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当社独自開発の「3℃適温蓄冷材」で、ワクチンなど医薬品の定温物流分野へ参入②
ー「コロナワクチン保冷バッグ」を商品化/「-22℃適温蓄冷材」も新開発ー

「コロナワクチン保冷バッグ」        「3℃適温蓄冷材」

     「コロナワクチン保冷バッグ」            「3℃適温蓄冷材」

前回、「3℃適温蓄冷材」と、株式会社スギヤマゲン(以下、スギヤマゲン)さまと共同開発した「定温輸送容器セット」を紹介しました。今回は引き続き、スギヤマゲン藤井さま、当社「TEKION LAB」の内海・池田の3名に、「新型コロナウイルスワクチン保冷バッグ(以下、コロナワクチン保冷バッグ)」、さらに「-22℃適温蓄冷材」について語ってもらいます。

 

― 前回の話では、厚生労働省から引き合いがあったと伺いましたが・・・

(藤井さま)はい。日本に届いた新型コロナウイルスワクチンは、一部を除き全国の基本型接種施設のディープフリーザー(超低温冷凍庫)で保管されます。そこから、2~8℃の温度帯に保って各自治体の接種会場に移送され、接種されることになります。厚生労働省の要望は、この接種会場へ輸送するための保冷バッグを、短期間に大量に用意して欲しいというものでした。(前回紹介した)「定温輸送容器セット」ではそのご要望にお応えするのが難しいため、専用の保冷バッグを開発することにしました。

株式会社スギヤマゲン 機能容器事業部長 藤井 健介さま

株式会社スギヤマゲン 機能容器事業部長 藤井 健介さま

 

― 「定温輸送容器セット」と「コロナワクチン保冷バッグ」の違いを教えてください。

(藤井さま)簡潔に言うと、「コロナワクチン保冷バッグ」は「定温輸送容器セット」をベースとして、新型コロナウイルスワクチン輸送に必要な機能だけに特化した製品です。「定温輸送容器セット」は断熱性の高い(温度を維持する能力が高い)真空断熱材を使用するため、手作業で組み立てる必要があり、生産するのに少し時間がかかります。短期間で大量にとのご要望に応えるため、製造が比較的容易な発泡スチロール製の容器に変えました。接種会場までの輸送時間は原則3時間以内とされ、長時間輸送を考慮する必要がないので、発泡スチロールで十分保冷可能ですし、コストも安くなります。ただし、「4℃(パラフィン系)蓄熱材」を使用しないので、凍結させた「3℃適温蓄冷材」を凍結庫から取り出した後、30分ほど室温で待機させる必要があります。

 

「定温輸送容器セット」

「コロナワクチン保冷バッグ」

保冷容器(ボックス)の
材質

真空断熱材 使用

発泡スチロール 使用

使用されている
蓄冷材・蓄熱材

「3℃適温蓄冷材」4枚、
「4℃(パラフィン系)蓄熱材」4枚

「3℃適温蓄冷材」4枚
 

待機時間

不要

30分室温で待機

保持時間
(35℃環境)

48時間
(「3℃適温蓄冷材」2枚なら24時間)

12時間
  

その他

1つのバッグでバイアル50本分の
ワクチン輸送が可能

 

― 「コロナワクチン保冷バッグ」は何個納品されたんですか?

(藤井さま)厚生労働省から4万個の受注があり、2月から6月末にかけて全国の接種会場11,500カ所に4万個を納品しました。厚生労働省が無電源で使える保冷容器をこれだけ大量に採用するのは初めてじゃないでしょうか。また、それ以外にも、全国の自治体に3万個以上を直接納品しました。「3℃適温蓄冷材」の枚数でいうと、あわせて30万枚ほどになりますね。

 

― 4万個と言うのは大きな数字ですね。ところで話は変わりますが、「TEKION LAB」では、先日「-22℃適温蓄冷材」を発表しました。これについて紹介してください。

(内海)-25℃の環境下で凍り始める融点が-22℃の「適温蓄冷材」を新たに開発しました。「-22℃適温蓄冷材」は、冷凍食材の保冷に適した-20℃付近の温度で一定時間保冷することが可能です1。また、-30℃設定の凍結庫を使用する場合、従来の保冷剤と比較すると、凍結させるのにかかる時間を約40%以上短縮できます2。凍結に必要なエネルギーを抑えられ、CO2排出量の抑制にも貢献できるんです。(「-22℃適温蓄冷材」についての詳細はこちら

※1 保持できる温度や時間は、蓄冷材の使用量や使用条件によって異なります。
※2 当社実験条件による比較。-30℃設定の専用凍結庫で500g容器の蓄冷材3枚を凍結用ラック内に並べ、最も凍結時間が長くなる蓄冷材にはさまれた真ん中の蓄冷材が凍結完了した時間を計測。庫内実測温度は-28℃~-30℃。

 

― なぜ、「-22℃適温蓄冷材」を開発したのですか?

