左右開き冷蔵庫「どっちもドア」35周年、開発秘話に迫る。ヒントになったのは身近なあのアイテムだった!
2024年2月27日
冷蔵庫のドアが右にも左にも開く、そんな便利な左右開き冷蔵庫があるのをご存じでしょうか?キッチン周りの動線とご家族みんなの使いやすさを考えたシャープ独自の技術です。
名付けて「どっちもドア」。人気のワケは、いつでもラクな動きで食品を出し入れできる使いやすさにあります。また、冷蔵庫の設置場所に制約が少ない点など、さまざまな暮らしのシーンで左右開きならではの便利さを実感していただけます。
■「どっちもドア」の便利なポイント
~Point.1 いつでも近い方から、サッと出し入れ!~
例えばキッチンから食材を取り出す時、リビングやダイニングから飲み物を取り出す時、その時の立ち位置や動線により、回り込むことなく左右どちらからでも食品を出し入れできます。
~Point.2 壁際でも大皿料理を、スムーズに出し入れ!~
冷蔵庫を壁際に置くとき、通常は壁側にドアが開くように設置します。そうすると、キッチンの壁際に置いた冷蔵庫はドアの開閉スペースが小さくなりがちですが、「どっちもドア」なら壁と反対側にも開けられるため、大皿料理の出し入れもスムーズです。
また、開閉方向を逆にすることで奥にある食品にも手が届きやすいので、庫内を隅々まで有効に使えます。
~Point.3 来客や引っ越し先でも、スマートに出し入れ!~
冷蔵庫の見える位置にお客様がいる場合、目隠しできる方向にドアを開閉することで庫内を見られずに食品を取り出せます。
また、ドアの開閉方向が限定されないため、引っ越しやリフォームで設置場所が変わっても使い勝手はそのままです。
■「どっちもドア」開発ヒストリー
こんな便利な「どっちもドア」は生産開始から2023年12月で35周年を迎えましたが、開発がスタートしたのは1987年5月。おもしろいアイデアが浮かぶと、まずはチャレンジし、世界初・業界初の新製品を世に出したいという社風の中、社内のさまざまな部門から左右開き冷蔵庫の開発使命を受けたメンバーが集められました。
当時、マンション等の集合住宅が普及し、左右対称の間取りが増加しており、それぞれの台所の冷蔵庫の設置場所も左右対称となるなか、右からも左からも開けられる左右開き冷蔵庫があれば便利だなという声がお客様から届いていました。
そこで、若手主体で開発プロジェクトをスタートしたものの、畑ちがいの人間ばかり集まっており、いい案が出るのか半信半疑でした。
メンバーたちは、何カ月もアイデアを出し合いました。アコーディオン型にしたり、ドアの取っ手で片側をロックさせたりする案も出ました。悩んだ末に、忍者屋敷の回転扉(どんでん返し)を見学に行くメンバーや、何かヒントを得るためにからくり人形を見に行くメンバーもいました。
そんな中、一人のメンバーがいつものように家でアイデアを考えていたとき、家族から「ブローチの止め金が壊れているのよ。直してくれない?」と修理を頼まれます。「どこが壊れたって?」としばらくブローチをじっくり眺めていたところ、不意にひらめいたのです。「もしかしてこれだったら行けるかもしれない!この止め金の仕組みを使って・・・ここをこうしてロックされる機構にしたら・・・」と、止め金の仕組みを応用し、ロック機構を開発すれば、左右開き冷蔵庫が完成するかもしれないと考えたのです。
早速、そのメカニズムを目に見える形にするため、段ボールで模型を作ることにしました。結果、このアイデアが実現可能なものであることをメンバーで共有できました。簡単な仕組みなのに開発の条件をすべて満たしていることを確認し、全員が歓喜に沸いたのです。
さらに、模型を元に、プレートの方をもう少し工夫すれば動きがスムーズになるなど、実現に向けた具体的な意見が出始めました。プロジェクトをスタートしてから5カ月目のことでした。
それから2カ月後、ついに第一号の試作機を完成させました。さらに改良を重ね、社内での検証を開始。ドアの開閉は、左右それぞれ10万回、さらに交互に10万回、計30万回のテストが行われ、強度的にも十分であることが実証されました。並行して国内/海外の特許調査を行い、当社独自の新規アイデアであることを確認しました。 そして、ついに、1989年1月、業界初の左右開き冷蔵庫<SJ-38WB>が、すでに成熟していた冷蔵庫市場において鮮烈なデビューを果たしたのです。
■開発メンバーに話を聞きました
今回、当時の開発メンバーの一人であるOBの打矢さんに話を聞きました。
――当初の開発メンバーの様子は?
