TEKION(適温)で青果物流革命!<1>
業界初※1の青果専用12℃「適温蓄冷材」を用いた新配送システムが稼働 - 消費電力削減と働き方改革にも貢献 -
2020年10月15日
パルシステムさま セットセンターで投入される青果専用12℃「適温蓄冷材」
<写真提供:パルシステムさま>
先日、当社「TEKION LAB(テキオンラボ)※2」開発の12℃「適温蓄冷材」を使用したグローブ型クーリング(暑熱対策)アイテム「CORE COOLER」や、冷却効果のある飛沫エチケット製品「適温クーリングフェイスガード」についご紹介しましたが、ご覧いただけましたか?
「TEKION LAB」はこれまで、主に一般のお客様を対象とした商品を展開してきましたが、このたび、物流分野に進出しました。
生活協同組合の配送システムに「TEKION LAB」の「適温蓄冷材」を用いたもので、パルシステム生活協同組合連合会(以下、パルシステム)、株式会社タニックス(以下、タニックス)、および当社の3社共同で新配送システムを構築しました。業界で初めて※1配送に青果専用の12℃「適温蓄冷材」を用いて、産地直送青果の品質を保持(①)するとともに、大幅な消費電力量の低減(②)と人手不足解消・働き方改革(③)に貢献する画期的なシステムです。パルシステムさまの営業エリアである相模センター(神奈川県愛甲郡)で、2020年7月20日(月) 配達分から運用がスタートしています。⇒詳細はこちら(2020年8月3日共同発表リリース)
<12℃「適温蓄冷材」を用いた新配送システムの効果>
①品質保持(低温障害防止効果、緩衝材自体をセットする手間も不要)
②蓄冷材凍結にかかる消費電力40%削減 ⇒ 環境負荷削減(CO2削減)
③人手不足の解消や働き方の改革
青果専用12℃「適温蓄冷材」を用いた新配送システムについて、「TEKION LAB」のメンバーに話を聞きました。今回は、新配送システム開発の経緯と品質保持(①)効果、次回は、新配送システムによる消費電力低減(②)および人手不足解消(③)と、それを導くために必要とされた33時間保冷について、2回に分けて紹介します。
※1 青果配送を目的とした専用の蓄冷材(保冷材)として。 2020年8月3日時点。シャープ調べ。
※2 2017年3月に研究開発事業本部内に発足した、当社初の社内ベンチャー組織。水をベースとする独自の「蓄熱技術」をもとに、「適温蓄冷材」による応用商品を製作しています。シャープブランドとして、2019年9月に氷点下2℃のおいしい新感覚飲料を楽しめるクーラーバッグ「TEKION COOLER(テキオン クーラー)」を発売しました。また、発足以来、数々の協業を進め、今年(2020年)は、グローブ型クーリング(暑熱対策)アイテム「CORE COOLER」や、冷却効果のある飛沫エチケット製品「適温クーリングフェイスガード」をデサントジャパン株式会社・ウィンゲート株式会社・当社の3社で共同開発しました。
「TEKION LAB」CEO兼CTO(研究開発事業本部 材料・エネルギー技術研究所 課長)内海 夕香
― まずは、「適温蓄冷材」について簡単に紹介してください。
「適温蓄冷材」は、当社の液晶材料の研究で培った技術を応用したもので、水をベースとした”不思議な氷”です。通常、氷は0℃が融点(溶け始める)ですが、「適温蓄冷材」は、融点を「-24℃~+28℃(開発中の温度帯を含みます)」の間で調整することが可能です。⇒詳細はこちら(「TEKION 適温 テクノロジー」サイト)
*「適温蓄冷材」:氷は融ける際、氷と水が同時に存在する時間があり、その間は一定の温度を保ちます。この固体から液体に変化する(融け始めから完全に融ける)時、周囲の熱を大量に吸収するので、周囲の空気や接触している対象物が冷却されます。冷やす対象に応じて、この融け始める融点と凍り始める凝固点を制御した開発材料を「適温蓄冷材」と名付けました。
― 3社で協業することになったきっかけとは?
