(長編インタビュー)新コーポレート宣言“Be Original.”に込めた2つのオリジナルとは?
2017年1月5日
2016年11月、当社は新コーポレート宣言として“Be Original.(ビー・オリジナル)”を制定しました。
なぜ今宣言するのか? なぜ“Be Original.”なのか? ブランディングデザイン本部 本部長 大矢隆一へのインタビューを通して、輝けるグローバルブランドの実現に向けた当社の決意をご紹介したいと思います。
新コーポレート宣言“Be Original.”ができるまで
――“Be Original.”が宣言されて、約2か月が経ちました。なぜ今、改めて決意を宣言したのでしょうか。
新しい体制になって、次の100年に向けてスタートをきったわけですよね。自分たちの生き様というか、シャープが目指すものを示す強いメッセージが必要だったんです。コミュニケーションの核となるような、「継続」と「新生」を表す強いフレーズを社内外に発信するタイミングが、今だったんです。
――シャープがこれから目指すものを、この言葉に込めたと。それは社内にも向けられているのですか?
シャープはこれから、もっと一つになる必要があります。“One SHARP”のマインドをこれまで以上に社内に定着させるためには、社員の心のよりどころになる、求心力のある言葉が必要です。
シャープのなりたい姿を明確にする活動は、実は何年も前から続けてきました。どんな価値を提供する会社で、どんなパーソナリティを持っておくべきかとか。社員参加型のディスカッションを通して、シャープってこうですよねっていうものはずっと探していたんです。
――社員が持つ当社のイメージは、なんとなく同じになるような気がします。電卓とそろばんをくっつけた「ソロカル」がよく話題にあがるように、ちょっと変わったものを作るというか、目の付けどころが…というか。
2015年の10月くらいから、「目の付けどころが…」のような強いメッセージが欲しいという声が社内からもたくさんあがりました。そういうものを作らないといけないですよねって。そこで2016年の1月から、シンプルで強いメッセージを作ろうという動きをスタートしました。
家電メーカーってたくさんあるわけですから、自分たちはこういう風に尖っていくんだっていう存在価値をしっかり言わないと、ブランドは確立できないですよね。
――当社といえば、今でも「目の付けどころが…」と言っていただきますよね。あの言葉がなぜこんなにも浸透して、こんなにも残っているのでしょうか。
当社のパーソナリティをすごく表現している言葉だし、やっぱりコピーライティングの力ですよね。本当にこう、強く印象に残ります。
あの言葉を超えるのは結構難しいと思っていて。ただやっぱり、あの言葉は日本語なんですよ。日本人にしか伝わらない。なので次に作るときは、絶対にグローバルで使える言葉にしようと思っていました。候補の中には日本語のアイデアもたくさんありましたし、わかりやすいので評価が高くなる。でもごめん、日本語はだめって。
――確かに、日本でしか使えませんね。
次にお見せするのは、“Be Original.”の英語版なんですが、直訳ではなく意訳になっているんです。ここに発明家の話は出てきません。海外のシャープは、「オリジナリティの強い企業」というイメージですので、そこを強調した文章になっています。文章が“Be Original.”に集約していく。絵的にもすごくキレイなので、好きなんです。
――フレーズを決めるのって、感覚的なことですよね。人によって印象が変わりそうですし、最後は好き嫌いの世界になる気がします。
多くの企業が、自らの存在意義をコーポレートスローガンとして定めていますが、それらのメッセージは好き嫌いではなく、自社の分析と強い意志で決められています。その考え方を整理するために、縦軸をnotion(概念)とaction(行動)、横軸をOUT(外向け)とIN(内向け)としたポジショニングマップがあります。
このマップにシャープを当てはめてみると、こうなります。
――おお、これは頭の整理になりますね。すごく面白いです。
これからシャープは、どこを軸足とするのか。どんなメッセージを発信するのかを深く考える必要があります。
――うーむ、社員としても非常に興味深いです。どこも言いたいですし。でもやっぱり、私の持つ印象は左側です。
我々も、左側に軸足を置くべきだと当初は考えていました。“技術のシャープ”、“他社からまねされる商品”のあたりですね。でもこれからシャープは、何で尖がっていくのかも重要です。右側にあるような、“人に寄り添う”とか、“新しい価値を創造するAIoT※1の技術”の部分をもっと伸ばしていきたい。
※1 あらゆるものがインターネットでつながる「モノのインターネット=IoT」化が進む中、当社は独自のビジョン「モノの人工知能化=AIoT」を掲げています。AIoTのビジョンでは、多くの家電やIT機器がクラウドに接続され、人工知能がお客さまの好みや生活パターンを学習することで機能や動作が快適になっていく世界を目指しています。
「AIoT」はシャープ株式会社の登録商標です。
――今までのイメージを大切にして、これから目指すべきところも表すと。それを両立させるのが“Be Original.”ということでしょうか。
そうです。私たちは、創業者が残した「誠意と創意」の考え方や技術に強い誇りを持っています。そしてこれからは、情緒的な価値を付加して、家電をお客さまのパートナーにしていきたいという想いがあります。少し欲張って、その両方を表す言葉として“Be Original.”を選びました。今までのオリジナルを受け継ぎ、お客さまのオリジナルを作っていくんだという強いメッセージです。
――“Be Original.”の最後のピリオドにも意味があると聞きました。
ピリオドには、私たちはオリジナルのものしか作りませんという強い意志を込めました。宣言しました。ぎゅ、っと。
――「“Be Original.”ムービー」でも、ぎゅっと力強く描かれていますね。
最後の文字は、書道家の方に書いていただきました。無理なカメラワークで撮影をお願いしたので、書いている方自身は、手元がほとんど見えない状態で書いてるんですよ。なので何度も取り直して、OKが出たのがテイク24とか。
――テイク24!