ドアが左右どちらからも開く冷蔵庫は、売る側も買う側も便利なことは分かっていました。どの企業も実現したい夢の商品でしたが、開発が難しいので世に出ていませんでした。何も前例がない中、精度や強度(耐久性)がどのレベルで必要なのかも検討がつかず、頂上が見えないまま進めていましたが、メンバーの一人が考えたブローチのアイデアをきっかけにメカの目途が立ち、全体の士気が一気に上がり商品化まで推し進めました。
――第1世代の誕生から現在の製品に繋がるこれまでの軌跡とは?
発売当初はすごい開発だと褒められ、話題性も高く達成感がありました。その後、いろんな幅の冷蔵庫に対応した第2世代も開発しました。ただ、実際にご家庭で使っていただくようになると、ドア開閉が重い、開閉時のガチャガチャ音が気になる、安全面が不安など、ユーザー目線でさまざまな課題が聞かれるようになり、1996年に第1・2世代の販売が終了してしまいました。それでも、終了を事前に知らされていたメンバーは、そこで諦めることなく、左右開き冷蔵庫存続のため再集結し、すぐさま課題を解決する第3世代のメカの開発を進めました。そして、わずか一年後の1997年に第3世代となる新・左右開き冷蔵庫「ハイ!両開(りょうかい)」<SJ―WE44A>を商品化することができたのです。この時開発した第3世代のメカは、現在の製品にも応用されています。また、1999年に『両開「どっちもドア」シリーズ』発売より、「どっちもドア」という呼び方が現在も定着しています。
――これからのシャープに期待することは?
冷蔵庫の企画部門は開発や技術の部門と同じ事業所にあり、多様なバックグラウンドを持ったメンバーからさまざまな知恵をもらうことができます。一部門や一社の力だけでなく、「どっちもドア」は1+1=5になるような奇跡で生まれた商品だと感じています。これからも新しい商品でそれぞれの知恵を合わせ新しい奇跡を生み出して欲しいと思っています。
――ありがとうございました。
■どっちも開く!「どっちもドア」の真実
「どっちもドア」のメリットは他にもあります。一般的な片開きドアに比べて経年劣化に強いのです。片開きドアは閉めていてもヒンジの上下2点で絶えず支えつづけているため、ドアヒンジ部や本体が歪む可能性がありますが、「どっちもドア」は上下左右四隅の本体軸でドアを支え、さらにドア下側のローラーでドアの荷重を受け止め、5点で支えているので歪みが発生しにくいのです。
もちろん、耐久テストもきっちり行っています。昔は人の手で行っていた片側10万回の開閉テストも、今では機械で夜通し行っています。
■「どっちもドア」35周年記念モデル
2023年11月、「どっちもドア」35周年記念モデル<SJ-PW37K>を発売しました。奥行65cmの薄型でロースタイル設計の容量374Lモデルです。色はマットホワイトとダークアッシュグレーの2色展開です。毎日使う冷蔵庫だから、引っ越しなど設置場所が左右で分かっても変わらない使いやすさ、お手入れのしやすさに加え、丸みを持たせたデザインなどやさしさにもこだわりました。
製品サイト<SJ-PW37K>
■まとめ
冷蔵庫のドアが右にも左にも開く、そんな便利な左右開き冷蔵庫の技術のヒントが身近にあったとは驚きです。商品開発のアイデアは日常にたくさんあるのかもしれません。ブローチからヒントを得て開発された「どっちもドア」。ぜひ、店頭でご確認ください。
<関連サイト>
■製品サイト:冷蔵庫製品ページ
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