洗濯機水槽のリサイクルが4巡目に入りました!
2022年8月23日
当社の冷蔵庫、洗濯機などの生活家電を担当するSAS(Smart Appliances & Solutions)事業本部では、2001年度よりリサイクル材の製品への採用を積極的におこなっています。
業界に先駆けて実用化した「自己循環型マテリアルリサイクル技術」により、使用済みのタテ型洗濯機から回収した水槽プラスチックを調製して、タテ型洗濯機新製品の水槽に採用。 何度も繰り返し再生利用する『水槽to水槽』のリサイクルが、2022年に4巡目に入りました。 これは、2001年に家電リサイクル工場で回収された洗濯機の水槽が、リサイクル材への調製、洗濯機水槽への採用、リサイクル工場で回収されるというサイクルが4度目となり、今年度の新製品の水槽に採用されたということになります。
「自己循環型マテリアルリサイクル技術」は、当社と関西リサイクルスシステムズ株式会社(以下、KRSC)※1が共同で開発しました。雑貨などに再利用する一般的な「オープンマテリアルリサイクル」のリサイクル材料は、1度再利用された後は一般ごみとなってしまいます。「自己循環型マテリアルリサイクル技術」は、特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)で、リサイクルすることが義務付けられているエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目に使われているプラスチックを成型部品として再生し、何度も回収・再利用する技術です。
- ※1 関西リサイクルシステムズ株式会社(https://www.krsc.co.jp/):使用済み家電製品の再商品化等を事業内容として、当社・三菱マテリアル株式会社を中心に大阪府枚方市に1999年12月に設立(2001年4月操業開始)。担当エリアは、大阪府・京都府・奈良県・和歌山県(新宮市除く)・滋賀県(大津市のみ)。
シャープの「自己循環型マテリアルリサイクル技術」は、洗濯機に使われる水槽を回収し、再び水槽にするところから始まりました。洗濯機の水槽は、大きな部材で必ず単独回収されるので、組成が分かりやすいためです。スタートから約20年を経て、この度、4巡目のリサイクルに入りました。
リサイクル材は本日発売する新製品のプラズマクラスター洗濯乾燥機<ES-PW11G>をはじめ、順次発売するタテ型洗濯乾燥機・全自動洗濯機の水槽にも採用しています。
ここで、プラスチックのリサイクルについて説明します。リサイクルには、使用済み家電から純度の高いプラスチックの回収が必要です。それを、金属や種類の異なるプラスチックが混在する混合プラスチックからポリプロピレン(PP)を高純度に取り出す「高純度分離回収技術」によって実現し、さらに、回収したプラスチックを新品と同じ性能に再生する「特性改善処方技術」を用いて再生可能なプラスチックの量を増やす「品質管理技術」を駆使しています。KRSCでは手解体で素材ごとに細かく分類・回収しているので、高品位リサイクルを実現しています。
現在、再生利用しているリサイクル100%材料は、洗濯機水槽や冷蔵庫野菜ケース(PP)などからつくる「PPペレット」、冷蔵庫棚板(GPPS:一般ポリスチレン)や薄型テレビ筐体・複写機トレイ(HIPS:耐衝撃性ポリスチレン)などからつくる「HIPSペレット」(難燃性付与)、薄型テレビ筐体など(PC+ABS:ポリカーボネート+アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)からつくる「PC+ABSペレット(難燃性・抗菌性付与)」の3種類です。
リサイクル材の採用事例としては、洗濯機の水槽(PP)などや冷蔵庫の各室の仕切り板(PP)、運搬取っ手(PP)、電装ボックス(難燃PS)などがあげられます。
SAS事業本部は、このような再生プラスチックを継続して積極的に採用するとともに、生産段階では、工場で使用する電力・ガスの削減やゴミ排出量の削減を工場ごとに目標をたてて推進することでSDGsの達成に貢献していきます。
続いて、2001年から当社のリサイクルを担当するSAS事業本部 要素技術開発部の福嶋にリサイクル技術実現までの経緯と今後の抱負などについて話を聞きました。
― プラスチックのリサイクルを始めた当時のことを教えてください。
