博物館展示の新たな可能性! “8Kで文化財「ふれる・まわせる名茶碗」”展に多くの方に来訪いただきました。
2020年8月31日
1ヵ月ほど前にご紹介した新文化財鑑賞ソリューションによる実証実験<“8Kで文化財「ふれる・まわせる名茶碗」”展(2020年7月29日~8月2日)>は、盛況のうちに無事終了しました。今回は、実証実験の様子や参加された方の感想などについてご紹介します。 → 前回ブログはこちら
実証実験で使用したのは、「8Kで本物に触(ふ)れる」をテーマに、当社が文化財活用センター※および東京国立博物館※のご協力を得て開発した「文化財鑑賞ソリューション」です。これは、直接手に取ることが難しい貴重な美術品や工芸品などの高精細画像を、8Kの超高精細ディスプレイに表示することで、拡大したり回転させたりして鑑賞できる「シャープ8Kインタラクティブミュージアム」をベースとしたものです。
東京国立博物館所蔵の重要美術品「大井戸茶碗 有楽井戸」を題材として、かたちも重さも本物そっくりに制作した新開発の「茶碗型コントローラー」や、70V型の大型8Kディスプレイ、8Kで撮影した画像データを用意しました。通常、触(ふ)れることができない本物に、あたかも触れながら鑑賞しているようなバーチャル体験を味わえます。
※ 独立行政法人 国立文化財機構に属します。
実は私、博物館にはあまり縁がなく、重要美術品といえども展示ガラスの中の茶碗を見るためだけにはるばる遠方まで行くという発想はなかったのですが、今回は世界でも例のない新しい鑑賞体験です。ワクワクしながら会場に行きました。
会場では、まず「茶碗型コントローラー」を持ってみました。実物と同じ凹凸が手で感じられ、想像以上にリアルです。ガラス展示では見えない茶碗の下の部分もしっかりと確認することができます。そのまま、8Kディスプレイに映し出された画像をじっくり見てみると、奥行きが感じられてきます。リアルな感触と目から感じる奥行き感が合わさり、実物にさわっているかのような錯覚を感じてしまいました。その状態で「茶碗型コントローラー」を回すと、映し出された画像も同期して回転し、なんとも不思議でおもしろい体験です。操作をしているうちに、「大井戸茶碗 有楽井戸」でお茶を飲んでいる自分を想像していました。拡大して見ることもできるので、微細なところまできれいに見ることができます。短時間の鑑賞でしたが、とても貴重な経験になりました。
会場に来られたお客様のアンケートによると、満足度が高く、多くの方が、「普段触ることのできない文化財の重さ・質感・サイズ感・雰囲気を体感できて良かった」との感想をお持ちでした。中でも、私が印象に残った感想は、「今までの“見る・聞く”という展示を超え、視覚障がいを持った方などにも楽しんでいただけるような、博物館展示の新たな可能性を感じた」(東京都40代男性)というご意見です。さらに、「展示品についての理解が深まり、小さな子どもも楽しめる」(神奈川県50代女性)といった感想もありました。確かに、”触(ふ)れる”という新たな感じ方で体感できれば、美術品などを楽しむことをあきらめていた視覚障がいをお持ちの方にも朗報ですし、博物館に行ってみたいと思われる方も増えそうです。子供も、”触(ふ)れる”ことで、よりその茶碗に興味を持ってもらえるのではと思いました。
また、「過去の所有者はこのようにして茶碗の美しさを楽しんだのかな」(神奈川県30代女性)と、作品の辿ってきた過去に思いをはせる方もおられました。織田有楽斎をはじめ名だたる茶人が所有してきた茶碗です。自分がそうした茶人になったかのように鑑賞するのもおもしろい体験だったかもしれません。
8Kの映像については、「まるで実物がそこにあるかのような映像の鮮明さ、立体感に驚いた」と多くの方がおっしゃっていました。「茶碗の小さなヒビや模様、留め具周辺の微妙な色の変化など細かいところまでしっかり再現されている」(神奈川県30代女性)というご意見や、「とにかく映像が美しく、近くで見ても粗がないので美術品を見るのに適している」(埼玉県50代女性)、「つやっとした感じや、ぬるつやとした質感がわかるように感じました。とてもきれいでした」(埼玉県40代女性)といったご意見もいただきました。当社8K画像の圧倒的なリアリティ感・高精細を実感いただけたのではないでしょうか。
今後の展開としては、他の茶碗や陶器、日本刀などの刀剣などを対象にできないかといった回答が複数よせられました。
この「茶碗型コントローラー」によるバーチャル体験の後、お客様の約6割が、別の場所に展示している本物の「大井戸茶碗 有楽井戸」をご覧になったようです。もちろん、私も見に行きました。先ほど手にした時の感じ・手触りなどを思い浮かべながら本物を見ると、単なる鑑賞が体験に変わってきます。
今回の鑑賞体験には事前予約が必要でした。新型コロナウィルスの影響が心配されたものの、会期前までに予約は埋まり、163名もの方にご体験いただきました(東京国立博物館のガイドラインに沿い、感染防止策を実施しながらの開催です)。
また、もともと美術や文化に親しみを持っている方の来場が多かったのですが、はじめて東京国立博物館に訪れた方や、数年ぶりに来場されたお客様が4分の1を占めるなど、私のように博物館に縁が薄かった人にも興味を持っていただけたようです。この体験を通じて茶碗鑑賞のおもしろさに触れ、実物への関心はもちろん、他の文化財への興味につなげるとともに、8Kが持つ新たな可能性を示すことができたと思います。
当社は、これからも文化財活用センターおよび東京国立博物館と協力して8Kがもたらす新しい鑑賞体験について研究を進め、今までにない新しくて面白い体験を提供すべく推進してまいります。
(広報担当:H)
<関連サイト>
■SHARP Blog
織田信長の弟[有楽斎]が所持した重要美術品「大井戸茶碗 有楽井戸」に触(ふ)れてみませんか?-新たな文化財鑑賞ソリューションによる実証実験(”8Kで文化財「ふれる・まわせる名茶碗」”展)を実施-
■ニュースリリース(2020年7月1日付)
「8Kで本物に触(ふ)れる」をテーマに開発した文化財鑑賞ソリューションの実証実験を東京国立博物館で公開
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