決意を表す大切なシーンなので、無理を言って何度も書いていただきました。最後にぐーっと力が入っているのは、見ていてすごくいいなあと感じました。ムービーに出てきた当社の製品は、シャープミュージアム(奈良県天理市にある当社の歴史や技術を展示する施設)から東京まで運んで撮影しました。多くの力が結集してできたムービーです。
「“Be Original.”ムービー」はこちらのサイトでご覧いただけます。
http://www.sharp.co.jp/brand/beoriginal/
これからシャープが実現したいこと
――メッセージの中にある“「あなたのためのオリジナル」をつくり続けます”の部分ですが、これからシャープが目指すところをもう少し詳しく教えてください。
これからシャープは、AIoT技術によってお客さまの好みをセンシングし、一人ひとりにカスタマイズした情緒的な価値を提供することを目指しています。行動や環境をセンシングすることで、ただの道具ではなくて、使う人の気持ちを察するとか、背中を押してあげるだとか、そんなパートナーにしたいという想いから、「あなたのためのオリジナル」という言葉を使っています。家電が使う人のことを学習して、ちゃんと覚えてくれる。性能や機能だけではない、その先にある体験やストーリーまでしっかりとデザインしていきたいと思っています。
――家電が自分の気持ちを察してくれたり、背中を押してくれることで、メッセージにもある“もっとあなたらしく”を実現できるということでしょうか。
自分らしく生きるって、人の欲求のベースにあるんじゃないかと思っています。自分らしく生きたくない人なんていないんじゃないかと。自分らしく生きるために、家電は何ができるんだろう、何をしてあげられるんだろうって考えたときに、AIoTが目指す世界ってまさに自分らしく生きることをサポートすることだよなと。家電って意外と使うのが難しいんですよ。機能がいっぱいあって。使い方を人間が学習しなければいけない。そんな煩わしいことはあなたに代わってシャープがするから、あなたはあなたの時間で、あなたらしいことをしてください。“もっとあなたらしく”には、そんな想いも込められています。
まずは社員の意識改革から
――大矢さんの今の想いを聞かせてください。
シャープにはオリジナルな技術や事業があるので、それらを一つの方向、ベクトルに揃えたらもっとすごい力になるとずっと感じています。そういうパワーというか、気持ちを一つにまとめるものって必要だと思いましたし、あれば絶対にすごいものが生まれるはずなんです。
立場上、社内の技術や事業の内容を聞かせていただく機会が多いですが、聞くほどに深くて面白いものが多い。それらをちゃんと商品にして提供していける環境があるって素晴らしいですよね。それらをバックボーンに、お客様に新しい体験価値を届けることを約束したいと思っています。私たちにできること、私たちにしかできないこと。やりがいがありますよね。
――私たちはメーカーなので、最終的には“Be Original.”の製品やサービスを生み出す必要がありますよね。そのためにはまず、何をしなければいけないのでしょうか。
大切なことは、社員全員の意識改革だと思っています。製品やサービスを生み出す時に、技術とか時間とか資金とか、必要なものは色々ありますけど、まずは、“Be Original.”の意味をしっかりと受け止めていただいて、社員それぞれの“Be Original.”を想い描いてもらいたい。「その仕事は、本当にオリジナルか。」「その仕事は、誰かの気持ちを動かしているか。」
「会社はこうありたい」というメッセージを新たに宣言しました。「じゃあ、自分自身はどうありたいの?」っていう社員一人ひとりの想いも大事だと思っています。自分は“Be Original.”をこういう風に理解しているという議論を重ねて、それぞれの“Be Original.”を積み重ねていく作業が、これから必要なんだと思います。一つのキーワードで物事を議論することで、必ず横の繋がりができる。その先にあるのが、One SHARPが実現する本当の“Be Original.”だと思っています。
――ありがとうございました。
最近、社員に“Be Original.”ってどう? と聞くことが癖になっています。最初は「知ってはいるけど」と話す人でも、しばらく話を続けていると、「確かにシャープらしい言葉だと思う」「しっくりくる」という言葉が返ってきます。新しいメッセージではあるものの、もともと当社の根底にあったイメージやマインドを端的に表した言葉なのだと気付かされます。
ある社員は、「オリジナルという言葉を選んでくれたことに感謝したい」と言っていました。オリジナルという言葉は、シャープ社員にとって潜在的に大切な言葉であり、皆が一つになれる強力なキーワードなのかもしれません。
“Be Original.”の取材を進める中で、私のオリジナルってなんだろうと考えるようになりました。正直なところ、はっきりとした答えはまだありません。ただなんとなく、困ったときに出す秘密道具のような、心強い言葉をもらったような気がします。
(広報担当:M)
“Be Original.”ブランドサイト
http://www.sharp.co.jp/brand/beoriginal/
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