2001年、特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)の施行により、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目は必ず回収し、資源をリサイクルすることが義務付けられました。品目別に再商品化等基準※2(対象品目ごとに定められた法定リサイクル義務率)が定められており、当時はリサイクルしやすい金属のリサイクルが主流でした。
1998年に家電リサイクル法の基本方針などが公表され、洗濯機については、再商品化率が50%以上になるとの発表がありました。他社製品は外キャビネットが鋼板仕様のものが多かったのですが、当社の洗濯機はプラスチック仕様になっており、再商品化率の基準に満たない可能性があり課題解決は急務でした。
そういった経緯から、家電リサイクル法が本格施行される3年前の1998年に、プラスチックのマテリアルリサイクルの検討を始めました。暑い夏の日、洗濯機100台の解体から始まりました。水槽や外キャビネットを取りだし、水洗い、破砕、添加剤処方、成形を何度も繰り返しました。
- ※2 製造業者等が引き取った特定家庭用機器廃棄物の総重量のうち、当該特定家庭用機器廃棄物から分離された部品又は材料のうち再商品化等されたものの総重量の割合。「再商品化」については、「機械器具が廃棄物となったものから部品及び材料を分離し、①自らこれを製品の部品又は原材料として利用する行為、又は②これを製品の部品又は原材料として利用する者に有償又は無償で譲渡し得る状態にする行為と定義している。
― 初めてのことなので、基準もなく大変だったのでは?
添加剤の配合量や、洗い方、破砕の大きさなど、すべてが手探りでした。
特に、家電製品は用途によって耐久性が異なり、耐久性を保持するために配合されている酸化防止剤の添加量も異なるため、年代もほかの家電メーカーの部材も混在する廃プラスチックは、単純には再利用しにくいものでした。
また、回収したPP廃材は、新品に比べて強度など物性が10%ほど落ちること、廃材の余寿命がわからないことなどから、当初は強度・耐久性確保のために新材を混ぜ、手間とコストをかけて再生していました。
― 「自己循環型マテリアルリサイクル技術」はどうやって実用化できたのですか?
手間とコストをかけて取り組んだその積み重ねが実を結び、廃材の劣化具合を正確に診断する評価システムを構築できました。これによって、プラスチックの余寿命が短時間でわかるようになり、適切な添加剤処方で何度でも繰り返し再生利用できる「自己循環型マテリアルリサイクル技術」を確立しました。他社に先駆けてリサイクルを進めたことも家電業界で初めて実用化できた要因だと思います。
ここ数年は、回収した廃材を新材と同等の特性に戻す「水平リサイクル」だけでなく、付加価値を高めた「アップサイクル」することによりさらに用途拡大を図っています。
― 今後の抱負を聞かせてください。
家電リサイクル法が施行されてから22年目を迎え、各社のリサイクル技術も向上し、現在では洗濯機の再商品化等基準も82%以上と大きく引き上げられています。
シャープは、これからも廃プラスチックのリサイクル技術のみならず、あらかじめリサイクルしやすくする「易解体設計」など再商品化率向上に向けた技術開発にもチャレンジしていきます。
当初は埋立て地の逼迫などを背景に始まったプラスチックリサイクルも、最近では海洋プラスチック問題などもあり、製品を製造し、使用・廃棄するという直線型の経済から、使用・廃棄された後に極力資源として製品の原材料等にもどす循環型の経済にシフトする動きが国際的に活発化しています。
「プラスチックをくり返し何度でも再生利用する」という当社のコンセプトが、ようやく世間の標準になってきました。当社の長年の取り組みが、循環型社会構築の一助になればと思っています。
― ありがとうございました。
「自己循環型マテリアルリサイクル技術」のおかげで、KRSCにおける洗濯機の再商品化率は96%(2020年度実績)と大幅に基準をクリアしています。シャープはこれからも、環境に配慮した製品を作り続けていきます。
(広報H)
<関連サイト>
■シャープサステナビリティサイト:サステナビリティレポート2021
■自己循環マテリアルリサイクル技術(シャープサイト)
■関西リサイクルシステムズ株式会社
■製品情報:プラズマクラスター洗濯乾燥機<ES-PW11G>
■SHARP Blog
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