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「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池」とは?人工衛星の次は電気自動車へ!(1/2) ― 世界最高水準の高効率「化合物太陽電池」で目指すもの ―

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化合物事業推進部 主任の植田 浩介(左)と同 田中 康裕 手に持つのは、世界最高水準の「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池モジュール」

化合物事業推進部 主任の植田 浩介(左)と 同  田中 康裕
手に持つのは、世界最高水準の「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池モジュール」

みなさんは、宇宙で活躍する人工衛星に当社の太陽電池が使用されているのをご存知ですか?当社は住宅用やメガソーラー向けなど、様々なタイプの太陽電池を開発・実用化しています。なかでも、人工衛星向けとして、また、将来、実用化が期待される電気自動車向け太陽電池なども視野に入れ、世界最高水準の高効率な「化合物太陽電池」での事業開発を進めています。

今回は、化合物事業推進部のメンバーに話を聞きました。当社が採用する「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池」の特長や、それをベースとした自動車用太陽電池での協業、さらに、今後の展開などについて2回にわたりご紹介します。

 

― 「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池」を開発したきっかけを教えてください

当社は1967年より宇宙用太陽電池の開発をスタートし、1976年には実用衛星「うめ」に採用されるなど、その後も宇宙用太陽電池を開発してきました。衛星自体の進化もあり、限られた設置面積でより高効率、軽量な太陽電池が求められるようになり、理論上、高い変換効率が得られる「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池」に目をつけ、2000年から研究を行っています。 → シャープの太陽電池 研究開発の歴史(参考)

当社宇宙用太陽電池搭載の人工衛星 <JAXA提供> 左上:実用衛星「うめ」(1976年) 右上:陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(2014年)、 左下:技術試験衛星Ⅶ型「きく7号」(1997年) 右下:温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(2009年)

当社宇宙用太陽電池搭載の人工衛星 <JAXA提供>
左上:実用衛星「うめ」(1976年) 右上:陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(2014年)、
左下:技術試験衛星Ⅶ型「きく7号」(1997年) 右下:温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(2009年)

その後、エネルギー・地球環境問題の解決などを目指す 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)※1の太陽光発電に関する研究開発テーマに参画し、その中で開発・実用化を進めてきました。

※1産官学の連携及び、国際ネットワークの活用で、エネルギー・地球環境問題の解決と産業技術の競争力強化を目指す独立行政法人。太陽光発電や風力発電、省エネルギー技術、燃料電池エネルギーなどの開発・普及を進める。   

  

― 太陽電池というと住宅用の「結晶シリコン太陽電池」が思い浮かぶのですが、「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池」とはどんな違いがあるのですか?

大きく分けると、太陽電池は①シリコン系②化合物系③有機系の3つに分類されます。

シリコンとは 元素の1つであるケイ素(Si)のことで、①のシリコン系はケイ素を主体とする半導体によって発電します。単結晶と多結晶、原子が不規則に結合したアモルファスシリコンなどがありますが、当社の住宅用太陽電池は製造が比較的容易な「単結晶(シリコン)太陽電池」を使用しています(産業用太陽電池では、多結晶シリコンも使用しています)。

③の有機系は、炭素を含む化合物である有機分子によって発電する太陽電池です。発電効率が低いものの、低照度(暗い場所)での発電効率が高いのが特長です。当社では、ビーコン向けとして安定的に発電できる「色素増感太陽電池」を実用化しています。

そして、私達が担当しているのは②の化合物系多接合型になります。化合物系とはシリコンや有機分子ではない材料の太陽電池のことで、多接合型とは複数の太陽電池が重なった構造の太陽電池のことです。ひとつの太陽電池で吸収できなかった光をその下の太陽電池が吸収できるので、シリコンに比べて電気に変換できる光の波長領域が広いために変換効率が高いのです。いくつか種類がありますが、当社は「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池」を採用しています。

太陽電池の分類(材料による分類)
* 化合物とは、化学反応を経て2種類以上の元素が化学反応することによって生成する物質で、言い換えると2種類以上の元素が化学結合で結びついた物質です。

 

― なるほど。「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池」についてもう少し詳しく教えてください。

「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合太陽電池」とは、Ⅲ族(ガリウム)とⅤ族(ヒ素)を中心とした原料から作られる3層の半導体で構成された太陽電池です。「結晶シリコン太陽電池」は1つの材料(単層)で光を電気に変換しますが、3層あることで、電気に変換できる光の波長領域が広いため、変換効率が約30~32%と高くなります(「結晶シリコン太陽電池」は20%程度) 。

下記の画像は、「結晶シリコン太陽電池」と、トップ層にインジウムガリウムリン(InGaP)、ミドル層にガリウムヒ素(GaAs)、ボトム層にゲルマニウム(Ge)を積層したリジットタイプの「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合太陽電池」の比較ですが、「結晶シリコン太陽電池」が300~1,100nmまでの波長しか変換できないのに対し、「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合太陽電池(リジットタイプ)」は、波長が短い300~700nmの領域はInGaP、700~900nmではGaAs、長い波長の900~1,800nmではGeと、広い波長で変換できることが分かります。そのため変換効率が高くなるんです。

「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合太陽電池」と「結晶シリコン太陽電池」の比較

 

― リジットタイプという言葉が出て来ましたが、ほかにも種類があるんですか?