番組で紹介されていた インドネシア向け停電対応冷蔵庫(2014年7月発売)と10℃「適温蓄冷材」
その後、当社とお付き合いのあったタニックスさまからコンタクトがあり、2016年8月にパルシステムさま、タニックスさま、当社の3者でお会いすることになりました。当時、パルシステムさまは、セットセンター新設にともなう配送全体のオペレーション見直しを進めており、保冷材に冷蔵庫で凍る「適温蓄冷材」を活用できないかと考えられたそうです。
当社では「TEKION LAB」設立前で、何としても事業化を進めたいという強い思いで開発を進めている最中で、物流分野に参入する手掛かりとなるパルシステムさまのご要望は、本当に渡りに船でした。
※3 停電が多いインドネシアの冷蔵庫用として開発。冷蔵庫に搭載した「適温蓄冷材」によって停電中でも庫内温度の上昇を防ぎ、保存した食品の腐敗を抑制する効果があります。
― 当時、パルシステムさまはどういう保冷材を求めていたのですか?
まず、必要としていたのは、青果の鮮度保持に適した温度(13℃程度)で保冷する蓄冷材で、これは、新配送システムの効果の1番目にあげられる①品質保持(低温障害防止)につながるものです。
通常、保冷配送には0℃(融点-1℃~1℃)の蓄冷材を使用しており、青果に直接触れてしまうと低温障害により凍結や変色などで傷んでしまうケースがありました(バナナや大葉など一部の青果品は0℃近い低温にさらされると、変色や傷みが起こる)。そこで、0℃の蓄冷材と青果の間に緩衝材を挿入することで品質劣化を防止していました。青果の鮮度保持に適した温度で保冷できる蓄冷材なら、低温障害も起きませんし、緩衝材が不要で、かつ挿入する手間も省けます。
当社では、当時、12℃「適温蓄冷材」を開発済みで、これなら「13℃程度での保冷」というご要望を満たせると判断、12℃「適温蓄冷材」を提案しました。
― そもそも、なぜ12℃「適温蓄冷材」を開発していたのですか?
私ごと(内海)なんですが、足の指を骨折し、真冬なのに医者から氷で冷やすように言われ、一方、凍傷になるので保冷材は使わないようにと注意されたことがありました。その経験から、冷やし過ぎずに気持ちよく冷やせる温度はないかと模索する中、”12℃”という温度にたどり着きました。「CORE COOLER」のブログでも紹介していますが、皮膚が痛みを感じず冷やすのに最も効果的なのは、”12℃”を保つ「適温蓄冷材」だったのです。そうした経緯もあり、人を快適な温度で冷やす目的で12℃「適温蓄冷材」を最初に開発しました。その後、パルシステムさまのご要望を受け、青果冷却用としても活用できると判断、人および物流の両面で冷却効果を発揮できるよう進化させてきました。実は2020年6月発売の「CORE COOLER」などに使われている12℃「適温蓄冷材」は、物流に採用されたものと中身は同じで、2020年2月に納入した青果向けが最初の実用化でした。
― 提案した12℃「適温蓄冷材」で、パルシステムさまには納得いただけたんですか?
品質保持(低温障害防止)の観点では、ご要望に沿うものでしたが、実は大きな課題があったのです。というのも、保冷温度に加え、保冷時間の要望もあったからです。パルシステムさまから33時間融けずに保冷できないかというご要望を受けていました。
― えっ、33時間? それは長時間ですね。
次回はなぜ33時間保冷する必要があるのか、それによって得られた品質保持(①)以外の効果(②消費電力低減と③人手不足解消と働き方改革)などについて紹介しますのでお楽しみに。
(広報担当:H)
<関連サイト>
■ニュースリリース
業界初 青果専用の「適温蓄冷材」を用いた新配送システムの運用を開始
■「TEKION LAB」
「TEKION 適温 テクノロジー」
「TEKION LAB」公式サイト
チャレンジサイトNo.16:社内ベンチャー「TEKION LAB」のチャレンジ
■SHARP Blog
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