION 適温 テクノロジー」

「TEKION LAB」の「適温蓄冷材」は、周囲温度が「適温蓄冷材」融点よりも高い場合、-24~+28℃で調整できます。

「TEKION LAB」の「適温蓄冷材」は、周囲温度が「適温蓄冷材」融点よりも高い場合、
-24~+28℃の範囲で適温をキープできます。

 

― 「CORE COOLER」に使われている「適温蓄冷材」は”12℃”ということですが、それほど冷たくないですよね。”12℃”にした決め手はなんですか?

<「TEKION」 篠崎>

確かに”12℃”と聞くと、体を冷やすには少しぬるいのでは…?と思う人は多いでしょうね。しかし、一般の保冷剤を、ぎゅっと握ってみると分かりますが、冷たすぎて、すぐに痛みを感じてしまいます。痛みを感じる商品って、そんなものはいらないですよね。実は、人は皮膚表面温度が17℃以下になるような冷刺激を受けると痛みを感じるという論文も出ており、それを元に「TEKION LAB」で検証した結果、皮膚が痛みを感じる17℃以下にならないように冷やすのに最も効果的なのは、”12℃”を保つ「適温蓄冷材」であることが分かりました。これだと、気持ちいい温度で手のひらを長く冷やすことができるのです。

 


12℃「適温蓄冷材」を説明する動画
(デサントジャパン株式会社サイトより ”12℃の暑熱対策 「TEKION」蓄冷材の効果!”)

 

― なぜ、”手のひら”を冷やすんですか?ほかにも効果的な部分があるのでは・・・。

<SAS事業本部 水野>

手のひらには、体温を調整する動静脈吻合※2という特殊な血管があるからなんです。この血管を通る血液を冷やすことによって、冷えた血液が体内を巡り、身体内部(深部体温)を冷やします。深部体温とは、脳や内臓など「体の内部の温度」のことですウィンゲート代表の遠山さまがおっしゃるように、暑熱対策には、体表温度よりも深部体温を下げることが重要と言われるようになってきました。手のひらなら、この深部体温を効率よくクーリングできるんです。足の裏などにも動静脈吻合がありますが、足の裏には「適温蓄冷材」は貼り付けられないし、ランナーなら違和感があって走りづらいですからね。

当社「SAS事業本部」 水野さん

当社「SAS事業本部」 水野さん

※2 動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう:Arteriovenous Anastomoses(AVA)体温を調整する特殊な血管)

※2 動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう:Arteriovenous Anastomoses(AVA)体温を調整する特殊な血管)

 

― 「CORE COOLER」が体を冷やすテクノロジーは分かりました。では、その冷却効果と、効果的な冷却のタイミングを教えてください。

<SAS事業本部 水野>

冷却効果が保持できる時間は、装着後約20分3です(周辺温度35度 手のひら34度の場合)。

<デサントジャパン 井上さま>

検証というものではありませんが、我々もデサント社内で自ら実験をしています。「CORE COOLER」を装着してジョギングすると、装着しない場合と比べて、100~150グラムほど発汗量が減っています。また、普通の保冷材を持って走ってみたのですが、使っていて苦しかったです。契約しているアスリートからは、あくまでも個人的な感想ですが、30℃近い中で走っても、体温が急にあがるようなことはなかったというご意見もいただいています。

<「TEKION」 篠崎>

体が「暑い」と変化を感じ始めたときでなく、事前に体を「プレクーリング」しておくことが暑熱対策には非常に重要です。当社と独立行政法人 労働安全衛生総合研究所が行なった実験では、暑熱環境下で運動を始める前に20分程度12℃「適温蓄冷材」で“クーリング”した場合としなかった場合では、明らかに深部体温に差が出ることがわかりました4。熱中症発症の危険領域が深部体温40℃付近と言われているので、プレクーリングすることで、その温度に達する時間を遅らせることができます。