はい。宇宙用として、もともとリジットタイプを生産していたのですが、さらに高効率で軽量な宇宙用太陽電池が必要とされてきたことから、開発されたのが薄膜タイプです。薄膜タイプもすでに小型の人工衛星などで使われてきており、今年度には、大型の人工衛星にも搭載される予定です。

 

― リジットタイプと薄膜タイプの違いは何ですか?

研究を進める中、長い波長(900nm以上)の光を変換するには、リジットタイプで使用しているGeよりもインジウムガリウムヒ素(InGaAs)の方が変換効率が良いことが分かりました。そのため、ボトム層をInGaAsに変えたものが薄膜タイプです。

「化合物太陽電池」<リジットタイプ>と<薄膜タイプ>
ではなぜ、薄膜タイプというのか疑問に思われると思いますが、文字通り大幅に薄くなっているからなんです。少し難しいですが、製造方法から話をすると、リジットタイプはボトム層のGeを基板として、その上にGaAsをガス状に薄く流して結晶化させて貼り付け、その上にInGaPを同様に結晶化させて積層しています。そのため、(画像と違って)実際は、基板のGeに比べてGaAsとInGaPはかなり薄い層になっています。逆に言うと、ガス状にして積層したGaAsとInGaPと違い、基板のGeは厚いのです。
そこで、製造方法を新たに開発し、Geの代わりに、InGaAsをガス状に流して結晶化させ貼り付けることを可能にしました。どうしても基板は必要ですので、積層する際に使用しますが、その後取り除きます。

こうしてできた薄膜タイプは、薄さと変換効率の両方の要望を満足させるもので、約10~20ミクロンと薄く、変換効率は約33~35%と高くなります(リジットタイプは約30~32%)。デザートのプリンで例えると、リジットタイプだと、黄色い部分の層が基板にあたるGeで、上のカラメルの層がGaAsとInGaPだと思ってもらってもいいです。カラメル層の部分は各数ミクロン程度の厚さで、黄色い部分の1/20ぐらいでしょうか。薄膜タイプは基板にあたるプリンの黄色い部分を取り除いたと想像してください。InGaAs の分だけ若干厚さが増えますが、カラメル層だけでできていると考えると、どれだけ薄いか分かりますよね。

 

― 確かにプリンに例えられると薄さが分かりますね。技術力の高さが分かります。

先ほどお話ししましたが、宇宙用としてほぼ半世紀(化合物太陽電池で20年)、研究を進めてきました。その長年の取り組みが技術力の高さにつながっているのだと思います。薄膜タイプは、NEDOの「革新的太陽光発電技術研究開発」テーマの一環として開発を行ったものですが、2013年4月に太陽電池セルの世界最高変換効率※2となる37.9%※3を達成しました。太陽電池モジュールについても、2016年5月に世界最高変換効率の31.17%※4を達成しました。モジュールは現在でも世界最高ですし、セルについても、3接合としては現在も世界最高5の変換効率です。

※2:2013年4月24日発表、研究レベルにおける非集光太陽電池セルにおいて。当社調べ。
※3:2013年2月、産業技術総合研究所(世界の太陽電池の公的測定機関の一つ)により確認された数値(セル面積:約1cm2)
※4:2016年5月19日NEDO発表。研究レベルにおける太陽電池モジュールにおいて(集光型を除く)。当社調べ。2016年2月、国立研究開発法人産業技術総合研究所(世界の太陽電池の公的測定機関の一つ)により、確認された数値[モジュール面積:968cm2(約31cm×約31cm)]です。
※5:当社調べ

 

― 現在は宇宙用がメインなんですか?

はい。しかし、事業拡大のため、それ以外の分野への検討を行っています。そのひとつが電気自動車用です。当社は、NEDOを通じてトヨタ自動車株式会社、および日産自動車株式会社と、この太陽電池を用いた自動車の公道での実証実験を昨年から始めています。公道を走る自動車用の太陽電池は初めてだったので、実は色々と苦労がありました・・・。

 

― そうなんですか。ぜひ、その話も聞かせてください!

 


次回は、「Ⅲ-Ⅴ化合物3接合型太陽電池」を用いた自動車用太陽電池での協業について紹介します。

(広報担当:H)

<関連サイト>

■SHARP Blog

トヨタ・日産との実証実験とは?人工衛星の次は電気自動車へ!(2/2) ―世界最高水準の高効率「化合物太陽電池」で目指すもの―

■ニュースリリース
太陽電池セルで世界最高変換効率37.9%を達成 
世界最高水準の高効率太陽電池を搭載した電動車の公道走行実証を開始
世界最高水準の高効率な太陽電池セルを活用し、電気自動車用太陽電池パネルを製作

住宅用太陽光発電システム「SUNVISTA」サイト
当社の太陽電池研究・開発の歴史

 

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