三日坊主とはさようなら。リビングでのエクササイズは「AIヘルスケアトレーナー」におまかせ!
2024年12月25日
皆さん、日々の健康管理はどうしていますか?
運動不足で体型を気にしている私は、健康診断の結果や健康に関する番組を見ると、身体のことが心配になり、思いついたように筋トレを始めてしまいます。でも、どんな運動をどれぐらいやればよいのかよく分かりませんし、効果があるのか半信半疑なままやっているので、次第にモチベーションが下がり、やめてしまいます。これを何度繰り返していることか・・・。
効果的なエクササイズを教えてくれて、さらに長続きするようサポートしてくれるトレーナーが身近にいたら嬉しいですよね。実は、私のような三日坊主にぴったりのバーチャルAIトレーナーをシャープは開発しています。それがリビングで会話を通じ、気軽にヘルスケア相談とエクササイズのアドバイスをしてくれる「AIヘルスケアトレーナー」です。
先月末に本ブログで紹介した「AI SMART LINK」と同様、当社独自のエッジAI技術「CE-LLM」(Communication Edge-LLM)を搭載しており、今年9月に開催した当社単独の大規模技術展示イベント「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”(以下、Tech-Day)」で展示し、ご来場者に好評をいただきました。
今回は、「AIヘルスケアトレーナー」開発のきっかけや特長、こだわったところなどを、開発担当 山下と新原、デザイン担当 宮越の3名に取材しました。
●「CE-LLM」は、シャープ株式会社の登録商標です。
― 「AIヘルスケアトレーナー」とは?
(山下)大画面テレビとカメラを活用し、AIトレーナーとの自然な会話から、リビングで気軽にヘルスケア相談とエクササイズができます。ジムに行くとトレーナーがいますよね。「AIヘルスケアトレーナー」は、リビングのテレビの中に存在するバーチャルなパーソナルトレーナーです。シャープ独自のエッジAI技術「CE-LLM」を搭載しています。
― では、開発のきっかけと目的を教えてください。
(山下)テレビの技術を用いて、人のためになるチャレンジがしたいと思っていました。全社的に「ヘルスケア」関連事業を強化していく方針の中、それなら健康にまつわる新しいソリューションを開発しようと。具体的には、我々のテレビで培ったアプリケーションやカメラの技術、これに社内の別部門で開発した「非接触ヘルスケアセンシング技術」、さらに、世の中にある「生成AI」という3つの技術を組み合わせて検討していく中、「AIヘルスケアトレーナー」のコンセプトにたどり着きました。「AIヘルスケアトレーナー」を使っていくうちに自然と健康的な生活習慣を身につけて欲しいと思っています。
― 具体的にはどんなことができるのですか?
(山下)AIトレーナーとの自然な会話を通じてヘルスケアのプランを考えてくれます。理学療法士の監修に基づいた相談ができるので、効果のあるエクササイズが可能です。
「ダイエットしているけど続かない」とおっしゃる方には、現状分析をしたうえで、適切な運動の種類や回数などを提案してくれますし、「●kg痩せたい」という具体的な悩みにも対応します。「下半身を鍛えたい」とか「お腹周りを引き締めたい」などという方には、それに特化した運動メニューを紹介します。目標設定→日々の運動を繰り返しながら、その状況を見て目標を見直す機能もあります。
「AIヘルスケアトレーナー」は、運動だけではなく、食や睡眠など、健康の三要素(運動・食・睡眠)に関しての相談が可能※です。
※ 最終仕様ではありません。
また、相談内容に応じたエクササイズを行う際、カメラを活用してリアルタイムに利用者の姿勢分析を行い、アドバイスを提供してくれます。例えば、スクワットをする時、「背中を伸ばしてください」とか「膝をもう少し開いてください」などといった、自分では気づけない、正しい姿勢を教えてくれます。
さらに、シャープの独自技術である「非接触ヘルスケアセンシング」を搭載しているので、カメラのセンシング機能でセンサーを装着せずに「表面温度(温度)」や「心拍(心拍情報)」など身体の情報を取得し、健康管理に役立てることができます。
― 効果的なエクササイズができそうですが、人と違ってAIトレーナーだと楽しく取り組めるか心配です・・・。
(新原)そうですよね。「AIヘルスケアトレーナー」は、昨年の「Tech-Day」にも出展したのですが、その後、より充実したものにするため、千葉県で住民の方の協力を得て、実際に利用していただく実証実験をしました。参加された方のご意見をうかがうと、運動しなくちゃと思っていてもモチベーションが続かないという方が多く、モチベーションを維持するには、トレーナーを身近に感じられるかが重要な要因の一つではないかと考えました。そこで、愛着がわくように、エクササイズに関係ない雑談も楽しめるようにしました。
いま話しかけてみますね。
「今日は取材受けてるよ。」
↓
(AI)「すごいね。どんな内容の取材なの?楽しそう。」
↓
「AIヘルスケアトレーナーの取材だよ。緊張していて、どんな話をしたら良いのかな?」
↓
(AI)「リラックスして自分の意見を素直に話せば良いよ。具体的な例をあげると説明しやすいかな。例えば、最近のトレーニングでの成功体験とか・・・。」
こんな感じです。こちらからだけでなく、AIトレーナーの方から話しかけたりもします。
― 確かに愛着がわきそうですね!
