「BLACKSOLAR ZERO」には創意工夫が詰まっている!新エネ大賞『新エネルギー財団会長賞』を受賞した開発メンバーにインタビュー
2023年4月19日
「新エネ大賞」は、太陽光などの新エネルギーの導入促進を目的に、関連する機器・サービスの開発や分散型エネルギーの活用事例について、優れたものを表彰する制度です。
「BLACKSOLAR ZERO」は、黒を基調とした屋根に美しく調和するデザインで、セル実効変換効率※1を向上させ、かつ、屋根の大きさや形状に合わせてサイズ・形状の異なるモジュールを組み合わせることにより、さまざまな屋根形状に合わせて効率良く設置することで発電容量の最大化を図れる住宅用太陽電池モジュールです。
※1 太陽電池セル面積当たりの発電効率。
今回、「BLACKSOLAR ZERO」の商品開発メンバーを代表して、商品企画部の増田、技術部の倉橋、大久保、国江、平田に受賞や開発の背景などについて聞きました。
受賞、おめでとうございます!初めに、受賞の背景を聞かせてください。
(増田)ありがとうございます。現在、カーボンニュートラル※2に向けた取り組みとして、政府の方針もあり、太陽光発電など自然エネルギーの更なる普及拡大が期待されています。
普及拡大を推進する政府の目標の一つとして、住宅で消費するエネルギーを太陽光発電などで賄って実質ゼロ以下とするZEH※3の普及があります。ZEH基準を達成することで受けられる公的な助成金制度もあり、住宅の屋根に太陽光発電を設置する動機の一つになっているのですが、基準を満たすためには住宅で消費するエネルギーに対して一定量のエネルギーを太陽光発電などの創エネ機器で賄う必要があります。
※2 温室効果ガスについて、排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにすること。
※3 Net Zero Energy Houseの略。省エネ(断熱性向上など)と創エネ(太陽光発電など)で、住宅用基準一次エネルギー消費量の収支をゼロ以下にすることを目指した住宅のこと。
しかし、都市部地域を中心とした屋根面積の小さな新築住宅では、太陽光発電の設置容量の不足によりZEH 基準を達成できないケースが多くあり、太陽光発電の普及拡大には、屋根に対する太陽電池の設置容量を増やすことが重要になっています。
(倉橋)そこで、当社は今回から新しく採用した「ハーフセル技術」の太陽電池セルを使って発電効率を向上させつつ、「ルーフィット設計」に対応した太陽電池モジュール「BLACKSOLAR ZERO」を開発しました。
また、「BLACKSOLAR ZERO」は外観を重視するお客さまや販売するハウスメーカーのニーズに合わせ、黒色を基調としたデザインにすることで屋根に美しく調和する一体感のある意匠を実現しています。
国内住宅用太陽電池モジュールにおいて、組合せ可能な外形サイズの異なる複数の太陽電池モジュールに黒色を基調としたデザインを採用しているのは当社だけ※4です。
※4 2023年3月27日時点、当社調べ。
なんだかすごそうですが、聞きなれない言葉がたくさん出てきたので、一つずつ教えていただけますでしょうか。まず、「ハーフセル技術」とは、どういうものでしょう。
(国江)「ハーフセル技術」は、太陽電池セルを正方形の半分のサイズにすることで、セルの電極に流れる電流値を約半分に抑制し、電力損失を抑える技術です。
電極における電力損失は、電流値の2乗に比例して増減するため、ハーフセル採用により電極に流れる電流値を約半分に抑えると、電力損失は約1/4になります。各セルの電力損失を抑制し、セル実効変換効率を向上させることで、太陽電池モジュールとしての出力を向上させることができます。本技術により、太陽電池モジュールとしては若干サイズが大きくなりましたが、モジュールの出力を当社従来機比で約13%アップさせることができました。
「ルーフィット設計」とは?
(大久保)サイズや形状が異なる4機種(長方形2種類、五角形2種類)の太陽電池モジュールを組み合わせることで、寄棟※5などの複雑な形状の屋根や面積の小さな屋根など、様々な形状に合わせて設置容量を最大化する技術を「ルーフィット設計」と呼んでいます。
※5 四方向に傾斜する面を持つ屋根の形式。
例えば、長方形の大型モジュールだけでは4.06kW しか搭載できない寄棟屋根に対して、4 種類のモジュールを組み合わせることでスペースの無駄を省き、搭載容量を6.34kW(約56%アップ)まで高めることを可能にしました。これまでZEH 基準に達しなかった複雑な形状の屋根や面積の小さな屋根においても基準を達成できるケースが増え、ZEHの普及拡大に大きく貢献するものと考えています。
商品化にあたり、苦労したところは?
(平田)黒色を基調としたデザインの実現に苦労しました。従来の太陽電池モジュールは、発電する太陽電池セルの周囲のモジュール部品を白色にすることが一般的です。これは、白色のモジュール部品が光を反射することで太陽電池モジュールの出力を向上させる効果があるためですが、デザインの面では白い部分が見えることが課題でした。
当初、まず白色のモジュール部品を黒色のものに置き換えてみましたが、やはり光の反射が減ることで太陽電池モジュールの出力が目標を下回るものとなりました。
そこで、フィルムなど複数のモジュール部品それぞれに新規の素材や構造を検討し、試行錯誤を繰り返した結果、ようやく外観上は黒く見せつつ赤外領域の光の反射を確保できる組合せを見つけ出し、全体としても黒色を基調としたデザインを維持したまま、太陽電池モジュール出力向上の目標を達成し、製品化できました。
最後に今後の見通しを教えてください。
(増田)「2050 年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050 年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」※6との政府の宣言もあり、太陽光発電のさらなる普及拡大が期待されています。
また、国の有識者検討会※7により、「2030年に新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入されていることを目指す」とされ、今後、国内の住宅用太陽光発電システムの普及拡大は大幅に進む見込みです。
当社は、引き続き住宅用太陽光発電システムの事業拡大を通じてこれらの目標達成に貢献していきたいと考えています。
※6 令和2年10月26日第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説より。
※7 令和3年8月23日脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会より。
―― ありがとうございました。
取材を終え、記事を書きながら、自分の子どもが家を建てるであろう十数年先に、すべての住宅の屋根で太陽光発電が義務化されるかもしれないな、と想像しました。
限られた屋根の面積を最大限活用する、「BLACKSOLAR ZERO」の設置をぜひご検討ください。
(広報C)
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住宅用太陽電池モジュール「BLACKSOLAR ZERO」が令和4年度「新エネ大賞」の『新エネルギー財団会長賞』を受賞
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