(内海)ドライアイスは近年、原料となる液化炭酸ガスの不足などにより夏場を中心に品薄となる傾向が続いており、ドライアイスに代わる蓄冷材が求められています。我々も冷凍輸送の現場でのドライアイス代替材料に「適温蓄冷材」で参入できないかと考えていました。当社以外にも冷凍食品向け蓄冷材がありますが、使用前に-40℃の専用凍結庫内で凍結させる必要があります。こうした現場では、冷凍食品などを-25℃程度に設定した業務用冷凍倉庫で保管することが多く、25℃以下で凍結する「適温蓄冷材」であれば、専用凍結庫を使わずにその冷凍倉庫内の空きスペースで凍結させることが可能であり、「-22℃適温蓄冷材」にチャンスがあると考えたのです。-20℃も検討しましたが、アイスクリームが溶けてしまう温度帯なので「-22℃適温蓄冷材」に絞りました。

専用凍結庫を使わない場合、もしくは超低温の凍結庫の設定温度を少しでも上げることができれば、その分省エネに繋がります。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の課題設定型産業技術開発費助成事業4「高効率・省エネルギーを実現するドライアイス代替蓄冷材およびコールドサプライチェーンの開発」というテーマへの申請が認められ、開発を行いました。

※4  2019年12月より事業開始。戦略的省エネルギー技術革新プログラムとして交付。

 

― ドライアイス代替用途として活用されるんですね。

(内海)はい、でも「-22℃適温蓄冷材」はそれだけではないのです。

(藤井さま)医薬品輸送に「-22℃適温蓄冷材」は無関係と思われるかもしれませんが、これがあることで「コロナワクチン保冷バッグ」のオプションが増えました。輸送の際に-15℃以下の冷凍保存が推奨された時期があり、それが可能なバッグのニーズも出てきました。そこで、内海さんに相談すると、十分対応可能な温度帯の「適温蓄冷材」をちょうど開発し終わったとのこと。それが「-22℃適温蓄冷材」でした。検証を経て、「-22℃適温蓄冷材」を利用した「コロナワクチン保冷バッグ」も商品化しました。自治体によっては、慎重を期して-15℃以下での冷凍輸送を求める声もありますので、それらのご要望には「-22℃適温蓄冷材」を使用した「コロナワクチン保冷バッグ」をおすすめしています。

 

― 「-22℃適温蓄冷材」もワクチン輸送に活用されているわけですか。それでは、スギヤマゲンさまには2種類の「適温蓄冷材」が納入されているんですね。

(池田)はい。区別しやすいように「3℃適温蓄冷材」は無色、後から追加した「-22℃適温蓄冷材」は着色し青色にしています。「3℃適温蓄冷材」を無色にしたのは、前回お話ししたように、実用化したものの中で、最もセンシティブな結晶構造だからなんです。それで、余計なものを入れたくなかったというのが理由です。

「-22℃適温蓄冷材」

「-22℃適温蓄冷材」

 

― 最後に、今後の展開を教えてください。

(藤井さま)「定温輸送容器セット」、「コロナワクチン保冷バッグ」と次々に商品化しましたが、課題に感じていることがあります。「適温蓄冷材」は1枚480g(容器込み570g)ですので、4枚で合計2kg強の重さになります。これは、現場で配送される方にとっては、少し重たいのです。それで、「適温蓄冷材」の容量を減らし、短時間配送用途の軽くて使いやすい保冷容器の商品化を検討しています。さらに、真空断熱材を使用した海外輸送BOXなども開発中です。いずれも、シャープの「適温蓄冷材」を用いたもので、「TEKION LAB」と連携しながら、さらにご満足いただける製品を作っていきたいと思っています。

もうすぐ商品化予定の輸送容器セット(右下は海外輸送BOX)

もうすぐ商品化予定の輸送容器セット(右下は海外輸送BOX)

(池田)残念に思っていることは、「適温蓄冷材」には蓄熱(保温)の機能がないので、パラフィン系蓄熱材との併用が必要なことです。大変険しい道のりですが、蓄熱機能を持つ「適温蓄冷材」を何とか開発して、それだけで事足りるようにできればと思っています。

左より 社内ベンチャー「TEKION LAB」代表 内海 夕香、「適温蓄冷材」開発担当 池田 有佑

左より 社内ベンチャー「TEKION LAB」代表 内海 夕香、「適温蓄冷材」開発担当 池田 有佑

(内海)医薬品輸送の分野では、スギヤマゲンさまと連携を深めながら、今後も共同展開できればと考えています。昨年商品化した「12℃適温蓄冷材」、今回スギヤマゲンさまに納入した「3℃適温蓄冷材」などにより、展開が弱かった流通分野で一定の成果をあげることができました。材料技術などをさらに進化させ、より多くの温度帯の「適温蓄冷材」を実用化し、流通分野はもちろん、さまざまなシーンでご利用いただけるよう開発を進めて行きたいと思います。

 

― ありがとうございました。

 


当社の「適温蓄冷材」が、新型コロナウイルスワクチン輸送にも活用されていることを2回にわけてご紹介しました。「適温蓄冷材」は飲料向け保冷材を皮切りに、医薬品輸送、ドライアイス代替材料など、多くの場面で活用され始めています。蓄冷材と言えば、「TEKION LAB」の「適温蓄冷材」と言われる未来の実現に向け、今後も事業展開を進めてまいります。

(広報担当:H)

<関連サイト>

当社独自開発の「3℃適温蓄冷材」で、ワクチンなど医薬品の定温物流分野へ参入①ースギヤマゲンさまと医薬品向け「定温輸送容器セット」を共同開発ー

■株式会社スギヤマゲン:公式サイト(ワクチン用)保冷バッグシャープ株式会社様と「医薬品向け定温輸送容器セット」を開発しました(TOPICS)
■ニュースリリース:
 -22℃に温度を保つ「適温蓄冷材」を開発 
 「3℃適温蓄冷材」を活用した医薬品向け「定温輸送容器セット」を開発
■「TEKION LAB」:「TEKION 適温 テクノロジー」「TEKION LAB」公式サイトチャレンジサイトNo.16:社内ベンチャー「TEKION LAB」のチャレンジ
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