<デサントジャパン 井上さま>

今、篠崎さんがおっしゃったように運動前のウォーミングアップや、現場作業員の移動中(準備)などに「プレクーリング」として使用するのが最も効果的ですが、運動や作業の最中に使っていただいても、もちろん効果があります。帰り際のクールダウンにも良さそうです。また、深部体温が下がると質の良い睡眠が取れると言われていますので、お休み前のご使用もお進めしたいですね。スポーツ観戦、買い物の行き帰りなど、様々なシーンで使っていただける商品です

※3 デサントジャパン株式会社による測定結果
※4 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所とシャープによる検証結果

 

― 暑い夏にぴったりの商品で、どんな場面にも使えそうですね。では、商品開発する上で、こだわったことや苦労したことなど、教えてください。

<デサントジャパン 井上さま>

もともと、ランナー向けとして商品化を検討していたのですが、「適温蓄冷材」が小さいとすぐ融けますし、大きいと持ちやすいがドリンクを飲むときなどに握りにくいというトレードオフの関係にあり、その中から最大公約数の解を見つけるのが大変でした。シャープさんに手作りの「適温蓄冷材」を作ってもらい、何度も検証しながら、現在の大きさになりました。

アタッチメントの形状も、初めは五本指だったのですが、着脱のしやすさを突き詰めていく中で、シンプルなこの形になりました。

また、開発初期段階では、手に当たる側の生地を2重にしていましたが、薄いメッシュ素材にも関わらず冷たさを感じないというアスリートのご意見をいただき、12℃の効果を発揮しやすいように、直接「適温蓄冷材」が手のひらにふれるように変更しました。

さらに、「適温蓄冷材」が滑らないよう、シリコンのゴム止めをつけるなど商品化まで大変でした。

「CORE COOLER」アタッチメントの裏側 (「適温蓄冷材」が滑らないよう、装着する黒い部分にシリコンのゴムを貼り付け)

「CORE COOLER」アタッチメントの裏側
(「適温蓄冷材」が滑らないよう、装着する黒い部分にシリコンのゴムを貼り付け)

<「TEKION」 篠崎>

12℃「適温蓄冷材」は5℃以下で氷になりますが、氷が解けて元の水状態になり、冷やしてまた氷になるというのを繰り返しできないといけません。一度だけではなく、繰り返して同じ物性を保ち続けるのが難しいんです。安定した「適温蓄冷材」を開発するのが大変でした。

また、研究所での開発と量産では違ってきます。「適温蓄冷材」はいくつかの材料をまぜて作ります。研究所内の小さなビーカーならよく混ざりますが、量産するほどの大量の材料を均質に混ぜるのは難しいのです。ほかにも、量産に移ると、パッケージ(袋)を思うように形作れないといったトラブルもでてきて、安定して作れるまで製造現場に立ち会いながら、委託先と一緒に装置設定を検討するなど、苦労しました。

「TEKION LAB」では、氷点下2℃のおいしい新感覚飲料を楽しめるクーラーバッグ「TEKION COOLER(テキオン クーラー)」など、物を冷やす製品は開発していましたが、直接、人体向けに使用するのは今回がはじめてでした。もともと市販されている人体向け保冷材とは温度帯も違い、一般の人にはなかなか12℃「適温蓄冷材」の効果が伝わりづらく、「深部体温が下がる」とか「気持ちの良さ」をいかに伝えられるか、ここにこだわって開発しました。

 

― ありがとうございます。シンプルな商品ですが苦労されたのが分かりました。当社とデサントさまのチームワークも深まってきていると思うので、今後の共同開発も期待しています。

<デサントジャパン 井上さま>

実は、もう既に商品化してるんですよ! 



8月3日より発売開始された共同開発第2弾、その名も「適温クーリングフェイスガード」。次のブログでは、「適温クーリングフェイスガード」について紹介します。


(広報担当:H)

<関連サイト>
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■製品情報
「CORE COOLER」(デサントジャパン株式会社のサイト)

■「TEKION LAB」
「TEKION 適温 テクノロジー」
「TEKION LAB」公式サイト
チャレンジサイトNo.16:社内ベンチャー「TEKION LAB」のチャレンジ

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