(新原)ほかにも、「オススメのお寿司屋教えて?」とたずねると、「吉祥寺に美味しいところがいくつかあるよ。例えば”●●●●”というお店はどうでしょう? お寿司以外にも一品料理がおいしいからオススメ。」などと返してくれるんです。
(宮越)愛着という意味では、画面越しのキャラクターデザインやその背景イメージも重要な部分を占めると思います。「エリカちゃん」と名付けたキャラクターですが、清潔感がありつつ、シャープが提供するのにふさわしいキャラクターはどうあるべきかと試行錯誤し、現在のイメージになるまで50回以上やり直しました。また、テレビの中に実際のトレーナーがいるかのようなリアルな感覚にこだわってデザインしています。会話の内容によって服装を着替えるのはもちろんのこと、食事や睡眠相談の時は、キッチンや寝室の空間に変化するなど、ビジュアル表現を工夫しました。
― 雑談する様子を見せてもらいましたが、スムーズな会話ですよね。どうやって実現したのですか?
(新原)利用者の音声を聞いてからAIが回答するまでを、いかに早くするかに力を入れました。エッジAI技術「CE-LLM」を搭載することで、利用者の質問内容が簡単か否かを即時にAI判定し、簡単な内容については、高速な応答が期待できる端末内のエッジAIで回答。難しいものは、豊富な情報が得られるクラウドAIで回答することで、スムーズで自然な会話のやりとりを実現しています。
加えて、文章全てを聞いてから回答していては時間がかかるので、文章の細かいセンテンスごとに発話するなど、当社ならではの開発をいくつも進めることで、ストレスがなくスムーズな会話になるよう突き詰めました。
さらに、「AI SMART LINK」のブログでも紹介されていますが、質問の内容を確認する工程を入れることで、自然な会話をしているような工夫を加えています。
― 愛着を持って使ってもらうには使い勝手も重要だと思います。画面の分かりやすさやUI(ユーザーインターフェース)については、どんな取り組みをしましたか?
(宮越)画面のどこにどの情報を紹介するかというゾーニングにも力を入れました。「エリカちゃん」がタブレットを持っていて、トレーニングリストなどそのタブレットの内容が画面左側のゾーンに出てきます。右側のゾーンは利用者の操作部(エクササイズやメニューなどを選択)です。これは、操作UIは右側に置いた方が見やすいと考えたからです。皆さんがいつもお使いになっている会話アプリの画面を見てもらえれば分かりますが、左側が相手の投稿、右側に自分の投稿となっています。SNSになじんでいる私たちには、その方が直感的に分かりやすいと考えました。
また、画面の上部と下部に実際の会話(上:AIトレーナー、下:利用者)が表示されます。
― ところで、リビングのテレビなら家族で使うことが多いと思うのですが、AIトレーナーが困惑したりしませんか?
(山下)大丈夫です(笑)。利用者ごとにログインできるので、お父さんに提案するエクササイズをお母さんにさせるようなことはありません。
― ほかにも、こだわったことや苦労したことなどありますか?
(新原)お客様のアカウント管理を端末(=テレビ)内からクラウドへと変更することで、より多くのお客様にご活用いただけるよう開発を進めました。これは当社の「人と社会に寄り添うIoT」を目指す「AIoT3.0」のコンセプトにも基づいていて、これにより他の家電とも連携し、テレビだけじゃなくヘルシオホットクックやエアコン、空気清浄機などの自動制御の実現や、自宅のテレビで運動をした後、続きは会社で行うなど、利便性を高めるとともに利用シーンを拡げることができました。
実は、今年の「Tech-Day」出展直前にクラウド管理にするという方針変更があり、チームメンバーと協力して急ピッチで作り直しました。加えて、お客様の使い勝手を大事にしようと細かい改善を最後まで行っていたので、本当に骨が折れました。でも、そうした関係者全員の頑張りが実り、「Tech-Day」ご来場者アンケートでは印象に残った展示として「AIヘルスケアトレーナー」を挙げられた方が多かったんですよ。
●「AIoT」は、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を組み合わせ、あらゆるものをクラウドの人工知能とつなぎ、人に寄り添う存在に変えていくビジョンです。「AIoT」はシャープ株式会社の登録商標です。
― 最後に、みなさんそれぞれの想いを教えてください。
(山下)「AIヘルスケアトレーナー」をいろんな方に使ってもらい、「人と社会に寄り添う」サービスであることを実感してもらいたいです。実用化した際には、実際にお客様のリビングで使用している姿を早く見たいですね。楽しみです。
(新原)クラウドに情報を置くようにしたことで、さらにサービスが充実できると思っています。例えば、「ゴミはいつ捨てたらいいよ」とか、地域情報を紹介できればと思います。各家庭で完結するのではなく、地域に根付いたものにしていきたいです。
(宮越)映像を楽しむほかにも、AIトレーナーのアドバイスを受けながら、テレビでエクササイズするという新しい使われ方として拡がって欲しいです。利用者が増え、このサービス面白いよねとSNSでバズってくれれば嬉しいのですが・・・(笑)。スマホを見る時間が多い若い人にもテレビでこんな面白いことができるんだと知ってもらいたいです。
― ありがとうございました。
「AIヘルスケアトレーナー」は、Tech-Dayなどのイベントでの展示や実証実験の参画などでさまざまな企業やお客様の声をお聞きしながら、実用に向けた検討を進めております。ゆくゆくは、運動嫌いの私にとって救世主となるかもしれません。ぜひ期待して待ちましょう!
(広報H)
<関連サイト>
■SHARP Blog:
ハンズフリーだから手がふさがっていても大丈夫!-「人に寄り添う」対話型ウェアラブルデバイス「AI SMART LINK」を開発 -(CE-LLM搭載、開発中のデバイス)
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