皆様、こんにちは。シャープ物流お役立ち企画チームのミヤザキです。
私たち、自動搬送装置(AGV)を販売する事業者としては、物流倉庫における作業を自動化することでお役立ちしていきたいわけですが、自動化にはいろいろ課題があるのかと思います。倉庫を自動化するにあたって、私たち自動化のための装置を販売する事業者が知っておかなければならないことは何か、まずはそれを学びたくて、以前、当社のAGVを導入していただいたお客さまにお話を伺ってきました。
お話を伺ったのは、株式会社ムトウ物流で顧問をされている土田さまです。
株式会社ムトウ物流は、医療機器関連の院内物流システム事業であるSPD(Supply(供給) Processing(加工) and Distribution(分配))事業を営まれています。
SPD事業とは、医療施設で利用する商品を直接配送・分配しておき、利用した時点で納品したとみなす事業形態のことです。
SPD事業者は利用された商品を補充することで、欠品が起きない安定した運営を支えています。医療品は人命に関わるので、欠品によるリスクを防ぐためにこのような在庫管理手法を採られているようです。
土田さまが最初にお話しされたのは、「波動」の制御についてです。
波動の制御
「すべてのマテハンメーカーに考えてほしいのは、波動をいかに制御するかということです」
物流業界における「波動」とは、時期や時勢によって変化する需要や供給があらわす、荷量が変動する波のことです。
昨今、ビジネスの迅速化に伴い波動は従来よりも大きくなっており、繁忙期と閑散期では荷量が数倍の差になるようです。この波動による影響を吸収するように人員配置や車両手配を計画するのは非常に難しい作業です。取り扱う荷物が増えれば保管スペースに余裕がなくなり、その分作業スペースが犠牲になります。出荷量の増加に伴う作業量の増加だけでなく、荷物が通路を塞いでしまうことでさらに作業効率が落ちるということもあります。
「セミナー等で波動を平準化することが必要と言う方もいらっしゃいますが、物流企業にとって波動が起きているのはお客さまの都合です。お客さまに平準化してくださいとは言えません。絶対、波動は起きるものなのです。この波動をどう制御するか、工夫することが物流企業にとって合理化のポイントとなります」
物流倉庫によって、入荷する商品の特性や数量、保管期間、配送先数などはさまざまです。それぞれ異なる事情によって生じる波動に柔軟に対応していく必要がありますが、これを自動化で対応できるかということが課題だということです。
「例えばGWや年末などの長期休暇には、商品のメーカーも休みとなり、メーカーの営業担当者も休みとなります。つまり、倉庫にとっては入荷が止まることを意味します。物流企業としては、休暇中も出荷対応する必要がありますので、メーカーから商品が入荷できないのであれば倉庫側であらかじめ在庫にしておく必要が生じます。これが季節性の波動が生じる一例です。季節だけでなく、曜日による波動もあります。毎週月曜日は在庫出荷のピークとなり、月曜日にオーダーを受け、水曜日に入荷したものが即日出荷のピークとなります。一方で木曜日と金曜日は出荷量が減ります。これが曜日による波動です。しかし祝日が間に入る週は、このピークとなる曜日が変わってしまいます。常に波動を予測し、対応することが必要なのです」
繁忙期のピークに合わせて保管スペースや人員を配置すると、閑散期には余剰となるため、高コストになってしまいます。
「マテハンのメーカーの方はピークに合わせて設備投資しましょうと提案してきますが、それではピーク以外は遊ばせるのかということになりますよね。そんな投資はできないですよ。でも、物流業界は人員がなかなか採用できないという問題にも直面しているのです。人の採用にも波動があります。予期せず大勢退職されることもあります。どこの倉庫もこの問題に苦しんでいます。「2024年問題」は、倉庫内作業の問題でもあるのです。しかし、現在の自動化のマテハンは高すぎて機器を入れたら投資対効果が得るのが難しいのが実態です。人手のほうがいろんな作業ができるし、現在の人件費を考えたらマテハンを導入するより人手の効率を高めた方がよいということになります。でも、人手不足の問題はいずれ限界が来ます。だから非常に悩ましい問題なのです」
波動が大きい中、将来的な荷量の変化と人員不足を予測しながら、どの作業のどの部分を自動化して効率化すれば投資対効果が得られるのかという答えを導くのはかなり難しいと思います。事業の拡大に伴い将来の取り扱い量の増加が十分に見込め、人員採用に先立って設備投資を十分にできる資金をお持ちの事業者であれば、投資効果の算出はそれほど難しくないかもしれません。しかし、それ以外の多くの物流企業にとっては大変複雑な難しい問題だと思います。
倉庫管理システムとの連携
「もう一点重要なことは、マテハンはあくまで道具であるということです。道具を使うシステムと連携しなければ意味がない。具体的には倉庫内管理システムWMS(Warehouse Management System)との連携が必要なのですが、日本ではWMSの導入率が低いと思います」
「WMSは倉庫業務のフローを管理しますが、マテハンによる自動化はこのWMSから得られるデータを元に考える必要があるのです。WMSを導入して連携することでマテハンの効果がでるわけですが、WMS自体にかなりのコストがかかります。さらにこのWMSは財務管理の基幹システムERP(Enterprise Resource Planning)と連携する必要がありますが、この連携が容易ではありません。既設のERPがレガシーシステムを採用している場合、ERP側での対応ができずWMS側で合わせていく必要があります。WMSでカスタマイズするところが増えると、場合によっては億単位の投資が必要になってしまいます。資金力のある企業なら問題ありませんが、日本の9割の物流企業は中小企業です。失敗したら倒産してしまうリスクすらあるのです」
WMSについては、別の機会に深く考えたいと思いますが、WMSを知らずに私たちのAGVの導入推進はできないのだと感じました。
「今後、自動化のためのマテハン導入は二極化すると思っています。WMSを含めた大きなシステムとして投資を検討するケースと、シンプルなソリューションを現場単位でいれていき、単純な作業の置き換えで効果を出しながら、現場の担当者が育つことで多くの自動化のアイデアを出していくというようなケースに分かれるでしょう。一番わかりやすいところから入ることで現場のアイデアが出てきます。人が運ぶところをAGVで運ぶという原始的なニーズにこたえていくところから積み上げていく方がいいかもしれません」
非常に貴重なお話を伺うことができました。
メーカーの社員として、私たちの販売するものは決して安価ではない機器であることを認識しながら、いままさに多くの物流企業の方が直面している問題を直視して対応を考えていかなければならないと思います。一つひとつできるところから、本当に効果を出せる提案をつくっていきたいと思っています。そのために、引き続きさまざまなお話を伺いたいと思います。同じ問題に取り組んでおられる、協業させていただける事業者の方ともお話したいです。
是非、下記メールアドレスまでお気軽にご連絡ください。
それでは、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
シャープ AGV製品については製品情報サイトをご覧ください。
https://jp.sharp/business/agv/
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